近くにいるのに君が遠い

くるむ

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俺に触れて?

少しは素直に

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昼休み。
陸と2人で弁当を食べていると、礼人がたくさんの女の子に纏わりつかれながら、俺らのクラスにやって来た。

「悪いけど、シロ達と飯食うから」
「えぇ~? って、黒田君だ!」
「あ、ホントだ。ねえ、ねえ、礼人~」
「だーめ。お前らだって、クロの性格知ってんだろ?」

しっしっと言うように、礼人が彼女らを手で追い払い、教室に入って来た。
…相変わらずモテるよな。礼人も陸も。

陸がモテることくらいは分かっているんだけど、やっぱりそれを目にするたびにちょっと落ち込む。
彼女たちは俺と違って可愛いし、何より俺が横に並ぶよりもずっと絵になる。

「邪魔するぞ」

俺らの前の席の椅子をくるっと逆にして、向かい合い弁当箱をトンと机に置く。そしてその脇に、スマホを置いた。

「ホント、邪魔だな」

陸のあからさまな嫌そうな顔に、礼人が笑う。

「あー、クロなら絶対そう言うと思った。ホント、期待外さないやつだよな、お前」

陸の、あまりにもらしい冗談をサラッと流して、礼人が弁当の包みを解く。
中には、相変わらず彩りよくバランスの取れたおかずが並べられていた。きっと礼人の新しいお母さんも、礼人の本当の意味でのお母さんになりたいと頑張っているんだろう。
外見にそぐわず人見知りで神経質な彼には、それは容易な事ではないのだろうけれど。

「それはそうとさ」

モグモグと美味しそうにご飯を頬張りながら、礼人が俺を見る。

「なに?」
「シロ、今日は大丈夫か? まだ美術部のバイト、残ってるだろ」
「辞めさせろ、あんなもん」

陸が不愉快そうに眉をしかめて口を挟んできた。

「大丈夫だよ、陸。あと2日だろ? 千佳も一緒だし」
「…倒れたじゃねーか、お前。無理してたんだろ」
「…それは…」

倒れた原因はそんな事じゃなくて、陸とギクシャクしていたせいなんだけど…。
チラッと陸を窺い見るも、どうやら本当にそのことには思い当たっていないようで、モデルの事をマジで心配しているようだ。

「大丈夫。…それより陸、今日も付き合って…くれるよな?」
「……」

陸に本心を言う勇気がない俺は、とにかく陸に安心してもらおうと出来るだけ明るく話しかけたのに、陸は渋面を変えようとはせず、面白くなさそうに俺から視線を外した。

「あ~、もう、なんだよお前ら、まどろっこしいなぁ。シロはもうちょっと可愛くおねだりしろよ。少しは千佳を見習え」

パカン!

「って!」

陸が食べ終わり、空になった弁当箱で礼人の頭を叩いていた。

「何で水が工藤なんかを見習わなきゃなんねーんだよ。あんな水、嫌だぞ俺は」

真顔で言う陸に礼人がキョトンとする。そしてすぐに爆笑した。

「なんだお前、やっぱべたぼれじゃねーの! シロ、お前もう少し自信持て」
言いながら、礼人はヒーヒーと腹を抱えて笑っていた。

…なんて奴だよ、もう…。
だけど――


「本当に大丈夫だよ俺。だけど陸がいてくれると誰といるより心強いんだ。だから俺、陸に来てもらいたい。ダメかな…?」

心の中では誰よりも、俺は陸に甘えたいって思っているんだ。
言えない本心は別としても、言葉に出せることくらいは陸に伝えたいってそう思う。

すがる思いで見つめる俺に、陸も一瞬驚いた顔をしていたけれど、肩の力を抜くように、ふうっと息を漏らした。

「分かった。水がモデルを続けるっていうんなら、俺も一緒にいる方が安心だし。付き合うよ」
「ありがとう」


自然に陸に甘えることが出来たのだから、礼人には感謝しなきゃと思った。 
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