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第1章〔地球編〕
past7 にらめっこといじめ
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一人は両目の先に両人さし指、鼻の穴を大きく広げ、口に両薬指で左右に引っ張り、もう一人は目を大きく広げ口を大きく脹らまし、鼻の頭を指先で上げる。はい、にらめっこの出来上がり。
少年二人がくるりと地面を回りながら笑わないように遊んでいる。
私はアースフィール。那賀龍神の相棒のWEGSだ。今は頭部もボディーも一体化している状態だ。
那賀龍神と私がここに来て二週間。今は放課後で校舎の外で児童達が、それぞれ組みを作り遊んでいる。
先程からにらめっこをしている二人が……
「ぷはぁ~!ハハハっ!マシン、お前強いよ」
「当たり前だよ、おれはみんなを笑わせるプロになるんだ!でもね、キアトも強かったよ。おれ、あと七秒で笑ってたもん」
寝ぐせ爆発の未室希跡と目を開けているのか綴じているのか解らない程の細目の火野真芯の豪快に笑う会話に、何が面白いのか解らないが、とにかく二人の少年に熱い友情が芽生えたようだ。
そしてそこに須藤勇矢と香川まゆ。まゆがいるということは当然、この人もいる。
世界一の理不尽大王の頭の弱い頭の弱い相棒、那賀龍神が……。頭の弱いは二度言うのがミソなのだ。
「マシン、プロになるってなんのプロだ?」
那賀龍神がマシンに尋ねる。マシンはズボンのポケットから赤色のピンポン球を出し、自分の鼻に着けた。
「ピエロだ~!おれはピエロになって宇宙一のコメディアンになるんだ~!」
マシンの大きな夢に那賀龍神が微笑ましい表情を見せた。
「スゲー格好いいぜ、マシン!俺はお前の夢を応援するぜ!」
「オレも」「じゃあ、まゆも」
那賀龍神が感動しているのが私にも伝わる。
本当にここに来て良かった。那賀龍神が生き生きしているのは久しく見ていない。
もし私に感情があるならきっと泣きながら喜んでいただろう。
「ユウヤとまゆもにらめっこやろうぜ!」
キアトがおとなしいユウヤと、恥ずかしがり屋のまゆを誘う。
ユウヤは照れながら、まゆは泣きそうになりながら拒否する。
「面白いのになぁ」
「キアト、無理強いするのは良くないぜ。無理強いは女の子に嫌われるぞ」
那賀龍神がキアトに笑顔で答え、まゆとユウヤの頭を撫でた。
「まゆはキアホが好き……」「キアホじゃねぇって」
はにかむまゆにキアトは照れながら文句を言う。
「モテモテじゃねぇか、キアト~!」
那賀龍神は笑いながらキアトを茶化す。
「んじゃ、俺がにらめっこしてやるぜ!マシン、覚悟しろよ!」
「望むところだ~!おれの必殺技を見せてやる!」
那賀龍神とマシンが互いに向き合う。那賀龍神の変顔が見れる。私の中に内蔵されたカメラで激写して日下部弥生に後で見せて笑い者にさせてやろう。
……が、その時。
「那賀先生、ここにいた!大変だよ!」
突然、読心能力をもつ神代ひろなが走って那賀龍神を呼んだ。
「どうした、ひろな?先生、今からマシンとにらめっこ「男子が喧嘩してます!」
那賀龍神の言葉をひろなが遮った。
「喧嘩……?ただの喧嘩ならほっとけ。男子たる者、喧嘩して友情を深めるんだ。まあ、いじめなら許さないけどな」「喧嘩じゃなくいじめです!」
ひろなの訂正に那賀龍神が真顔でひろなが走って来た方へと走りだした。
まだ幼い少女からみれば喧嘩もいじめも見方によって同じように見えるのかもしれない。
私も那賀龍神に続き移動すると、キアト達も那賀龍神に続くように走りだした。
那賀龍神と私が現場に着くと、一人の少年がうずくまり頭を両腕で防御していた。
その少年に三人の男子が蹴ったり、叩いたりしている。明らかにいじめだった。
「オラァ!やめんか!バカヤロー!」
那賀龍神が凄味を見せ、三人の男子の首根っこを掴み、少年から遠ざけた。
すでに他の児童達もおり、キアト達も続いてその場に来た。この芝生がある広場に三十人の児童と那賀龍神が揃い、嫌な空気が流れていた。
「お前ら!なんでこんなことをする!?俺は前に言ったよな?いじめをするなって!」
那賀龍神が真剣に怒っていた。
三人の男子は那賀龍神に何か反論しようとしたが、那賀龍神の迫力に声が出せなかった。
「なあ、テル、ノリヒコ、レツト!」
那賀龍神が三人の男子の名前を怒鳴りながら呼び、さらにうずくまって顔を隠す少年の背中に手を当てた。
「この服装は……、ヒロヤか?ヒロヤだな?もう大丈夫だ!顔を上げろ」
那賀龍神がそう言い、少年の肩に手を当てた。
ヒロヤ少年。大島洋也、間違いなくうずくまり、可哀想に泣き声が聞こえる。
だが、何故かその泣き声が普通ではない。泣き声がまるで獣のような……
「危ない、先生!」
誰かが無理やりヒロヤの顔を上げようとした那賀龍神を止める。
だが、その言葉は間に合わず次の瞬間、那賀龍神が苦痛に顔を歪めた。
苦痛に顔を歪めた原因は、ヒロヤ少年が那賀龍神の右腕に噛みついていたからだ。
ヒロヤ少年の顔は人間の顔ではなく、狼の子の顔だった。
