幼児化した闇魔術士は聖騎士に溺愛される

くるむ

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第一章

戻す気はない

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 湯あたりが治まった頃、リースが食事を持って来てくれた。ミルク粥というものらしい。ほんのりと湯気が立っている。さっきのフルーツジュースもそうだけど、ここでは俺に人らしい食事を与えてくれる。

 なんだ俺。こんなことくらいで、目頭が熱くなってきやがった。

「どうしたルアン。やっぱり幼児の手ではつかみにくいか」
「だっ、らいじょうぶだっ」
「いいよ、ほら、貸せ」

 大丈夫だというのに、ウィルフレッドは俺から無理やりスプーンを奪った。そしてミルク粥を掬って口元に持ってくる。

「ほら、あーん」
 ぐっ、ぐぬぬ……っ!

「私の手からは食べたくないのか?」
 ウィルフレッドの眉が情けなく下がる。ありもしない耳が垂れているのを感じる。

「ルアン?」
 キュウーンという空耳まで聞こえてきた。

 ……不本意だ。ものすごく不本意だけど、俺はパカッと口を開けた。ウィルフレッドの顔が途端にパーッと明るくなる。あるはずもない耳がピンと立ち、尻尾がものすごく振れている。

 !
「おいひい……」

 ほんのり甘くてぷるっとしてて……、とにかく俺が味わったことのない食べ物だ。まあいつも硬いパンやら、そこらに生えてる草や実ぐらいしか食べたことないもんな。

「そうか、おいしいか、よかったな。ほら、もっと食え」
 ウィルフレッドがまたスプーンを俺の口元に持ってきた。

「じ、じぶんれたべゆ……。おれがやりゅ」

 俺が手を出すと、ウィルフレッドはその手をじーっと見た。そしてスプーンを器に戻して俺の手をプニプニと軽く握った。

「本当に可愛いらしい小さな手だな」
「ウィリュ……っ、」
 いたた、舌噛んだ。長ったらしい名前は嫌いだ。

「ウィルでいいよ。それと今の君には、見たままの力しかない。無理はしないでここに居るみんなに甘えていい」
「もどすきはないにょか?」
「ないな」
 ウィルフレッドはスパッと言い切った。

「君の保護が最優先だ。もし今、君を戻したとしたら、ここから逃げて出て行ってしまうだろう? そしてまたひどい目にあって暴走するのがおちだ。私が率いる団員以外が君を捕縛して陛下のもとに送ってしまったとしたら、私としてはもう手を出すことができない」

「…………」

 むすっとする俺を見て、ウィルフレッドがスプーンを俺に持たせた。

「食べにくかったら代わるから」
「んなわけない」

 バカじゃないの?と本気で思っていたんだぞ。それなのに、うまく掬うことができなくて、結局はスプーンをウィルフレッドにとられてしまった。
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