ドラゴンアース anotherstory ‐死の魔女‐

とと

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悪夢の一日

4.

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闇龍の遺骨も含めれば、すべての十龍が、この戦場と化した野原に集結したこととなる。

各地に生息する龍を集めたのは、緑龍フォレストボイスのようだ。

パラガスにしてみれば、目の前の十龍達との対峙は、それはそれで恐怖だったが、違う事に恐怖していた。

アストの死体と、シャムの死体が消えている。それが恐怖だった。

「何処に消えた?」

パラガスは野原を歩き初めていた。

一つ一つ横たわる死体を見て回った。

人間の、ましてや首を失った死体など、そうそうにあるものでなかった。

途中、パラガスの知る男爵セレケの死体や、パラガスに好意をよせていた女性の死体を目にし、パラガスの頬に自然と涙が零れた。

やはり、アストとシャムの死体は見つからない。

パラガスは歩みを止め、場違いながらも、アストとの過去の出来事を思いだした。

親友の突然の死は辛かった。

だから思い出にふけて、この場で死のうと思い、腰を降ろした。

孤児だったアストとパラガスは、すぐに友達となり、親友となった。

アストが、自分を呼ぶ時、パラガス様と呼ぶのが嫌だった。

敬語を使われるのも嫌だった。

同時に、一人の女性を好きになった時も毎日が楽しく、アストにミレアをとられた時、アストでよかったと心からそう思った。

パラガスは走馬灯のように過去の思いにひたる。

バゼル王子にもらった黒毛の馬をアストは、弟のように可愛がっていた。

「シャムも身内がいなかったからな…」

思わずパラガスは口にした。

「バゼル王子だけは、シャムの父親を知って………!?」

パラガスは急に立ちあがった。

「ま、まさか……?」

パラガスは自分の考えに驚き口をだした。

何故、シャムはミレアに懐かなかったのだろう……?

「ミレアを死んでも殺す……」

パラガスはアストの死に際の言葉を口にした。

「シャムの父親は……」

パラガスは思い出した。

以前、密猟者がアールド王国周辺でユニコーンを殺害した事件を……。

「ユニコーン?」

そして、パラガスは再び辺りを見回した。

「アスト、シャム…」

パラガスは、キーカンバーの遺骨の辺りに目を止めた。

そこには、顔が半分ただれ、血を流した黒馬と、それに跨がる、右手に剣、左の腕にはダガーを埋めた義手を持つ、首無し騎士がいた。

「デュラハン…、ナイトメア……」

パラガスが口にしたのは怨念により甦った最強不死怪物の、首無し騎士デュラハンと、悪夢をもたらす黒馬ナイトメアだった。




ミレアが突如、姿をくらました。

他の十龍達がうろたえながら、辺りを見回す。

「透明魔法か?」

「そんなチャチなものではない」

龍達が騒ぐ。

その時……。

氷龍ヴァイアが腹部の激しい出血とともに、地に堕ちた。

氷龍の浮遊してた先に、ミレアが浮遊している。

「貴様ーっ!」

数体の龍がミレアを襲う。

ミレアの廻りには無数の亡霊がいる。

「ソウルバスター!」

炎龍デスマシンが、海龍バラクーヌが、嵐龍シックルランが霊魂弾禁断魔法をくらい、地に堕ちる。

「月龍よ、金龍を守れっ!金龍しか治せな……」

緑龍の声は最後まで続かなく、同じように霊魂弾をくらい地へと堕ちた。

一瞬にして五頭の龍が、ミレアに倒され、地でもがいていた。

「霊魂弾はけちってはいけない…、キーカンバーを殺した時のように、最低でも十の霊魂を使わなければ……」

ミレアは今の攻撃で死なない龍達を見て、反省した。

「貴方達の誰もが私を殺す事はできない!」

ミレアが怒りに吠え、再び姿を消した。

「命龍の正体は、気体龍だ…、奴は宿主の身体を目に見えないくらいの分子まで破壊し、姿をくらます」

月龍が地龍と金龍に答えた。

「再度、分子を合成すればいいだけ…」

「実態のない寄生虫みたいなものか…」

地龍の問いに月龍はうなずいた。

「私を侮辱するな」

ミレアは突如、地龍の前に現れ、そして霊魂弾を放った。

地龍は土のように体型を変え、崩れ堕ちた。

「土に変え、攻撃をかわしたか…」

ミレアが大地を目にし、睨みつける。

「まずは地龍を殺し、ついでに死にぞこないの龍達にとどめを刺し、次に月龍、最後に癒し能力をもつ金龍を殺し、終わりだ」

ミレアは月龍に宣言し、大地へと降り立った。





「やはり幻覚か……」
パラガスはキーカンバーの遺骨へと近き、確認した。

ナイトメアに跨がるデュラハンは幻覚だった。

パラガスの見間違いだったようだ。

「恨みで復活する最強の不死怪物など、そうそう誕生するものでもない」

そう口にした瞬間、パラガスの横から風を斬る音がした。

パラガスは、風の走った矢先を慌てて目で追った。

追った矢先にいるのは、ミレアだった。



ミレアは地に降り立ち、土と化した龍の地面を見入る。

ミレアの胸辺りに十の霊魂が集まりだす。

いつでも霊魂弾が撃てる状態だった。

ミレアは盛り上がる地を目にした。

「見つけたぞ、地龍…」

その時……。

ミレアの背中から大量の血が噴きでた。

ミレアは一瞬、何が起きたか理解出来なかった。

そして次に、傷ついて出血しているのは私か?、と錯覚した。

ロッツロットに首筋を切断された時にも、血の一滴も流さなかった身体から血が噴きでたのか、とも感じた。

そして次に誰が傷つけたのだろうとミレアは考え、辺りを見渡した。

「な、何故ここに……」

見渡した矢先にミレアは驚愕した。

驚愕したのはミレアだけでなく、ロッツロットも十龍達も、そしてパラガスもだった。

「デュラハンがいるのだ!?」

ミレアは叫んだ。

そこには顔の半分を失った馬に跨がる、首無しの騎士がいた。

その不死の怪物は、死神デスに匹敵する最強の不死怪物だ。

「アスト、シャム…」

パラガスは遠くの場所から、そう呼んだ。

そう、それは間違いなく、先程ミレアによって無惨に殺された、アストとシャムだった。





悪夢の一日は終わろうと……否、始まろうとしていた……。
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