大島洋也。この少年は半狼半人・ワーウルフと呼ばれる変身能力者だった。
那賀龍神の右腕から血が流れるが、ヒロヤ少年は離さずにいた。
奮えて泣きながら……
少年二人がくるりと地面を回りながら笑わないように遊んでいる。
私はアースフィール。那賀龍神の相棒のWEGSだ。今は頭部もボディーも一体化している状態だ。
那賀龍神と私がここに来て二週間。今は放課後で校舎の外で児童達が、それぞれ組みを作り遊んでいる。
先程からにらめっこをしている二人が……
「ぷはぁ~!ハハハっ!マシン、お前強いよ」
「当たり前だよ、おれはみんなを笑わせるプロになるんだ!でもね、キアトも強かったよ。おれ、あと七秒で笑ってたもん」
寝ぐせ爆発の未室希跡と目を開けているのか綴じているのか解らない程の細目の火野真芯の豪快に笑う会話に、何が面白いのか解らないが、とにかく二人の少年に熱い友情が芽生えたようだ。
そしてそこに須藤勇矢と香川まゆ。まゆがいるということは当然、この人もいる。
世界一の理不尽大王の頭の弱い頭の弱い相棒、那賀龍神が……。頭の弱いは二度言うのがミソなのだ。
「マシン、プロになるってなんのプロだ?」
那賀龍神がマシンに尋ねる。マシンはズボンのポケットから赤色のピンポン球を出し、自分の鼻に着けた。
「ピエロだ~!おれはピエロになって宇宙一のコメディアンになるんだ~!」
マシンの大きな夢に那賀龍神が微笑ましい表情を見せた。
「スゲー格好いいぜ、マシン!俺はお前の夢を応援するぜ!」
「オレも」「じゃあ、まゆも」
那賀龍神が感動しているのが私にも伝わる。
本当にここに来て良かった。那賀龍神が生き生きしているのは久しく見ていない。
もし私に感情があるならきっと泣きながら喜んでいただろう。
「ユウヤとまゆもにらめっこやろうぜ!」
キアトがおとなしいユウヤと、恥ずかしがり屋のまゆを誘う。
ユウヤは照れながら、まゆは泣きそうになりながら拒否する。
「面白いのになぁ」
「キアト、無理強いするのは良くないぜ。無理強いは女の子に嫌われるぞ」
那賀龍神がキアトに笑顔で答え、まゆとユウヤの頭を撫でた。
「まゆはキアホが好き……」「キアホじゃねぇって」
はにかむまゆにキアトは照れながら文句を言う。
「モテモテじゃねぇか、キアト~!」
那賀龍神は笑いながらキアトを茶化す。
「んじゃ、俺がにらめっこしてやるぜ!マシン、覚悟しろよ!」
「望むところだ~!おれの必殺技を見せてやる!」
那賀龍神とマシンが互いに向き合う。那賀龍神の変顔が見れる。私の中に内蔵されたカメラで激写して日下部弥生に後で見せて笑い者にさせてやろう。
……が、その時。
「那賀先生、ここにいた!大変だよ!」
突然、読心能力をもつ神代ひろなが走って那賀龍神を呼んだ。
「どうした、ひろな?先生、今からマシンとにらめっこ「男子が喧嘩してます!」
那賀龍神の言葉をひろなが遮った。
「喧嘩……?ただの喧嘩ならほっとけ。男子たる者、喧嘩して友情を深めるんだ。まあ、いじめなら許さないけどな」「喧嘩じゃなくいじめです!」
ひろなの訂正に那賀龍神が真顔でひろなが走って来た方へと走りだした。
まだ幼い少女からみれば喧嘩もいじめも見方によって同じように見えるのかもしれない。
私も那賀龍神に続き移動すると、キアト達も那賀龍神に続くように走りだした。
那賀龍神と私が現場に着くと、一人の少年がうずくまり頭を両腕で防御していた。
その少年に三人の男子が蹴ったり、叩いたりしている。明らかにいじめだった。
「オラァ!やめんか!バカヤロー!」
那賀龍神が凄味を見せ、三人の男子の首根っこを掴み、少年から遠ざけた。
すでに他の児童達もおり、キアト達も続いてその場に来た。この芝生がある広場に三十人の児童と那賀龍神が揃い、嫌な空気が流れていた。
「お前ら!なんでこんなことをする!?俺は前に言ったよな?いじめをするなって!」
那賀龍神が真剣に怒っていた。
三人の男子は那賀龍神に何か反論しようとしたが、那賀龍神の迫力に声が出せなかった。
「なあ、テル、ノリヒコ、レツト!」
那賀龍神が三人の男子の名前を怒鳴りながら呼び、さらにうずくまって顔を隠す少年の背中に手を当てた。
「この服装は……、ヒロヤか?ヒロヤだな?もう大丈夫だ!顔を上げろ」
那賀龍神がそう言い、少年の肩に手を当てた。
ヒロヤ少年。大島洋也、間違いなくうずくまり、可哀想に泣き声が聞こえる。
だが、何故かその泣き声が普通ではない。泣き声がまるで獣のような……
「危ない、先生!」
誰かが無理やりヒロヤの顔を上げようとした那賀龍神を止める。
だが、その言葉は間に合わず次の瞬間、那賀龍神が苦痛に顔を歪めた。
苦痛に顔を歪めた原因は、ヒロヤ少年が那賀龍神の右腕に噛みついていたからだ。
ヒロヤ少年の顔は人間の顔ではなく、狼の子の顔だった。
大島洋也。この少年は半狼半人・ワーウルフと呼ばれる変身能力者だった。
那賀龍神の右腕から血が流れるが、ヒロヤ少年は離さずにいた。
奮えて泣きながら……
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