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第二章
話さなきゃね
しおりを挟む エリザベートバザーもそろそろ終了の時間が近づいてきた。客足もまばらになり、焼き菓子や小物を販売している売り子たちが、閉める準備を始めているところが何箇所かあった。
「そろそろ楽しい時間も終わりだな」
「……そうですね」
掌からは脂汗が滲み始めていた。
緊張している。
前世から続いていた僕を暗殺するキースはしっかり捕まえてもらえたし、きっと明日にでもなれば何もかもスッキリと解決するに違いない。
なのに、僕は妙に緊張していた。
エリックは、僕の前をフローラ嬢と2人で歩いている。
それはもう楽しそうに、来年もまた2人でダンスのコンテストに出たいねと笑顔で話をしている。
うん、楽しそうだ。とても楽しそうなんだよな。
…………。
エイドリアンの手が、僕の手を捕まえてぎゅっと握った。
見上げると、口角をきゅっとあげ合図をするように首をほんの少し傾けた。
うん、だよね。今言わなきゃね。
「エ、エリック!」
ちょっぴりうわずった声になってしまった。エリックは僕に呼ばれて振り返った。顔は、楽しそうに笑っている。
「ショーン様、今日は本当に楽しかったですね! ショーン様も来年また、エイドリアン様とダンスのコンテストに出場しますか?」
先に楽しそうに問いかけられてしまい、出鼻をくじかれた。
「あ、う、うん……。そうだね」
歯切れの悪い返事になってしまった僕を、エリックが不思議そうな顔で見る。
「あ……えっと」
言い淀み、迷う僕の手のひらが力強く握られた。
きっと頑張れって言ってくれてるんだ。
僕も気合を入れるように、エイドリアンの手のひらをギュッと強く握り返した。そして唾を飲み込む。
「あ、あのさ、エリックにちょっと話しておきたいことがあって」
慎重な感じの僕の様子に、エリックも何か感じることがあったみたいだ。彼も慎重に「何でしょう」と返した。
「うん、あの実は……」
「ショーン」
兄上が僕の言葉を止めた。
え? なに? 話しちゃダメなの?
びっくりして兄上をを見上げると、親指をクイッと上げて指さしていた。今日休憩所として使われていた、普段学生がランチも食べれる場所となっている丸テーブルと椅子がある。
「立ち話もなんだから、向こうに座って話さないか?」
「あ、そうですね」
「そうするか」
一行は、ぞろぞろとテーブル席へと向かった。
「そろそろ楽しい時間も終わりだな」
「……そうですね」
掌からは脂汗が滲み始めていた。
緊張している。
前世から続いていた僕を暗殺するキースはしっかり捕まえてもらえたし、きっと明日にでもなれば何もかもスッキリと解決するに違いない。
なのに、僕は妙に緊張していた。
エリックは、僕の前をフローラ嬢と2人で歩いている。
それはもう楽しそうに、来年もまた2人でダンスのコンテストに出たいねと笑顔で話をしている。
うん、楽しそうだ。とても楽しそうなんだよな。
…………。
エイドリアンの手が、僕の手を捕まえてぎゅっと握った。
見上げると、口角をきゅっとあげ合図をするように首をほんの少し傾けた。
うん、だよね。今言わなきゃね。
「エ、エリック!」
ちょっぴりうわずった声になってしまった。エリックは僕に呼ばれて振り返った。顔は、楽しそうに笑っている。
「ショーン様、今日は本当に楽しかったですね! ショーン様も来年また、エイドリアン様とダンスのコンテストに出場しますか?」
先に楽しそうに問いかけられてしまい、出鼻をくじかれた。
「あ、う、うん……。そうだね」
歯切れの悪い返事になってしまった僕を、エリックが不思議そうな顔で見る。
「あ……えっと」
言い淀み、迷う僕の手のひらが力強く握られた。
きっと頑張れって言ってくれてるんだ。
僕も気合を入れるように、エイドリアンの手のひらをギュッと強く握り返した。そして唾を飲み込む。
「あ、あのさ、エリックにちょっと話しておきたいことがあって」
慎重な感じの僕の様子に、エリックも何か感じることがあったみたいだ。彼も慎重に「何でしょう」と返した。
「うん、あの実は……」
「ショーン」
兄上が僕の言葉を止めた。
え? なに? 話しちゃダメなの?
びっくりして兄上をを見上げると、親指をクイッと上げて指さしていた。今日休憩所として使われていた、普段学生がランチも食べれる場所となっている丸テーブルと椅子がある。
「立ち話もなんだから、向こうに座って話さないか?」
「あ、そうですね」
「そうするか」
一行は、ぞろぞろとテーブル席へと向かった。
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