これは兄さんじゃありません

くるむ

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第二章

好きになってしまったから

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「!☆☽▽△×〇~~!!」

ギャー、なにしてんの、なにされてんの!?

パニックになって、兄さんの腕をギュギュっと掴む。
押しても押してもびくともしない。力強さは兄さんそのものだ。

ちょっ……、んんっ。

優しく甘く舌を絡められ、ぞくりと背中を痺れるような甘い疼きが走る。
頬の内側や上あごを舐められ、舌を甘噛みされて……。僕の体からどんどん力が抜けていった。

痺れる頭で思考がマヒをし始めているけど、これって……この状態って……。

「ひゃあっ!」

首筋に唇を這わされて、ビクッと体が跳ねた。

ちょ、ちょっと待って! ちょっと待って!
いったい兄さん、なにしてんの!?

服がはだけられてる!!
て……、掌を這わさないで!!

ギャー!!!どういうこと――――!?

ホテルの従業員みたいに、食べられようとしてるんじゃないの―――――!?


「なっ!? なにやってんだ!! お前、志音を食う気かっ!」

突然バタンとドアが開いて、大翔さんが現れた。

「ひ……、大翔さんっ……」

涙目になって大翔さんに救いを求めたら、一瞬大翔さんの顔が強張り、だけどすぐに我に返ったようでずかずかと僕らの方に近づいてきた。

そして僕の手を取ろうとしたところを兄さんにパシンと払われる。

「なに言ってんだ、お前。俺が志音を食うわけないだろ! なんで愛する者まで食わなきゃならないんだ」
「……は?」

っ……!
え、ええっ!?
今、なんて言った!?

僕もそうだけど、大翔さんも驚きのあまり固まっている。

だって僕の服はハダけたまんまで、しかも兄さん、僕の上に圧し掛かったままなんですけど。……この状態って、ホテルの女性が食べられる前の態勢とおんなじだ……。

「……じゃあお前、志音に何しようとしてるんだ」
「求愛行為に決まってる」

……!!×△〇□◆☆☆!?

また思考回路がぶっ飛んだ。


……て、な……、なに?
僕、兄さんに……!?
えっ、ええっ!? ええええええぇえぇぇぇぇぇぇ―――――――!!


「お、お……、お前、なに言ってんだ兄弟で!!!」

いや、違うし。
コレ、兄さんじゃない……、っ!!?

「ちょ、ちょちょ……ちょっと待って兄さん!!」

うわー―――――!!
待って、待って、待って!!
し……、舌這わさないで!!
甘噛みしないで!!

どこ触ってんの―――――――!!
ギャーーーーーーーッ!!!





☆☆☆☆☆☆☆☆


あの後、大翔さんと異変を感じて駆けつけてくれた晴斗さんと2人掛かりで僕から兄さんを引き離し、何とか事なきを得た。……んだけど。

……兄さんのキス、気持ちよかった。
触られるのも、本当は嫌じゃなかった。落ち着いた今だからわかることだけど、あの時は急だったから気持ちがついて行けなかっただけだ。

これって、まずいのかな?

僕は本物の兄さんに、恋愛感情なんて抱いてはいなかったけど、兄さんのことは大好きだった。
極まり過ぎたブラコンで、よく似た人を好きになっちゃうって……ありなんだろうか。


「志音」

呼ばれて顔を上げると、チュッとキスをされた。
どうしよう、ドキドキするよ。

「お前が俺のものになってくれたら、頑張って焼いた肉もちゃんと食べる」
「本当?」
「ああ」

真っ正面からジッと見られて、僕の頬に熱が集まった。

……ああ、やっぱり僕は、どうやらあのキスで落ちてしまったらしい。

「うん。……いいよ。僕も、僕も兄さんのこと……好きになっちゃったみたいだ」

真っ赤になってコクンと頷く僕の視線の先で、大翔さんたちが驚愕な表情で僕らを見ていた。

「お……、おま……、志音。お前本当に大丈夫なのか? 騙されて食われたりしたら……」
「ああ゛?」

突如兄さんが眉間にしわを寄せて威嚇した。

「なにがあろうと志音だけは絶対に食わん! ……お前らなら食ってもいいがな」

恐ろしい声音で言うものだから、その場にいた全員が瞬時に凍り付いた。
大翔さんも新さんも、晴斗さんまでが青い表情で固まっている。

パカン!
「……って!!」

「駄目だよ兄さん、冗談でもそんなこと言っちゃ! ……兄さんがみんなに嫌われるだなんて、僕は嫌だよ……」

唇を尖らせて上目遣いで文句を言うと、兄さんの表情がだんだんと崩れて来た。
崩れたその表情は、甘いものへと変わっていく。

「そうか。……そうだな、悪かった。二度と誰かを食べるだなんて言わないから、許してくれるか?」
「うん。兄さん、大好き!」

嬉しくて兄さんに抱き着くと、兄さんも僕をギュッと抱きしめ返してくれた。


部屋の端に見える大翔さんたちの唖然とした姿に、僕は苦笑した。



……好きになってしまったのは、兄さんによく似た異世界人。
傍から見たらおかしな状況には違いないんだろうけど、この人が兄さんじゃないことは確かな事だ。




ねえ兄さん、今、あなたはどこにいるの?

温かな腕の中で癒されながら、僕は未だ見つからない兄さんに思いを馳せた。


兄さんが帰って来たら、三人兄弟に……なれるといいなあ。

そんな事を思いながら。


☆おそまつ!☆
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