ドラゴンアース【地球を股がける者】

序章

ある国の王の想い

龍地球ドラゴンアースには五つの大陸が存在する。

龍の頭部だった大陸は一億年前に徐々に浮き上がりを始め、今現在では地上七千メートルまで浮かんでいる。龍の頭部大陸の名は、浮遊大陸スヴァーリと呼ばれている。余談だが、スヴァーリの廻りの島々も何故か浮かんでおり、浮遊島としていくつか名所にもなっている。

次に海底へと沈んだ龍の尾だと語られた大陸、名を海底大陸アトラ・ドゥと呼ばれ、海抜七千メートルの海底大陸を支配しているのは海底亜人や人魚といった種族が文明を開化していた。

海上には三つの大陸が存在し、龍の右翼だと称された水と河川の大陸と呼ばれた、古いにしえの水大陸。

大陸の七割が砂漠や岩山、荒野といった大地、龍の背と伝えられた大陸、クーフェがある。

五つ目の大陸は龍の左翼大陸、アランミューア大陸だ。アランミューア大陸は様々な亜人種族の文明があり、人間は元より耳長亜人エルフや寸胴亜人ドワーフ、蜥蜴亜人リザードマン等の種族が生活していた。

その龍の左翼と吟うたわれたアランミューア大陸の南部に人間が文明開化した国がある。

緑の大草原が国の廻りを覆い、南にはシーフー山脈と呼ばれる山々があり、西にはサーカッシュの洞窟と呼ばれる、太古の昔から棲むと言われる闇龍と呼ばれる龍が存在する。

国の区々まちまちは、まるで母なる地球と同じような建物があちらこちらにある。ちなみに母なる地球と龍地球の西暦は全く同じであり、時は１９７７年。

建物も二つの地球はどことなく同じ造りであった。
違いと言えば、龍地球の自然の多さは母なる地球よりも広大である。そんな違いだけだった。

国の中は煉瓦の建物や、木造の家屋やコンクリートの建物等で埋めつくされ、土やアスファルトの道路もあり、自動車や馬車、路面電車も存在しており人々の生活の一部となっていた。

この国の名は、アールド王国。王国の中心部に、それこそ中世の童話に出てきそうな白く輝く巨大な城がある。

アールド城である。アールド王国を統一する国王が住まう城だ。

その城内にゲストルームがあり、五百人は収容できる踊り場に三十人の少年少女達と数人の大人がいた。

三十人の子供達は六、七歳と同じ年齢であり、その子供達の中心に齢五十過ぎの男性が立っていた。

アールド王国第三代国王、ルイ・アールドである。王冠に法衣を羽織っているが、体格は筋肉粒々でとても五十過ぎの老体には見えなく、国王の威厳というか、威圧感が凄まじい程に感じられていた。

少年少女達が国王ルイに注目する。否、少年少女を引率して来た二人の男女もルイに視線を向ける。

「弥生ちゃん、あの爺さん、半端ねぇオーラ出してんよ」

長身の成人男性が、セミロングヘヤーの大きな丸眼鏡をかけた女性に呟いた。

「爺さんじゃないでしょ、……賀くん……じゃなかった、先生」

弥生と呼ばれた女性は緊張した口調で答えた。緊張のせいか、男性の名前のところで生唾を飲んでしまうくらいだ。それほどに国王ルイには威圧感があった。

「アスト、パラガス、キャル、ミレア、それにエリアにピットよ、新しい学校にはなれたのか？」

ルイが微笑みながら少年少女達の中にいる五人の少年少女の名前を呼ぶと、五人の子供達は屈託のない笑顔を見せた。

「じいちゃん、オレ達、もうアスト達と友達だぜ！」

一人の少年がルイに向かって親指を立てながら答え、少年はアストの肩に腕を置いた。

「ほう、それは余も嬉しいな、主ぬしの名前は？」

「オレは未室希跡みむろキアトだ！希跡キアトって呼んでいいぜ！」

ルイ国王は微笑みながら、希跡とアストの頭を撫でた。

「では希跡、いや、お前達は、今現在、大人達に守られているが将来はどうする？この龍地球に龍地球の子と呼ばれる龍地球最大級の強さを持つ十三の龍や邪悪なる六……、言ってもパッとしないか、まあ、怖い魔物が沢山居るのだぞ。主達が大人になったらこの龍地球では、このままでは生きていけないぞ！さあ、どうする？」

「じいちゃん、ボクは強くなる！強くなってキャルも皆も守るよ！」

「じゃあオレも、オレも強くなって大好きな弥生先生とひろなも、まゆも、むつみもオレが守る！」

アストとキアトが叫ぶように答えると、他の少年達も声を大にして叫ぶ。

「おいおいキアト、俺は守ってくれないのか？」

長身の男性がキアトの頭に手を置き、嫌らしそうに言う。

「もちろん！でも那賀先生は、今はとても強いから、将来みんなで守ってあげるよ！」

「それは楽しみだぜ」

那賀先生と呼ばれた男は笑いながら少年少女達を見つめ、国王ルイに軽く会釈をした。

「では、このルイ・アールドが命ずる！主達は強くなれ！強くなってこの地球を護るのだ！」

国王ルイは高らかな声でに少年少女達に命じた。






龍地球を舞台にした壮大な冒険が始まった。