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051-055【第三幕】命がけの脱獄・性転!?

051 俺の脱獄は甘くない

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「判決を下す! フィーカリアンス・レイチェル・メナード・エヴァノンの告訴こくそにより、転生者は100年間の幽閉にしょす!!」

 寄ってたかって俺をタコ殴りし、意識を朦朧もうろうとさせてから決まったようだ。ガチャンと唯一のドアが閉められて、明かりも消されて。それから俺は、かなりの空腹を覚えた頃に目を覚ます。

 何か食べたいが食事を運んでくれる気配もない。ちくしょう……アイツらめ。俺のことをさっそく亡き者にしたってわけだな……。

 脱獄しようにも光源なし。ドアノブもなし。俺に残された道はひとつだってこと。相変わらず気は進まないが、足の指の間に挟んでおいた一粒の白いタブレットを取り出すしかない。

「猛毒よ。このタブレットひとつで確実に死ぬ」フィーカはすぐに人を死なせる。以降は俺がこうなる前に話した彼女との内容だ。

「復活剤と併用して大丈夫なのか? 変な副作用起きたりしない?」

「安心して。もう実証済みだから」

 俺が容認しないと「私を信じて」とさっぱりした笑顔で言うのだ。これまで何度か活躍してもらったわけだから、今さら信じないのは難しかった。

 ……そして暗闇に戻る。

 盲目の空間で俺は即死タブレットを見つめる。もはや指の触覚での形しか分からない。どうかこれがマーブルチョコレートにでもすり変わっていてくれ。

 そう願って、俺は口に入れた。

 まもなく俺は心臓発作で死んだ。

 暗闇にいるはずなのに視界が真っ白に飛ぶのは、復活剤エンジェルキッスの効果なんだろう。っていうか何がエンジェルキッスだ!? 昔流行ったブランド名みたいなのやめろ!?

 他にも文句を並べていたら視界が黒に戻る。ハッと気付けば俺は水の中。そんなパターンを知らないから、俺は余裕で溺れていた。

「大丈夫よ。ニャンニャがあなたを迎えに行くわ」

「ニャンニャ?」

「ほら! 一緒に捕まえてくれた、太っちょスモモネコ!」

 溺死はマジもんのピンチだ。しかしこんな時にもフィーカの声を思い出した。

 俺から漏れる気泡が昇っていく。対して俺の体は沈んでいく。水面は驚くほどずっと上だ。頑張って這い上がろうとも思えないくらいにな。

 美しい水面の太陽を見ていたら、何かがドボンと飛び込んだ。泡ぶくが一気に起こっただけで“何か”自体は透明だ。

 太っちょスモモネコか。たぶんそうだな。思った時にはやっぱり俺は何かに咥えられて水面へ上げられた。

「はあ……はあ……まじで死ぬと思った……」

 俺は無事に生き延びた。幽閉場所からどこかの池の中へ移動したらしい。脱獄も成功だ。

 息を整えながら見上げる空には紅葉が美しい。赤や黄色にオレンジの暖色を眺めると、生きていて良かったと思える。

 だが、濡れた体に吹いてくる風は、この季節ならちょっとキツい。
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