5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ

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ルークの手に渡った指輪

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 ジョーンズ様とのセッティングはカーギル先生が引受けてくれ、後から連絡してくれるとのことだった。なので、ぼくはそれに甘えることにした。

★★★★★★★★


 ノエルがジョーンズに会うのを楽しみにしていた頃、サラはひとり歯噛みをしていた。というのも、ルークと2人になる機会になかなか恵まれなかったからだ。
 教室を訪れてルークを呼ぼうにも、なぜか他の令嬢らに阻まれるし、そうじゃない時はクリスに邪魔される。せっかくローワンからもらった指輪を渡す機会がないのだ。

 こうなったらもう根性でどうにかするしかなかった。時間が許す限り、サラはルークの行動を追った。ひとりになるときはないか? クリスと一瞬でも離れている時間はないか?

 ストーカーのようにルークのことを追うことばかり考えていたサラの前に、好機がやってきた。

 ルークがクリスと2人で廊下を歩いているとき、クリスが教師に呼ばれたのだ。どうやら雑用を申し付けられたようだ。
 クリスは一瞬あたりを見回した後、ルークに何事かを言って教師のもとに行った。クリスと別れたルークは足早に歩きはじめる。どうやら教室に戻るようだ。

「ルーク様、お待ちください!」
 大声で呼んだ。ルークは一瞬ピクッと反応するも、止まらずにそのまま歩いて行く。
 サラの声だとわかって無視したようだ。
 それほどまでに自分を避けようとするのか。サラは頭に血が上った。

「ルーク様、落とし物ですよ。大切なものじゃないんですか?」
 サラがそう叫ぶと、ルークは足を止めた。

「……落とし物?」
 ゆっくりと振り向いたルークの目に、サラが持っているピンクパープルの指輪が目に入った。
 
 淡い色合いはすごく綺麗で、ルークの心を鷲掴みにした。見れば見るほど引き寄せられる魔性の色は、もっと近くで見たいと思わせ自然とサラの元へ歩いて行く。

「綺麗ですよね。ルーク様のものですよ」
「僕の?」
「そうですよ。見覚えありますでしょ?」 

 ルークは言われてみると、自分のものかもしれないと思えてきた。ふらふらとサラに近づいて指輪を手に取った。
「はめてみたらどうですか? きっとなじむと思いますよ」
「そうだね」

 言われるがままに指輪をはめたとたん、ルークは世界が一瞬に明るくなったような気がした。目の前の女性が、すごく柔らかく微笑んでいる。
 胸の中が、暖かく甘い気持ちで満たされていく。

 ルークは戸惑っていた。たしか先ほどまで、この女性を避けた方がいいと思っていたはずだ。こんなに可愛い女性をどうして避けなければいけないと思っていたんだろうと、ルークは目を瞬いた。
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