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第二章
聖女との対面
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「おはよう」
「……はよ」
小さい手で目をこすりながらイアンが食堂に現れた。ぽてぽてと歩く姿が微笑ましい。リースに抱き上げられて椅子に座らされた。丸パンを掴んでパクッと頬張った。
「なんだよ」
じっと見ていたら睨まれた。相変わらずつれない。
「……今日は少し遅くなる」
「ああ、聖女のお披露目パーティーだったか」
「そうだ。私が帰る頃にはルアンはもうとっくに寝ているかもしれないから、起きてる君を堪能しなくてはと思って見てた」
あ、スープをすくおうとした手が止まった。
「わけわかんねぇ冗談言うな」
顔も上げずに文句を言うイアンの耳が赤い。
ああ、本当にかわいい。駆け寄ってぎゅうぎゅう抱きつぶしたいくらいだ。
「コホン」
モラニスのわざとらしい咳払いで我に返った。
そうだった、あんまりのんびりしていては遅刻してしまう。
「ごちそうさま。ルアンはゆっくり食べてていいからな」
席を立ってモラニスからかばんを受け取り、食堂を後にした。
今日は聖騎士団室に行かずに、直接王城に向かうように言われていた。聖女への挨拶を兼ねてだ。
場内はあわただしく、侍女達が足早に動き回っている。だが彼女らの表情は疲れたものではなく生き生きとしていて、聖女への期待が大きいのだろうと見て取れた。実際、漏れ聞こえてくる声も、遠目から見たけど綺麗な方だった、いつかお声をかけてもらえるかしらとか、そういう喜びの声ばかりだった。
聖女という王家にとっての救世主が現れたのだ。これを機に、黒髪や黒い瞳に対する恐怖心を少しでもなくしてもらえれば助かるのだけど。
謁見室に行くと近衛兵が立っていて、私を見るとすぐに扉が開けられた。
「失礼いたします」
「待っていたぞ、第一聖騎士団団長、ウィルフレッド・バリー・アトキン」
国王と王妃が玉座に座っていて、隣には聖女と思われる少女が立っていた。その横に近衛騎士がいるので、おそらく彼が聖女の護衛騎士になったのだろう。
聖女は、噂どおり綺麗な少女だった。髪はライトブラウンで瞳はヘイゼル。白く透き通った肌にぷっくりとして艶やかなローズ色の唇。愛らしいが艶っぽさもある美少女だ。
「彼女が聖女のナターシャだ。そして彼が噂の、第一聖騎士団、団長のウィルフレッドだ」
陛下の言う噂とはどうせろくでもないものだろうと思いつつ、愛想笑いを浮かべた。聖女は緊張しているのか、ボーッと私を見つめていた。
「私もかねがね聖女の噂は聞いています。とても優しくて綺麗な方だと。今後の活躍を期待しています」
「お、恐れ入ります」
聖女は顔を赤くして小さな声でつぶやくように返事をした。まだまだ緊張しているのだろう。私たちも気を遣ってやらねばならないな。
「今日のお披露目パーティーが滞りなく進むようによろしく頼むぞ」
「かしこまりました」
「――それから、闇魔術士はどうなってる? 見つけられたのか?」
「鋭意捜査中です」
しつこい奴だ。まだイアンを殺したいのか。
「見つかるまで根気よく探すのだぞ。妥協は許さん」
「御意」
恭しく頭を下げて、完全に従うように表現してみせた。
「今日は忙しいであろう。もう行っていい」
「はい、失礼いたします」
謁見室を出て、さも忙しいといった風情で早足で歩く。ここでうっかり素の表情を出してはまずい。
王城を出てから心底でかいため息をついた。
誰がなんと言おうとイアンは絶対に守ってみせる。自分自身に誓いを立てた。
「……はよ」
小さい手で目をこすりながらイアンが食堂に現れた。ぽてぽてと歩く姿が微笑ましい。リースに抱き上げられて椅子に座らされた。丸パンを掴んでパクッと頬張った。
「なんだよ」
じっと見ていたら睨まれた。相変わらずつれない。
「……今日は少し遅くなる」
「ああ、聖女のお披露目パーティーだったか」
「そうだ。私が帰る頃にはルアンはもうとっくに寝ているかもしれないから、起きてる君を堪能しなくてはと思って見てた」
あ、スープをすくおうとした手が止まった。
「わけわかんねぇ冗談言うな」
顔も上げずに文句を言うイアンの耳が赤い。
ああ、本当にかわいい。駆け寄ってぎゅうぎゅう抱きつぶしたいくらいだ。
「コホン」
モラニスのわざとらしい咳払いで我に返った。
そうだった、あんまりのんびりしていては遅刻してしまう。
「ごちそうさま。ルアンはゆっくり食べてていいからな」
席を立ってモラニスからかばんを受け取り、食堂を後にした。
今日は聖騎士団室に行かずに、直接王城に向かうように言われていた。聖女への挨拶を兼ねてだ。
場内はあわただしく、侍女達が足早に動き回っている。だが彼女らの表情は疲れたものではなく生き生きとしていて、聖女への期待が大きいのだろうと見て取れた。実際、漏れ聞こえてくる声も、遠目から見たけど綺麗な方だった、いつかお声をかけてもらえるかしらとか、そういう喜びの声ばかりだった。
聖女という王家にとっての救世主が現れたのだ。これを機に、黒髪や黒い瞳に対する恐怖心を少しでもなくしてもらえれば助かるのだけど。
謁見室に行くと近衛兵が立っていて、私を見るとすぐに扉が開けられた。
「失礼いたします」
「待っていたぞ、第一聖騎士団団長、ウィルフレッド・バリー・アトキン」
国王と王妃が玉座に座っていて、隣には聖女と思われる少女が立っていた。その横に近衛騎士がいるので、おそらく彼が聖女の護衛騎士になったのだろう。
聖女は、噂どおり綺麗な少女だった。髪はライトブラウンで瞳はヘイゼル。白く透き通った肌にぷっくりとして艶やかなローズ色の唇。愛らしいが艶っぽさもある美少女だ。
「彼女が聖女のナターシャだ。そして彼が噂の、第一聖騎士団、団長のウィルフレッドだ」
陛下の言う噂とはどうせろくでもないものだろうと思いつつ、愛想笑いを浮かべた。聖女は緊張しているのか、ボーッと私を見つめていた。
「私もかねがね聖女の噂は聞いています。とても優しくて綺麗な方だと。今後の活躍を期待しています」
「お、恐れ入ります」
聖女は顔を赤くして小さな声でつぶやくように返事をした。まだまだ緊張しているのだろう。私たちも気を遣ってやらねばならないな。
「今日のお披露目パーティーが滞りなく進むようによろしく頼むぞ」
「かしこまりました」
「――それから、闇魔術士はどうなってる? 見つけられたのか?」
「鋭意捜査中です」
しつこい奴だ。まだイアンを殺したいのか。
「見つかるまで根気よく探すのだぞ。妥協は許さん」
「御意」
恭しく頭を下げて、完全に従うように表現してみせた。
「今日は忙しいであろう。もう行っていい」
「はい、失礼いたします」
謁見室を出て、さも忙しいといった風情で早足で歩く。ここでうっかり素の表情を出してはまずい。
王城を出てから心底でかいため息をついた。
誰がなんと言おうとイアンは絶対に守ってみせる。自分自身に誓いを立てた。
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