幼児化した闇魔術士は聖騎士に溺愛される

くるむ

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第一章

変な動悸

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「魔道具で、家族で使えるおしゃれな眼鏡を作ってくれと頼むか」
「どういうこと?」

「大人でも子供でもその頭の大きさに応じて実際に形や大きさを変えられる色つきのメガネを作ってもらうんだ。そうすればルアンのことを話さずに済むし、完璧とは言えないけど、顔さえじっと見られないように気をつければなんとかなるだろう」

「そしたら、まちをであるいてもいいのか?」
「一人は絶対ダメだぞ。出歩くときは必ず誰か二人に付き添ってもらえ」
「え? なんで二人?」

「一人だと、もし万が一誰かに出会って話しかけられた時に隙ができるだろう? それだとまずいからだ」

「わかった。かならずだれかふたりといっしょにこうどうする。そしたらそのまどうぐつくってくれるか?」

「ああ。明日にでも頼みに行ってくるよ」
「ありがとう、ウィル!」

 本当に嬉しかったから俺はよほどいい顔をしていたのかもしれない。ウィルがとても驚いた顔をして俺を見、その場でしゃがんでぎゅうぎゅうとおそろしい力で抱きしめやがった。

「いたたたたたたっ、いてーよ!」
「ああ、すまんすまん。あんまり可愛いもんだからつい力が入ってしまった」 

 何がついだよ、この馬鹿力!

「さあ、そろそろ食事の時間だ。食堂に行こうか」
「おう」

 ぴょこんと椅子から飛び降りてドアに向かって歩いた。いつもは油断するとウィルが抱き上げてしまうので、そうならないようにと幼児の足を一生懸命前に進めた。ドアノブに手を伸ばしてぐりんと開ける。

 ん? なんだ? いつもならこの辺でひょいと抱き上げられるのに。

 振り返るとウィルが手のひらで口元を覆い、何とも言えない表情で俺を見ている。

「一つ一つの仕草が、本当に可愛いな」
「はあ?」

 あからさまに嫌な顔を作って睨んだけれど、当の本人は全く意に介す様子がなかった。それどころかそばに来て、俺の手をひょいとつかむ。

「今日は手をつないで歩こう」
「は?」

「抱っこもいいけど、柔らかくて小さい手の平をこうやって握って歩くのも楽しいものだな。可愛いとことこ歩きも見られるし」

「ち、ちっこいやつならだれだってかわいくみえるんだろ。いちいちそういうほうこくするな」
 むず痒くて仕方ない。

「うわっ!」
 手をつないだまま歩いているのに、ウィルが急に立ち止まったからその反動で転びそうになった。

「すまない!」
 慌てたウィルに抱きとめられた。ついでにそのままひょいと持ち上げられる。
 
「おいっ」
「言われて思ったんだけどな」 

 抗議はスルーかよ。
 スルーしたままウィルは俺の顔を真正面から見た。

「今まで甥っ子や知人の子供たちを何度か抱っことかしたことあるけど、ルアンほど可愛いとか愛しいとか思った子はいないんだよな。なんて言うんだろうな。キューンって胸が痛むような甘い感じが……」

「なっ、なにきもちのわるいこといってんだよ……!」

 顔が急にボンって熱くなって変な動悸までしてきやがった。
 怒った俺は、間近にあったウィルの顔をペシペシと叩いた。

「こらこら恥ずかしいからって顔をたたくな」
「はあ?」
「本当に可愛いな」
「はあああ?」

 騒がしく食堂にやってきた俺らを見たリースが、笑いながら近寄ってきた。俺を椅子に座らせるために引き取ろうと手を伸ばした。のに、ウイルはリースにくるんと背を向けた。

「私がいるときは、ルアンの世話は私がやる」

 いつも俺が座る椅子の上には、さらにコンパクトにした椅子のような形をしたクッションがひもで結んで取り付けられていた。

「ゲイリーのやつ、もう仕上げてきたんだ」
「ウィルフレッド様……」

 なぜかマーサが、ジト目でウィルを見ている。

「ああ悪い悪い。いい出来だ。感謝している」

 どういうことだ?と思いリースを見上げたら、ゲイリーというのはマーサの娘婿で、俺が安全に椅子に座れるように特別に作ってくれたのだと教えてくれた。
 隣でウィルが、いつもリースに言いくるめられるから、今日こそはと意気込んでいたのにと、心底悔しそうに呟いたのを、俺は聞かないふりをしてやりすごした。
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