悪行を重ねた令息は断罪されたくないので生き方を変えました。誰の愛も欲しがらないと決めたのに、様子がなんだか変なんです

くるむ

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第一章

甘えてあげなよ

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 ……いたたまれなかった。

 エイドリアンにキスをされたのをしっかり兄上に目撃されてしまった。おまけにその後2人っきりで馬車だぞ。微妙な空気だったんだよ。エイドリアンの馬鹿。
 
 なんてことを考えながら、頭の中はエイドリアンのことでいっぱいだ。試験勉強をしようにも、ちっとも頭に入りゃしない。
 とりあえず形だけでも勉強しているような気分になろうかとカバンの中をゴソゴソ漁って、テキストを机の上に出した。

「ん?」
 何か挟まってる。

 テキストを広げて取り出してみると、それはブライアンからもらった地理の要点を記したメモだった。
 
「ああ……」
 
 エイドリアンとのキスで熱くなっていた頭の中が、この紙を見て一気に冷めた。
 ありがとう、ブライアン。おかげで勉強できるわ。

 あれ?
 僕の中のブライアンのポジションがおかしなことになっている。

 その変化に気がついた僕は、なぜかしばらくツボに入って笑いが止まらなかった。




 いつものように兄上と2人で馬車に乗って学園に到着すると、先に来ていたエイドリアンが僕らのもとにやってきた。

「おはよう」 
「……おはようございます。エイドリアン」
「おはよう」

 エイドリアンの顔を見るのはまだちょっと恥ずかしいけど、たぶんうまく誤魔化せたよな。
 エイドリアンが普通の態度なのに僕だけドキドキしてるのもちょっとしゃくだし。

「試験勉強は進んでいるか?」
 僕のそばにやってきたエイドリアンは、さりげなくするりと僕の手を取った。一瞬、心臓がトクンと跳ねたけど態度に出ないようにふんばる。

 兄上はちらりと視線を向けたけれど、何も言わずに顔を前に戻した。

「あっ」と兄上。
「どうかしましたか?」
「レオが前を歩いてる。僕は先に行くから、エイドリアンまた後でな」
「おう」

「気を利かせてくれたな」
「そうなんですか? だとしたら、ちょっと恥ずかしいです」
「――最近、時々聞かれるんだよな。ショーンとの噂を聞きましたけど、本気なんですかって。失礼だろ?」
「あー」

 普通なら失礼なことかもしれないけど、僕に関しては失礼と言っていいのかよくわからなかった。だって今は更生しているとは言え、つい最近まで確かに危ない人種だったから。

「そういう時、俺はもちろん本気だと言って今どれだけショーンが過去のことを反省して頑張っているかを説明するんだけど、アランはいつもこう言うんだぜ。『ショーンは自分から過去のことを反省して頑張って変わろうとしている。だから今のショーンのことをちゃんと見てほしい』って。場合によっては『頼む』と言って頭まで下げるんだ」
 
「え……?」

 あの兄上が、僕のために頭を?

「だから恥ずかしいなんて言っていないで、アランにもちゃんと甘えてやれよ」
「……経験無くて、難しいです」

 甘えるといえば以前暴言を吐いたりやりたい放題だったのは甘えるうちに入るんだろうけれど、エイドリアンが言いたいのは絶対そんなことではないと思うし。

 困って考え込む僕の肩を、エイドリアンがポンと叩いた。

「まあ深く考えるな。学園から戻ってから勉強を教えてもらったり、俺との逢瀬を手伝ってもらったりイチャイチャの配慮をしてもらったり2人きりになる手伝いをしてもらったりだな――」

「エイドリアン……」
「いろいろあるということさ」

 見上げた先のエイドリアンは、お茶目で、そして優しい笑顔だった。
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