幼児化した闇魔術士は聖騎士に溺愛される

くるむ

文字の大きさ
35 / 59
第二章

お披露目パーティ

しおりを挟む
 お披露目パーティーは盛大だった。王家主催のパーティーには何度か顔を出しているが、今日ほどの人数は見たことがない。国の宝ともいえる聖女を王家が保護したことで、その権威を誇示したかったのだろう。
 高位貴族や名を馳せた諸侯らが見守る中、国王と王妃の後に続き聖女のナターシャが現れた。両脇に護衛騎士を従えている。

「聖女のお披露目パーティーによく来てくれた。今日は無礼講なのでみんな楽しんでほしい。だがその前に、聖女を紹介しよう」

 国王が第二王子を振り返った。
 どうやら聖女に関することは王太子ではなくクリストファー殿下に任せたようだ。クリストファー殿下が聖女に対して思い入れがあるのもさることながら、王太子にはすでに王太子妃がいらっしゃるから、それに対しての配慮もあったのかもしれない。

「なんともまあ、誇らしげな顔だな」
「余計なことは言うな。目をつけられたら厄介だぞ」
 小さな低い声で諭すと、ニールは肩をすくめた。

 だがまあ、ニールがそう言いたくなる気持ちも分かる。背後に控える聖女の護衛騎士をちらりと見た後、聖女の隣に立ったクリストファー殿下の何とも嬉しそうな顔。あれはもうすでに、聖女に骨抜きにされているのだろう。

「彼女が聖女のナターシャだ。もう知っているものも多いだろうが、彼女は貴族ではなく平民だ。だが聖女の資質は素晴らしく、どんなに深い傷もたちどころに治す癒しの力がある。まさに彼女は、大昔にこの国に安寧をもたらした大聖女の生まれ変わりに違いない」

 どんなに深い傷もたちどころに治すというクリストファー殿下の言葉に、「おおっ」とどよめきが起こった。皆の表情も期待に満ちている。

「今宵は聖女のお披露目を兼ねた歓迎パーティーだ。楽しい時間を過ごしてほしい。――ナターシャからも一言頼む」
「えっ、は、はい。ナ、ナターシャです。王都に来るのは初めてで、お城に来たのも初めてで……何か粗相があるかもしれません。ですが皆様のお役に立てるよう一生懸命頑張りますので、どうかよろしくお願いいたします」

 つたない挨拶だがかえってそれが初々しく、海千山千の貴族らの心をも掴んだようだ。場内には温かく盛大な拍手が湧き起こった。

 今日の警護は近衛師団が取り仕切っていて、聖騎士団は補佐的な立場だ。なので女性を誘ってダンスをするのはもってのほかだが、談笑や立食くらいは許されている。

「シューマ、サムにも適当に飲み食いしてくつろぐよう言ってくれ。今日はハメさえ外さずに注意を払ってくれればそれでいい」
「分かりました」
 一礼をしてシューマは団員達のもとに歩いていく。私が話した内容を伝えたのだろう。みんながわっと盛り上がっているのが見えた。

「じゃあ俺たちも、美味い肉でも堪能しに行くか」
「そうだな」
「あ、あのっ!」
 一歩踏み出そうとした瞬間、可愛らしい声に呼び止められた。振り返ると三人の男を従えて、聖女がはにかんだ表情を浮かべて立っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

姉の忘れ形見を育てたいだけなのに、公爵閣下の執着が重いんですが!?~まっすぐ突き進み系令嬢の公爵家再建計画

及川えり
ファンタジー
突然届いた双子の姉からの手紙。 【これをあなたが読んでいるころにはわたしはもう死んでいることでしょう。わたしのことは探さないでね。双子を引き取ってもらえないかしら?】 姉の遺言通り双子を育てようと姉の嫁ぎ先へと突入する。 双子を顧みなかったという元夫のウィルバート公爵に何とか双子を引き取れるよう掛け合うが、話の流れからそのまま公爵家に滞在して双子を育てる羽目に。 だが、この公爵家、何かおかしい? 異常に気付いたハンナは公爵家に巣くう膿をとりのぞくべく、奮闘しはじめる。 一方ハンナを最初は適当にあしらっていたウィルバートだったが、ハンナの魅力に気付き始め……。 ハンナ・キャロライン・バーディナ 22歳      バーディナ伯爵家令嬢         ✖️ ウィルバート・アドルファス・キングスフォード 26歳      キングスフォード公爵 ブックマーク登録、いいね❤️たくさんいただきありがとうございます。 感想もいただけたら嬉しいです。

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

公爵家の伝統だと思っていたら、冷徹公爵様の溺愛でした

星乃和花
恋愛
(毎日21:30更新ー全8話) 家族にも周囲にもあまり顧みられず、 「私のことなんて、誰もそんなに気にしない」 と思って生きてきたリリアナ。 ある事情から、冷徹と噂されるヴァレントワ公爵家で働くことになった彼女は、 当主エドガーの細やかな気づかいに驚かされる。 温かいお茶、手袋、外出時のエスコート。 好みの食事までさりげなく用意されて―― けれど自己評価の低いリリアナは、それらすべてを 「これが公爵家の伝統……!」 「さすが名門のお作法……!」 と盛大に勘違い。 一方の冷徹公爵様は、そんな彼女にだけ少しずつ甘さをこぼし始めて……? これは、 “この家の作法”だと思っていたら、 どうやら冷徹公爵様の溺愛だったらしい やさしくて甘い勘違いラブコメです。

僕、天使に転生したようです!

神代天音
BL
 トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。  天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL

最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~

Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。 うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。 でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。 上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。 ——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

処理中です...