幼児化した闇魔術士は聖騎士に溺愛される

くるむ

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第二章

国のための聖女

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 第一聖騎士団室に戻ると、帰りを待ちわびていたように皆がわっと集まってきた。

「聖女はどんな感じの人でしたか?」
「性格は良さそうだったか?」
「癒しの力とかは見ましたか?」

「おいおい。そんなの挨拶しただけで、分かるわけないじゃないか。また慣れないのか緊張しているようで、ろくに喋りもしなかったぞ」
 そう言うと団員たちは、「おー」と感嘆の声を漏らした。

「ということは噂通り、可憐で愛らしい方なんでしょうね」
「かもしれんな」
「曖昧ですね」
「知らない者に評価はできん」
「はーっ、かったいなー、うちの団長は」
「代わりにうちの副団長はふにゃふにゃですよね」
「なんだと、こらー」

「おいおいふざけるのはいい加減にしろ。巡回を済ませてきたんだろう? どうだった?」
「綺麗なものでした。ここ最近はずっとこんな調子で、瘴気の欠片も見た者はおりません」
「聖女のお力かもしれませんね」
「そうかもしれんな」

 お披露目パーティーは夕刻から始まることになっていたので、通常の業務を行いつつ手の空いている者は手伝いに赴いた。

 私は宰相からしつこく急かされていたイアン捜索の報告書を作成していた。もちろん嘘八百を並べることになる。
 ま、仕方がないよな。実際捜索なんてしてないわけだし。

「締めくくりはこうだな。くまなく探したが一向に見つからなかった。よって、重傷を負いながら普通では考えられない場所に逃げ込み、そのまま死亡したのではないかと推測される。……こんな感じだろうな」

 コンコン、とノック音がした。カールが扉を開ける。
「団長、第二聖騎士団のヘイグ団長です」
「ヘイグ殿? 珍しいな……通してくれ」

 ヘイグ団長は魔法よりも剣技を得意とし、彼の右に出る者は居ない。しかも王家に忠誠を誓い国を守ることに命をかけているため、第二聖騎士団は骨のある集団として認識されていた。もちろん第一も国を守ることに命を懸けてはいるが、必ずしも王家を一番と考えているわけではないので評価は低くなっていた。

「先ほど神官長から、『聖女にもう一人護衛をつけたいと思っている。第一とも相談して、聖騎士団の方から担ってもらえないだろうか』と打診があった」
「聖女の護衛騎士となると、それ相応に力のある者を求められるのだよな」
「もちろん、そうなる」

 聖女は、国のために尽くしてくれる宝とも言える存在だ。その護衛となれば生半可な気持ちでできるものではない。だが第一は、有事の時は最前線で戦わなければいけない団だ。

「私としては、できれば第二の方でお願いしたい。第一の方ではおそらく、期待に沿えることは難しいだろう」
「いいのか?」
「もちろんだ」
「わかった。それでは、こちらで選定しておく」

 ヘイグが出て行った後、ニールが「もったいないことしてー」と文句を言った。

「うちの趣旨は、聖女の護衛には向かないだろ?」
「ま、分かってるけどな」

 王家が大事に守りたいと思っているものは、助けなど引く手数多というものだ。
 私はできるならば、イアンのように誰にも見向きもされない弱い立場のものこそに目を向けていきたいと思っている。
 
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