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魔草、キリンス
家庭教師のレイモンド先生からは、キリンスは癒しの花としか教えてもらっていなかった。キリンス自体が希少植物のため薬草図鑑には載っておらず、植物図鑑という大きな辞典に名前と原産地だけが載っていたらしい。ぼくも図鑑や辞書で探してみたんだけど、やはりキリンスに関して書かれたものを見つけることができなかった。
レイモンド先生は薬草を専門に扱っているので、薬草のことで知らないことは多分ほとんど無い。だからキリンスは薬草では無いだろうとのことだった。そして癒しの花に近い要素がいくつか見つかったということで、癒しの花の1種だろうと結論づけたのだ。
要するに希少というだけあって、それを活用する機会があまりないと言ったのが現実なのかもしれない。
明日、カーギル先生に聞きに行ってみようかな? 先生なら王立学園の講師をしているのだから、いろんなことを知っているはずだ。
翌日、ぼくは登校するとハロルド兄様と別れたあとカーギル先生に会いに行こうと薬草研究科の職員室に向かった。
「おはようノエル。どこへ行くんだ?」
ルークとクリスだった。教室と反対方向に向かうぼくを見て不思議に思ったようだ。
「おはようございます。職員室です。先生に聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
「はい、キリンスのことで」
「キリンスの何を知りたいのか分からないけど、僕も一緒に行きたい」
ルークがぼくの元に駆けてくる。クリスもルークの後を追ってやってきた。
「じゃあ、一緒に行きましょう」
授業の時間までまだだいぶ間があるので、職員室はそれほどあわただしくはなかった。目当てのカーギル先生ものんびりとお茶を飲んでいる。
「おはようございます、カーギル先生。質問したいことがあるんですけど、いいですか?」
「いいよ、なんだ?」
持っていたカップをソーサーにおいてぼくを見た。
「先生は、キリンスって植物知ってますか?」
「……キリンス? ……珍しい名前を知っているな。希少植物の魔草だ」
「え? 癒しの植物でなくて、魔草なんですか?」
「癒しの植物の側面もあるが分類で言えば、魔草だ。ただ、あれは稀少すぎて私もまだ一度も目にしたことはないんだ。詳しいことを知りたければ宮廷魔導師のジョーンズ様が、今日二年の特進クラスの授業に来られるはずだから会いに行って聞いてみるといいよ」
「ありがとうございます!」
「ちょっと待て、ノエル」
「はい?」
「君は何でキリンスのことを知っているんだ?」
「ぼくの庭にあるからです」
「はあ? 君の庭にあるのか? なんで?」
「父の知り合いから頂きました。えっと、大分前に」
「それ、良ければ私に見せてくれないか?」
「構いませんけど」
「そうか、ありがとう。それでジョーンズ様に会いに行くとき、私もついて行く。いいか?」
「はい。別に構いませんけど」
ぼくの返事にカーギル先生は、よっしゃと拳を握った。
カーギル先生がこんなに喜ぶだなんて思ってもいなかった。キリンスって、本当に希少なんだなぁ。
「僕も同行させてね」とルークが言う。
「はい、いいですよ」
頷くぼくにカーギル先生が微笑んだ。
「君たちは仲がいいねえ」
「はい、いいですよ。そしてなぜか僕の部屋にもキリンスがあるので、ちょっと気になりました」
「何? 君の部屋にもあるのか」
「はい、なぜか」
「なぜかってなんだ?」
「知らないうちに部屋にあったって、感じですかね」
「はあ? どういうことだ」
「さあ? 僕に聞かれても……」
はたから聞くと珍妙な会話を繰り返すルークとカーギル先生を横にして、ぼくはひとり心臓をバクバクさせていた。
うっかりしてたんだ。巻き戻る前にルークにキリンスをあげたことをコロッと忘れていた。
どう説明していいかわからないしたぶん説明しない方がいいのではないかと思うので、結局ぼくは知らんふりを通すことにした。
レイモンド先生は薬草を専門に扱っているので、薬草のことで知らないことは多分ほとんど無い。だからキリンスは薬草では無いだろうとのことだった。そして癒しの花に近い要素がいくつか見つかったということで、癒しの花の1種だろうと結論づけたのだ。
要するに希少というだけあって、それを活用する機会があまりないと言ったのが現実なのかもしれない。
明日、カーギル先生に聞きに行ってみようかな? 先生なら王立学園の講師をしているのだから、いろんなことを知っているはずだ。
翌日、ぼくは登校するとハロルド兄様と別れたあとカーギル先生に会いに行こうと薬草研究科の職員室に向かった。
「おはようノエル。どこへ行くんだ?」
ルークとクリスだった。教室と反対方向に向かうぼくを見て不思議に思ったようだ。
「おはようございます。職員室です。先生に聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
「はい、キリンスのことで」
「キリンスの何を知りたいのか分からないけど、僕も一緒に行きたい」
ルークがぼくの元に駆けてくる。クリスもルークの後を追ってやってきた。
「じゃあ、一緒に行きましょう」
授業の時間までまだだいぶ間があるので、職員室はそれほどあわただしくはなかった。目当てのカーギル先生ものんびりとお茶を飲んでいる。
「おはようございます、カーギル先生。質問したいことがあるんですけど、いいですか?」
「いいよ、なんだ?」
持っていたカップをソーサーにおいてぼくを見た。
「先生は、キリンスって植物知ってますか?」
「……キリンス? ……珍しい名前を知っているな。希少植物の魔草だ」
「え? 癒しの植物でなくて、魔草なんですか?」
「癒しの植物の側面もあるが分類で言えば、魔草だ。ただ、あれは稀少すぎて私もまだ一度も目にしたことはないんだ。詳しいことを知りたければ宮廷魔導師のジョーンズ様が、今日二年の特進クラスの授業に来られるはずだから会いに行って聞いてみるといいよ」
「ありがとうございます!」
「ちょっと待て、ノエル」
「はい?」
「君は何でキリンスのことを知っているんだ?」
「ぼくの庭にあるからです」
「はあ? 君の庭にあるのか? なんで?」
「父の知り合いから頂きました。えっと、大分前に」
「それ、良ければ私に見せてくれないか?」
「構いませんけど」
「そうか、ありがとう。それでジョーンズ様に会いに行くとき、私もついて行く。いいか?」
「はい。別に構いませんけど」
ぼくの返事にカーギル先生は、よっしゃと拳を握った。
カーギル先生がこんなに喜ぶだなんて思ってもいなかった。キリンスって、本当に希少なんだなぁ。
「僕も同行させてね」とルークが言う。
「はい、いいですよ」
頷くぼくにカーギル先生が微笑んだ。
「君たちは仲がいいねえ」
「はい、いいですよ。そしてなぜか僕の部屋にもキリンスがあるので、ちょっと気になりました」
「何? 君の部屋にもあるのか」
「はい、なぜか」
「なぜかってなんだ?」
「知らないうちに部屋にあったって、感じですかね」
「はあ? どういうことだ」
「さあ? 僕に聞かれても……」
はたから聞くと珍妙な会話を繰り返すルークとカーギル先生を横にして、ぼくはひとり心臓をバクバクさせていた。
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