悪行を重ねた令息は断罪されたくないので生き方を変えました。誰の愛も欲しがらないと決めたのに、様子がなんだか変なんです

くるむ

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第一章

だったらなんで

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 試験が間近に迫ってきたせいもあり、僕らCクラスも休み時間にはテキストを広げて勉強する者たちが増えてきていた。そしてこのクラスで飛び抜けて頭のいいエリックの周りには人だかりができている。

 まあね。エリックは頭いいし、親切だからな。

 僕もさっきの授業で分かりにくかったところをエリックに尋ねようと思ったんだけどやめた。後で自習室で一緒に勉強するから、その時に聞けばいいやと思ったんだ。

 ということで僕は、気分転換も兼ねてトイレへと向かった。
 用を済ませて教室に戻ろうと廊下を歩いていたら、Bクラスの教室から出てきたジェイミーと目が合った。

 僕と目が合ったジェイミーは、あからさまに嫌な顔をする。
 でも僕はジェイミーを無視することに決めているので、素知らぬふりで視線を逸らした。

「ちょっと待ってよ」
 きつい声でぼくを呼び止めて、ずかずかと近づいてくる。

「……なに?」

 低い声になってしまったのは仕方がない。だって本当に迷惑なんだから。

「エイドリアン様と付き合ってるんですよね?」
「そうだけど」
 なに? エイドリアンのことでも何か文句があるのか?

「だったら、ブライアン様にまで気を引くような真似しないでください」
「してないよ!」

 反射的に大声を出してしまって、慌てて口を閉じた。

「じゃあどうしてブライアン様がショーン様に色々気を使ったり話しかけたりするんですか! 前はショーン様を避けていたのに」
「知らないよ。ブライアンには今までのことを謝って、もう邪魔しないって伝えてるんだから」
「え……? 改心したってことですか?」
「そうだよ。だからもうジェイミーに、嫌がらせなんてしてないだろ?」
「……それは、そうですけど。だったらなんで……」

「ようするに、ブライアン様に同情されるのを見越していい子ぶってるってことですね。相変わらずやり口が汚いですね」
 ジェイミーの後ろから、教室から出て来たトーマスがにゅっと顔を出した。
 出てこなくていいのに。相変わらずいやな感じのやつだ。

「どういう意味だよ」
「ブライアン様なら謝れば気が引けると思ったんじゃないですか? 実際そうなったわけですけど」
「なんで僕が今更ブライアンの気を引くことを考えなければならないんだよ。エイドリアンと付き合ってるのに」

「偉そうに。理由はそれでしょ? 今まで鼻つまみものだった自分が人気者の2人にチヤホヤされるのが嬉しくて仕方がないんでしょ。あなたはかわいいジェイミーが妬ましくてしょうがないんだ」

「はあ?」

 あまりにばかばかしい発想に思わず大きな声が出た。
 そして僕らのやりとりを、興味深そうに見て行く人たちがいるのに気がつきハッとした。
 せっかくやり直しの最中なのに、こんな馬鹿馬鹿しいことで騒いでたら元の木阿弥だ。

「ばかばかしい。僕もう教室に戻るから」
「図星をつかれたからって、逃げるんですか!?」

 怒鳴り返してやりたいけど我慢して、僕は急いで教室へと戻った。
 
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