お前以外には触らせてないんだよ!

くるむ

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後日談

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多分、傍から見ても俺の和基への態度は変わっているんだろう。
なんとなーくだけど、周りの俺らへの態度が少し違ってきている気がする。

特に鬱陶しくなったのは、岡田だ。
時々思い出したように、「考え直せ、何を血迷ってあんなウザい奴。あんな年下よりは、俺の方が良いぞ。俺の方がずっとずっと頼りになるぞ」とあからさまに自分のことまでアピールし始めた。
……ウザいのはお前だ。

そして、結果俺らの仲を進展させる切っ掛けを作ったあの一年坊主……、小早川は、相変わらず和基に懐いていい後輩ぶりを演じているようだけど、俺と和基を見かけるたびにこっそり俺を睨んでいくのは相変わらずだ。
ただ、あいつと遭遇するときだけ俺も和基の腕を掴んだり引っ付いたりして牽制(俺は嫌がらせのつもり)してるんだから、性格的にはきっとどっこいどっこいなんだろう。


「青葉、何ニヤついてる」
「……は? なに? 笑ってたか、俺?」
「ああ。人の悪そ―な笑顔を作ってた」
「――羽瀬川じゃ、あるまいし」
「なんだと―?」
「うわっ!」

ベッドの上で教科書片手に受験勉強のつもりが、ついつい和基とのことを考えてしまっていた。そこを見ていた羽瀬川に、揶揄われたわけなんだけど。
切り返した俺に怒ったふりをした羽瀬川が、ふざけて俺の所にダイブしてきてプロレスみたいに俺に乗っかった。

「ちょっと! 待て待て、ギブ!!」
「ギブ、早ぇ―!」「何してんですか! 羽瀬川先輩!!」
「え?」
「は?」

ドーン!
ゴロゴロッ。
「……っ、て―っ! 何すんだ……、て、え? 和基……」

ベッドの上でポケッと目を丸くする俺と羽瀬川の頭上には、嫉妬に塗れた怒り顔の和基がいる。

……あ。
これ、完璧勘違いのパターン?

「和基、誤解だ、誤解。ふざけてプロレスごっこになっちゃっただけで……」
「羽瀬川先輩! 青葉さんは、絶対譲りませんからね!」
「バカ、和基何言って……」

本気で嫉妬しているのか、なんなのか。和基がムギュッと俺を抱きしめた。

……だから、俺はお前にこうされると力が抜けるんだってば……。
クタンと和基に縋りつくように体を預ける俺に気づいたんだろう。和基が俺をグイッと引き寄せて安定するように抱きしめなおした。

「おい、おい。他人様の前で、イチャイチャを見せびらかすなよ」

呆れて諭す羽瀬川に対しても、和基はグルグルと唸る犬のように俺を抱きしめ、羽瀬川を睨んでいる。それには流石の羽瀬川も、参ったなーという表情だ。

「……ヤレヤレ、だな。でも、まあてられた。俺もシノの顔見に行ってくるわ」

ちょっぴり呆れた表情を残して、羽瀬川は手を振って部屋を出て行った。
残されたのは2人。
なぜかちょっぴり沈黙が下りる。

「…………」
「…………」

「ハア……」
う。
何、ため息吐いてんだ?

「気づいてませんでした、俺」
「……何を?」
「羽瀬川先輩がライバルだってこと」
「!? ハア? なに言ってんだ、お前」

とんでもない言葉に、抜けた力がオンになった。
和基の体を押して、その顔を見つめる。

「だって、青葉さん、俺以外の奴に触られる気は無いって言ってたのに……」
「あー、だから! あれは、ふざけてたわけだし突然だったからで。しかもあいつは俺の親友だぞ? 羽瀬川だってそう思ってるし、あいつの夕月への溺愛っぷりはお前だって分かってるだろ?」

「……そうですけど―」
「だいたい、本当に羽瀬川がお前のことをライバルだって思っていたとしたら、この間の芝居だって持ち出したりしないだろ? あいつ、俺によくお前にもっと素直になれって説教してたくらいだぞ?」

「え? 本当ですか?」
「そうだよ」

「……そう、なんですか。……う~」
「まったく、見当違いの嫉妬なんてしてるなよ」

こんだけ否定してるのに、和基はまだまだ納得してない表情だ。
本当にこいつは、ヤキモチ焼きすぎだぞ。

でも、まあ。

心のどこかで、それを嬉しいと思っている自分も自分だが。


「和基……」

ベッドに仰向けに寝転んで、和基を手招きして名前を呼んでみた。

呼ばれて顔をこちらに向け一、瞬目を丸くした和基だったけど、すぐに嬉しそうな顔に変わりいそいそと俺に近づいてくる。

まったく、手の掛かるヤキモチ焼きだ。



だけど、俺にとっては誰よりも特別で、愛しい愛しい俺だけのワンコだ。


お・わ・り♡
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