冤罪をかけられた聖女見習いは同情して助けてくれたイケメン騎士と楽しく暮らす

くるむ

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聖女見習いたち アルバート視点

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 以前は聖女が選定されたら、他国に去ってしまわないようにと王家との婚姻が決まっていた。だが数百年前、運悪く聖女が決まる前に王子には婚約者が決まっていた。そのため苦肉の策として、腕が立ちなおかつ美形の騎士を生涯の護衛としてつけることにしたのだ。
 それ以降聖女には王子との結婚ではなく、専任の護衛騎士をつけることになった。

「専属の護衛騎士ということだから別に結婚しなければいけないというわけではないけど、先の聖女達の中でも護衛騎士と結婚してる人は何人かいたよな」

「そうだな。四六時中一緒にいるわけだから、そういうこともあるだろう」
「なんだ、アルバート? 素っ気ないな。聖女の護衛騎士に選ばれたんだからもっと喜ぶのかと思っていた」

「喜ぶも喜ばないもないさ。仕事だから」
「ほんとアルバートはクールだよなあ。俺だったらもっと喜ぶぞ。腕が立つ中で一番容姿が良いって認められたってことだしな。それに国を守る聖女様の護衛がを任されるんだ。誇らしいじゃないか」

「そうだな。国に尽くしてくれる大切な人を守るという点では、意義ある仕事だと思うよ」

 顔がいいことが一つの条件だというのは、どうかと思うけど。

「お前のその堅苦しいところ、俺は好きだよ」
「そう言ってくれるのはベンくらいだよ」

 子爵家の三男として生まれた俺は、もの心ついた時から先のことを考えて騎士になることを決めた。腕っ節には自信があったので素質があると思ったからだ。
 ただそんな頃からも、顔がきれいで女みたいだと言ってからかってくるやつや令嬢達からはやたらとまとわりつかれて嫌な思いをしたこともある。この顔でいい思いをしただなんて、俺は一度も思ったことなんてない。
 この容姿は、はっきり言って嫌いだった。

「腹減ったな。今日の鍛錬も済んだし帰るか」
「そうだな。でもその前に、聖女見習いの様子を見に行ってくる」
「気になるのか」
「一応な」

 ベンと別れてから、聖女見習いたちが修行している教会の施設に寄った。
 だけど彼女らに自分が見に来ていると知られたくなかったので、こっそりと窓から覗いてみた。

 みんな思い思いに修行しているようだ。浄化の訓練をしているものやヒールを試している者もいる。おそらく聖女見習いそれぞれに得意不得意があるのだろう。

「ちょっとココ! 何戻ってきてるのよ! 洗濯は済んだの?」
 突然怒号が飛び、ココと呼ばれた少女が入り口のところでビクッと立ち止まった。

「は、はい。すみました。ですから、私も――」
「だったら今度はここを掃除しなさい」
「えっ? ですが」
「何、文句あるの? だいたい平民のくせに私たちと同じ土俵に立とうと思ってるところが間違ってるのよ」

「す、すみません」

 身を縮める少女に向かって雑巾が投げつけられた。
 
 ひどい。これが聖女見習いのすることか。
 それにしても、いくら平民が気に入らないからといってどうしてこんな真似をするんだ? 相手にするのが嫌なら知らないふりして相手にしなければそれでいいだけの話なのに。

 こんな光景を見てしまった俺はこのココという少女のことが気になって、ちょくちょく彼女らの様子を見に来ることになった。そして貴族令嬢たちがなぜ平民の少女にあのような仕打ちをすることになったのかわかったような気がした。

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