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Wrath (憤怒)
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ヘレン自身は、モートの出生の秘密は、これらの絵画にあると確信していた。
オーゼムはさも当たり前といった感じだった。まるで、モートの過去を全て知っているかのようにヘレンには思えた。
「詳しいお話をしましょう。まずは、その絵を持ってノブレス・オブリージュ美術館へと行きましょう」
オーゼムはその一枚の絵画を持ち出して玄関へと向かった。
Wrath 5
もうそろそろイーストタウンだった。西の方から曇り空を茜色に染める太陽が登って来ていた。モートは更に急いだ。数多の発砲音がしたからだ。
針葉樹で囲まれたロイヤルスター・ブレックファーストの本拠地であるパン屋が見えて来た。モートはパン屋の店内へと、あらゆるものを通り抜けて飛び込んだ。ショーウインドー越しからも見えていた。
ロイヤルスター・ブレックファーストの雇ったであろう大人の用心棒たちと、猿の軍勢との銃撃戦の真っ只中だったのだ。猿の軍勢は血潮を巻き上げ、剣を振り回し、白く凍った地面には用心棒と猿の血が広がっていた。
モートは階下の全ての猿の首を一瞬で狩った。
「頭部ではなくて! 胸を撃ってくれないか! フルプレートメイルは確かに頑丈だが! いずれは穴が空くから!」
モートはそう叫ぶと、パンやガラスが散乱する床に倒れている用心棒を通り抜け二階へと疾走した。
「モートが助けに来てくれたわ! みんなモートは味方よ!」
ミリーがモートが廊下の猿の一匹を狩ると同時に叫んだ。
一瞬、用心棒たちが戸惑い撃つのをを止めた。
シンクレアはパン粉の大袋でバリケードを張った廊下の片隅で蹲っていた。血塗れのモートを見て、青い顔をこの上なく青くし震え上がった。けれども、恐らくミリーとロイヤルスター・ブレックファーストの組織の子供たちが辛抱強くシンクレアとその家族を説得してくれていたのだろう。
シンクレアは寄り添う家族と共に気を失う一歩手前だった。
「モート! 奥の部屋の窓から猿が入って来るわ!」
シンクレアは気丈に叫んでいた。
ガシャンと割れる音と共に、猿数匹が幾つかの窓から襲いかかってきた。二階の用心棒が雄々しくトンプソンマシンガンを撃つが、モートの方が速かった。銀の大鎌で窓から現れた猿の首は再び窓の外へと吹っ飛んだ。
そして、モートは地を蹴って猿の胸部へと刈り込む。
そのままモートは猿の軍団の集った庭へと飛び込んだ。
用心棒やシンクレアたちが唖然としている中。
あっという間に猿の軍勢は全滅した。
「モート! ありがとう! すっごい強いのね!」
ミリーが涙でクシャクシャな顔をして、モートの血塗られた腕にしがみついた。モートは全身で血に染まっていない箇所が全くないかのような状態だったが、ニッコリ微笑んでやった。
まるで、バケツに入った血液を頭からかぶったかのような姿だった。
「もう、大丈夫だ……」
シンクレアはパン粉の入った大袋を苦労してどけると、モートの傍まで真っ青な顔で走って来た。
「モート? 今のはなんだったの? ねえ、私たちを助けてくれたのよね? 凄い速さでよくわからなかったけど……」
「いや……あ……もう、行かないと……」
涙声でお礼を言うミリーとその家族に、モートは人に感謝されても何も感じなかったので、モートは遠いノブレス・オブリージュ美術館の方へと向きを変えると、そのまま走り去った。今でも震えるシンクレアには、手を振っただけだった。
オーゼムはさも当たり前といった感じだった。まるで、モートの過去を全て知っているかのようにヘレンには思えた。
「詳しいお話をしましょう。まずは、その絵を持ってノブレス・オブリージュ美術館へと行きましょう」
オーゼムはその一枚の絵画を持ち出して玄関へと向かった。
Wrath 5
もうそろそろイーストタウンだった。西の方から曇り空を茜色に染める太陽が登って来ていた。モートは更に急いだ。数多の発砲音がしたからだ。
針葉樹で囲まれたロイヤルスター・ブレックファーストの本拠地であるパン屋が見えて来た。モートはパン屋の店内へと、あらゆるものを通り抜けて飛び込んだ。ショーウインドー越しからも見えていた。
ロイヤルスター・ブレックファーストの雇ったであろう大人の用心棒たちと、猿の軍勢との銃撃戦の真っ只中だったのだ。猿の軍勢は血潮を巻き上げ、剣を振り回し、白く凍った地面には用心棒と猿の血が広がっていた。
モートは階下の全ての猿の首を一瞬で狩った。
「頭部ではなくて! 胸を撃ってくれないか! フルプレートメイルは確かに頑丈だが! いずれは穴が空くから!」
モートはそう叫ぶと、パンやガラスが散乱する床に倒れている用心棒を通り抜け二階へと疾走した。
「モートが助けに来てくれたわ! みんなモートは味方よ!」
ミリーがモートが廊下の猿の一匹を狩ると同時に叫んだ。
一瞬、用心棒たちが戸惑い撃つのをを止めた。
シンクレアはパン粉の大袋でバリケードを張った廊下の片隅で蹲っていた。血塗れのモートを見て、青い顔をこの上なく青くし震え上がった。けれども、恐らくミリーとロイヤルスター・ブレックファーストの組織の子供たちが辛抱強くシンクレアとその家族を説得してくれていたのだろう。
シンクレアは寄り添う家族と共に気を失う一歩手前だった。
「モート! 奥の部屋の窓から猿が入って来るわ!」
シンクレアは気丈に叫んでいた。
ガシャンと割れる音と共に、猿数匹が幾つかの窓から襲いかかってきた。二階の用心棒が雄々しくトンプソンマシンガンを撃つが、モートの方が速かった。銀の大鎌で窓から現れた猿の首は再び窓の外へと吹っ飛んだ。
そして、モートは地を蹴って猿の胸部へと刈り込む。
そのままモートは猿の軍団の集った庭へと飛び込んだ。
用心棒やシンクレアたちが唖然としている中。
あっという間に猿の軍勢は全滅した。
「モート! ありがとう! すっごい強いのね!」
ミリーが涙でクシャクシャな顔をして、モートの血塗られた腕にしがみついた。モートは全身で血に染まっていない箇所が全くないかのような状態だったが、ニッコリ微笑んでやった。
まるで、バケツに入った血液を頭からかぶったかのような姿だった。
「もう、大丈夫だ……」
シンクレアはパン粉の入った大袋を苦労してどけると、モートの傍まで真っ青な顔で走って来た。
「モート? 今のはなんだったの? ねえ、私たちを助けてくれたのよね? 凄い速さでよくわからなかったけど……」
「いや……あ……もう、行かないと……」
涙声でお礼を言うミリーとその家族に、モートは人に感謝されても何も感じなかったので、モートは遠いノブレス・オブリージュ美術館の方へと向きを変えると、そのまま走り去った。今でも震えるシンクレアには、手を振っただけだった。
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