上 下
41 / 43
永遠に……

2.

しおりを挟む
死んでも殺す……。

アストの死に際の言葉だった。

死んでも殺すと断言した怨念が、約束通り、ミレアの前に立ちあがった。

(「今更、デュラハンとは…」

ミレアが立ちふざがる首無し騎士を目にし、ため息混じりに言った。

ミレアは欝陶しいそぶりで、霊魂弾をデュラハンへと放った。)




「ミレアは少なからず、同様してるようだな…」

パラガスの元に双頭の蜥蜴王が近付きながら、答えた。

「やはり、シャムは…」

パラガスがつぶやいた。




〔霊魂弾は首無し騎士に炸裂し、アストの身体が跡形もなく消滅した。

「呆気ない……、一時は焦ったが……」

ミレアは倒れた十龍に目をやった。〕


ミレアの霊魂弾により、傷ついた十龍達は金龍の癒しの息吹ヒーリングブレスにより復活を果たしていた。

「いつまで、あの状態なんだ」

地龍ガーが、ミレアの姿を凝視した。



〔ミレアは十龍達を次々と殺害し、地に隠れた地龍を殺害し、続いて月龍を特大の霊魂弾で殺害し、最後の金龍を呆気なく殺害した。

これでミレアの野望であった十龍を倒した。

「後は龍地球を消滅させれば、私は死ねる…」(……ねない)

「……耳鳴りか?」

ミレアは軽く、耳を触った。〕




パラガスはミレアのいる場所へとゆっくりと近付き始めた。

「大丈夫なのか?」

「ミレアがいるんだぞ」

双頭の蜥蜴王が、パラガスを制止する。

パラガスは振り向き、ロッツロットにこう話した。

「もう、



〔ミレアは、次にパラガスとロッツロットへと標準を定めた。

「死の国ボーライで、アストによろしく」
(アストを侮辱するな)

ミレアの耳奥から、声がした。

「なんだ?誰かいるのか?」

ミレアが辺りを見回すと、いきなり眼前に黒馬に跨がった首無し騎士を発見した。

「…なっ……、消滅したはずだ」

ミレアは驚愕した。

すると、騎士の剣がミレアの胸を貫いた。

「無駄だ、私は死なない、死ねないのだ」

しかし、再び、ミレアの胸から血が大量に噴きでてきた。

そして騎士の両腕が、がむしゃらに何度も振り落とされる。

ミレアの身体がみるみるうちに、バラバラとなり、細切れとなる。

「な、何故…、私の身体が…」
(貴様の身体ではない)

ミレアの肉片から、白い気体が浮き出る。

気体は龍の形をしており、これがミレアの本来の姿だった。

「私を殺せるのか」
(殺せはしない…)

「先程から誰が話している?」

気体龍が叫ぶ。

(だが、永遠に死んでもらう)

「何者だ…」

ミレアの気体が、霊魂弾を首無し騎士へと再び、放つ。

また馬に跨がった首無し騎士は消滅する。

(無駄だ、ミレア)

再び謎の声がする。

「これは夢か…?」

ミレアはある疑問を口にした。

「そうだ、夢だ、貴様が今、体験しているのは夢だ」

口にしたのは突如、ミレアの前に現れた顔が半分ただれた黒馬だった。

「……シャム?」

気体龍が恐る恐る口にした。

「そうだ、私は悪夢をもたらす黒馬となり、魔獣と変貌し、アストをデュラハンとした」

黒馬はそう話すと、前脚を掲げた。

「ここは悪夢の世界、この世界では貴様の力は無となり、私が絶対となる!」

黒馬は気体龍を踏み付けようとした。

「私は最強の命龍だ!私に死はない、私は不死身……」

命龍は叫びながら黒馬の下敷きになり、消滅した。〕






「はっ!」

ミレアは突如、我に帰った。

ミレアは今、空中にいる。

下を覗けば、死肉の集合体巨像フレッシュゴーレムに襲われる馬がいた。

その馬にパラガスとアストが乗っていた。

そして黒毛の馬が近付いている。

「何故、私はここにいる?」

そう思うと同時に、ミレアは無意識に魔法を唱えだした。

「何故、私は魔法を唱えている?」

ミレアの意思とは反対に、炎球魔法が黒毛の馬を貫き、黒馬はアストと共に、地面へと激突した。

「この光景は、夢か?」

ミレアが焦る。

「私はともかく、アストを無惨に殺した貴様は許さない、貴様は永遠に悪夢の世界で死に続けろ!!」

何処からともなく、黒馬の叫びがし、命龍は悪夢の世界の住人となった。





今後、命龍は何度となく黒馬と首無し騎士を目にするたび、さらに死を懇願するようになった。


死ねない自分を呪いながら、命龍は悪夢の中で何千何百と同じ事を口にした。









「死にたい、もう死なせて……」と……。




しおりを挟む

処理中です...