幼児化した闇魔術士は聖騎士に溺愛される

くるむ

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第一章

これからは君のことをルアンと呼ぶ

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 俺は今、自分に与えられた部屋のベッドの上で冷えたフルーツジュースを飲んでいる。

「悪かった」 
 ウィルフレッドが情けない表情をして俺に頭を下げた。彼の頭にもしも耳が付いていたらシュンと垂れているだろう。

「そうですよ、ウィルフレッド様。幼い子に長風呂は危険です。肝に銘じていただきませんと」

 ウィルフレッドをたしなめているのはメイド長のマーサという女性だ。彼女はウィルフレッドが幼い頃から、彼にずっと仕えているらしい。その隣には二十代前半ぐらいのメイドが控えている。
  
「いや、うん、これからは気をつける。あんまり可愛いから、つい弟ができた気になって構いすぎてしまった」
「分かってくださったら良かったです」

 ウィルフレッドに苦笑した後、マーサがくるりと俺の方を見た。そして、となりのメイドの背中を押す。
 
「彼女はリースです。まだ若いですけど、しっかりしているのでルアン様付きとします」
「リースです。お世話させていただきます。よろしくお願いします」

 え? 俺付きのメイド?
 ……ここの人たちは、俺のことをどれだけ分かっているんだ? 髪や目が黒いのは、見てれば分かるはずだけど。

「私が仕事で出ていない時、リースに君のことを見てもらうことにした。君が黒髪のせいで親に虐待されて行き場がないということはちゃんと伝えてある。だから余計なことは気にしないで良い。ここには黒髪、黒い瞳だからと言って差別する者は誰もいない」

「…………」

 こいつ、俺が闇魔術士と呼ばれて暴れ回ってる張本人だということを隠してるってことだな。
 まあ、知っててかくまってるってことになると、それがバレたとき、ここの使用人にも迷惑かかることになるんだろうけど。

 リースは、俺を本当の幼児だと思っているからだろう。初対面の大人を相手に、怖がらせないようにと優しい笑顔で俺を見ている。ついでにウィルフレッドも、何か言いたげに俺のことをじっと見ている。

 黙って俺もウィルフレッドのことをじっと見ていたら奴の眼圧がだんだん強くなってきた。
 ああ、そうかよ。要するに俺に言わせたいわけだな。
 鬱陶しい眼圧に負けた俺は、しぶしぶ口を開いた。

「……よ、よろちくおねがいちまちゅ」
 俺の返事にぱーっとリースの表情が明るくなった。
「はい、はいこちらこそ!」

「リース、じゃあ今日はいいから。明日、私が出勤した後、頼むよ」
「はい、かしこまりました」

 二人のメイドは、一礼して部屋を出て行った。

 ふーっと息を吐いて、ウィルフレッドがこちらを見た。

「君の素性が万が一にでも外に漏れないように、これからは私も君のことをルアンと呼ぶからな」
「――わかった」

 俺も肩の力を抜いて、ポスンとベッドに体を預けた。
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