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第二章
報告はもうちょっと後でいいと思うんだ 2
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「これは覚悟して見ないとだぞ、ショーン」
「へ?」
どういうことだろうと「?」を飛ばす僕に、エイドリアンはたのしそうに笑い、レオお兄様は僕と目が合うと色っぽく微笑んだ。
食事を終えた後、僕らは劇をのぞいたり小物やハンカチなど何か欲しいものはないかと見て回った。そんな中、あちゃーと思うような噂話が耳に入ってきた。
「そういえばさっき上級生が噂してるの聞いたんだけど、なんかやばい事件があったらしいぞ」
「え? なに?」
「詳しいことは知らないんだけどさ、一年生が怖い顔をしたリッケン先生に引っ張られて行ったんだって。ただごとじゃなさそうな表情だったらしいぞ」
「ええっ? あのリッケン先生が?」
「な、驚くだろ? だからよほどのことをしたんじゃないかって話してた」
「何したんだろう」
「盗みとか、暴力沙汰とか?」
うーんと考え込む2人に、それまで黙って聞いていた人が相手の肩をたたいた。
「おい、もうやめろよ。そんな萎える話聞きたくないわ。先生からなんの報告もないんだからさ。せっかく授業のないバザーなんだぜ。楽しもうよ」
「ああ、そうだな。悪い悪い。じゃあ休憩所にでも行って、ちょっとお茶でも飲んでこようか」
「それいいな。せっかくだから北校舎近くの休憩所に行こうぜ。あそこはクッキーも出してくれるらしいぜ」
「おお、いいな。行こうぜ」
小腹が空いていたのかもしれない。彼らは走るように北校舎の方へ向かって行った。
それどころじゃなかったからわからなかったけど、目撃した人がいたんだな。
「何かあったのでしょうか?」
心配そうなフローラ嬢を見て、キャトリン嬢が「そういえば……」と話し始めた。
「私も、クッキーを売っていた時に先ほどの話耳にしましたわよ」
「え、そうなの?」
エリックの驚いた声に、キャトリン嬢は頷いた。
「ということは、先ほどの話は本当のことかもしれませんわね。物騒ですわ……」
フローラ嬢のつぶやきを耳にして、エリックがさりげなくすっと彼女の傍に寄った。それに気がついたフローラ嬢がほっと体の力を抜いたのがわかった。
そんな2人に、僕までなんだかほっこりとする。
「心配しなくても大丈夫だよ。先生たちがちゃんと対処してくださっているようだし。必要な警備も入ってるって聞いてる」
「え? エイドリアン様、何かご存知なんですか?」
驚くエリックに、エイドリアンは苦笑した。
「……多少な。まあ詳しいことは後にしてさ、せっかくのバザーへの貢献と、楽しむことを優先しようぜ。ご令嬢方は心配かもしれないが、団体で行動していれば大丈夫だから」
「……そうですわね。せっかく楽しんでいますのに、心配ばかりしていては損ですわね」
「そうそう。さて、僕らはそろそろ時間だな。アラン、会場に向かわないと」
「ああ、そうだな」
「もうそんな時間か。よっしゃ、みんなで応援に行くか!」
「はい!」
エイドリアンの呼びかけに、みんな勢いよく返事をした。
「へ?」
どういうことだろうと「?」を飛ばす僕に、エイドリアンはたのしそうに笑い、レオお兄様は僕と目が合うと色っぽく微笑んだ。
食事を終えた後、僕らは劇をのぞいたり小物やハンカチなど何か欲しいものはないかと見て回った。そんな中、あちゃーと思うような噂話が耳に入ってきた。
「そういえばさっき上級生が噂してるの聞いたんだけど、なんかやばい事件があったらしいぞ」
「え? なに?」
「詳しいことは知らないんだけどさ、一年生が怖い顔をしたリッケン先生に引っ張られて行ったんだって。ただごとじゃなさそうな表情だったらしいぞ」
「ええっ? あのリッケン先生が?」
「な、驚くだろ? だからよほどのことをしたんじゃないかって話してた」
「何したんだろう」
「盗みとか、暴力沙汰とか?」
うーんと考え込む2人に、それまで黙って聞いていた人が相手の肩をたたいた。
「おい、もうやめろよ。そんな萎える話聞きたくないわ。先生からなんの報告もないんだからさ。せっかく授業のないバザーなんだぜ。楽しもうよ」
「ああ、そうだな。悪い悪い。じゃあ休憩所にでも行って、ちょっとお茶でも飲んでこようか」
「それいいな。せっかくだから北校舎近くの休憩所に行こうぜ。あそこはクッキーも出してくれるらしいぜ」
「おお、いいな。行こうぜ」
小腹が空いていたのかもしれない。彼らは走るように北校舎の方へ向かって行った。
それどころじゃなかったからわからなかったけど、目撃した人がいたんだな。
「何かあったのでしょうか?」
心配そうなフローラ嬢を見て、キャトリン嬢が「そういえば……」と話し始めた。
「私も、クッキーを売っていた時に先ほどの話耳にしましたわよ」
「え、そうなの?」
エリックの驚いた声に、キャトリン嬢は頷いた。
「ということは、先ほどの話は本当のことかもしれませんわね。物騒ですわ……」
フローラ嬢のつぶやきを耳にして、エリックがさりげなくすっと彼女の傍に寄った。それに気がついたフローラ嬢がほっと体の力を抜いたのがわかった。
そんな2人に、僕までなんだかほっこりとする。
「心配しなくても大丈夫だよ。先生たちがちゃんと対処してくださっているようだし。必要な警備も入ってるって聞いてる」
「え? エイドリアン様、何かご存知なんですか?」
驚くエリックに、エイドリアンは苦笑した。
「……多少な。まあ詳しいことは後にしてさ、せっかくのバザーへの貢献と、楽しむことを優先しようぜ。ご令嬢方は心配かもしれないが、団体で行動していれば大丈夫だから」
「……そうですわね。せっかく楽しんでいますのに、心配ばかりしていては損ですわね」
「そうそう。さて、僕らはそろそろ時間だな。アラン、会場に向かわないと」
「ああ、そうだな」
「もうそんな時間か。よっしゃ、みんなで応援に行くか!」
「はい!」
エイドリアンの呼びかけに、みんな勢いよく返事をした。
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