これは兄さんじゃありません

くるむ

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プロローグ

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『志音。いい加減に起きろよ、休みだからっていつまで寝てるんだ?』

「兄さん!?」

バリトンの、少し低く優しい僕の大好きな兄さんの声。

帰って来たんだ、やっぱり生きててくれてたんだ!


僕は丸まって、抱いていた布団を蹴飛ばして、ガバリと飛び起きた。



幻聴……。

やっぱりと言うべきか、
兄さんの姿は、この部屋のどこにもなかった。




『今度は北に行ってみようかな?』
『また一人旅?』
『ああ』
『……たまには僕も連れてってくれればいいのに』

『んん? 俺の旅は、自由気ままが前提だぞ? 決まってるのは初日に泊まるところだけで、後は適当に電車に乗ったりバスに乗ったりして計画性も何にもないんだぞ? お前そんな旅、ついてけないだろ?』 

『もっと計画的な旅にすればいいのに……』
『ハハ。それはそのうちな』


その内っていつなんだよ。 


あの日、兄さんは楽しそうに旅行に出かけて、そのままだ。
捜索願も出した。兄さんの友達たちも協力してくれて、痕跡を追おうと頑張った。

だけど結局、もう一年が経とうとするのに、兄さんの行方はヨウとして知れなかった。
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