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俺に触れて?
燻る過失
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陸に追い立てられるようにどつかれて、竹下は渋々先に歩いて行った。厄介者を追い払ったというように満足している陸に、じわじわと妙な嬉しさが沸き起こってきて、竹下に対して何だか申し訳ない気持ちになってくる。
「ああ、そうだ。シロに言い忘れてたけど、同好会のプチ旅行、あれ本格的に決まりそうだぞ」
「おい――」
楽しそうに話す礼人に対して、なぜか陸は眉間にしわを寄せる。
「どうしたの? 陸」
皆で出かけるのを嫌がるくらい出不精ではないはずなのに、気乗りしない陸の表情に疑問を感じる。
「何も一泊とかする必要ないだろ。日帰りじゃダメなのかよ」
「え? 一泊するの?」
一泊するほどの部費なんて無いから、俺らのバイト代を足してもそれじゃあ焼け石に水じゃないか。
「千佳はなんて言ってるの?」
「ん? あいつ? 燥いで乗ってたぞ。足りない分は自腹で賄おうって、張り切ってた。千佳の事だから、バイトしてそれが旅費の一部になるって事だけで、満足してるんじゃねーの?」
…あー、なるほど。千佳ならそれもあり得そうだ。
「俺は反対。日帰りで十分だろ。それに紫藤、お前他人がいると寝れないだろうが」
「ああ、そうだよ! どうするんだ、礼人」
「俺? 俺はもちろんシングルで。千佳と剛先輩はダブルだってはしゃいでたから、お前らもそうすれば?」
「えっ」
…ダ、ダブル?
そ、そりゃ…。俺ら恋人同士だし、…陸に抱きしめられて眠るのも、いいかも…だよな。
「なに言ってんだよ。金ねーんだろ。泊まるとしても皆で雑魚寝に決まってんだろうが」
「…あ、うん。そう、だよね」
「あ~? シロ、ここは怒るところだぞ。お前ら両想いほやほやなんだろうが、なに金がねーとか色気も素っ気もない事言ってんだよ」
「るせっ。俺らには俺らのペースってのがあるんだよ。なあ、水?」
「えっ?」
突然陸に同意を求められて焦ってしまった。
だって、俺は…。俺はもっと…。
…だけど、そんな事言える勇気があるわけではないので、俺は微妙な気持ちのまま陸に同意するような返事を返す。
「うん…。そうだよ礼人」
俺の複雑な気持ちに気が付いたのか、礼人が首を傾げて俺の顔を覗き込んだ。目が合って微妙に逸らす俺に、おそらく察することがあったのだろうけれど、礼人はそれを知らんふりして肩を竦める。
付き合いがそれなりに長い礼人は、こういう時、俺への対処法をちゃんと分かってくれていると思う。
「まあ、そんなに考え込むな」
礼人が優しく俺の頭をポンポンと撫でた。温かい手触りにジンワリとする。
だけどそれを目ざとく見咎めて、陸が低く「おい」と唸った。
「あー、もう! お前は本当にうっとうしい奴だな!」
礼人がそう言いながら俺から手を離して、今度は陸の髪をわしゃわしゃとかき混ぜる。だけど陸も、それにムキになってやり返すものだから、また騒がしくなった。
やかましい二人を目の前に、やはり気持ちが少し沈んでいくのは止めようが無かった。
俺は陸に触れたいと思うし、もっと近づきたいと思うのに…。陸は違うんだろうか?
『ちゃんと大事にやり直したいから――』
あの言葉にきっと嘘はない。
…大事にって、そういう事なんだろうか。俺はあんな風に無理やりなんかじゃなければ、俺をちゃんと見て、感じてくれればそれだけで構わないのに。
陸の中での自分のありようが想像できて、俺は密かにため息を吐いていた。
「ああ、そうだ。シロに言い忘れてたけど、同好会のプチ旅行、あれ本格的に決まりそうだぞ」
「おい――」
楽しそうに話す礼人に対して、なぜか陸は眉間にしわを寄せる。
「どうしたの? 陸」
皆で出かけるのを嫌がるくらい出不精ではないはずなのに、気乗りしない陸の表情に疑問を感じる。
「何も一泊とかする必要ないだろ。日帰りじゃダメなのかよ」
「え? 一泊するの?」
一泊するほどの部費なんて無いから、俺らのバイト代を足してもそれじゃあ焼け石に水じゃないか。
「千佳はなんて言ってるの?」
「ん? あいつ? 燥いで乗ってたぞ。足りない分は自腹で賄おうって、張り切ってた。千佳の事だから、バイトしてそれが旅費の一部になるって事だけで、満足してるんじゃねーの?」
…あー、なるほど。千佳ならそれもあり得そうだ。
「俺は反対。日帰りで十分だろ。それに紫藤、お前他人がいると寝れないだろうが」
「ああ、そうだよ! どうするんだ、礼人」
「俺? 俺はもちろんシングルで。千佳と剛先輩はダブルだってはしゃいでたから、お前らもそうすれば?」
「えっ」
…ダ、ダブル?
そ、そりゃ…。俺ら恋人同士だし、…陸に抱きしめられて眠るのも、いいかも…だよな。
「なに言ってんだよ。金ねーんだろ。泊まるとしても皆で雑魚寝に決まってんだろうが」
「…あ、うん。そう、だよね」
「あ~? シロ、ここは怒るところだぞ。お前ら両想いほやほやなんだろうが、なに金がねーとか色気も素っ気もない事言ってんだよ」
「るせっ。俺らには俺らのペースってのがあるんだよ。なあ、水?」
「えっ?」
突然陸に同意を求められて焦ってしまった。
だって、俺は…。俺はもっと…。
…だけど、そんな事言える勇気があるわけではないので、俺は微妙な気持ちのまま陸に同意するような返事を返す。
「うん…。そうだよ礼人」
俺の複雑な気持ちに気が付いたのか、礼人が首を傾げて俺の顔を覗き込んだ。目が合って微妙に逸らす俺に、おそらく察することがあったのだろうけれど、礼人はそれを知らんふりして肩を竦める。
付き合いがそれなりに長い礼人は、こういう時、俺への対処法をちゃんと分かってくれていると思う。
「まあ、そんなに考え込むな」
礼人が優しく俺の頭をポンポンと撫でた。温かい手触りにジンワリとする。
だけどそれを目ざとく見咎めて、陸が低く「おい」と唸った。
「あー、もう! お前は本当にうっとうしい奴だな!」
礼人がそう言いながら俺から手を離して、今度は陸の髪をわしゃわしゃとかき混ぜる。だけど陸も、それにムキになってやり返すものだから、また騒がしくなった。
やかましい二人を目の前に、やはり気持ちが少し沈んでいくのは止めようが無かった。
俺は陸に触れたいと思うし、もっと近づきたいと思うのに…。陸は違うんだろうか?
『ちゃんと大事にやり直したいから――』
あの言葉にきっと嘘はない。
…大事にって、そういう事なんだろうか。俺はあんな風に無理やりなんかじゃなければ、俺をちゃんと見て、感じてくれればそれだけで構わないのに。
陸の中での自分のありようが想像できて、俺は密かにため息を吐いていた。
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