白いスープと死者の街

主道 学

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白いスープ

30話

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 夜。

 一人部屋の病室で、様々な検査をしたぼくはベットの脇に小さい手紙があるのに気が付いた。
 真夏の夜は汗が滲む。
 院内は空調が弱く少し暑かった。

「なんだろう?」
 開いてみると、大原先生からだった。
 ギョッとなってしばらく目を瞑っていたけど、勇気を振り絞る。
 綺麗な字で書かれてあった。

「歩君へ。村田先生と話したけど、もうあなたを今は襲わないことにする。私たちは学校で生贄になる子たちを探していたの。そのことを書くわね。何故、生贄となる子供たちを探していたのかは歩くんは知らない方がいいかも知れない。でも、書くことにしたわ。怖ければ読まないでもいいからね」
 優しい字だった。ぼくを殺そうとした時の大原先生じゃないみたいだった。手紙には、そう書かれていた。
 ぼくは冷や汗をかいて心臓がぎゅっと締め上げられる。たけど、静かに読むことにした。
 きっと、読めばバラバラにされても生きている子供たちを助けることができるはず。
 薄暗い病室だったから、テーブルライトを点けて勇気を振り絞った。

「まず、人は死なない。本当のことよ。ちょっとしたことで死なない体になるの。それを知った昔の人々は大昔から繰り返し繰り返し行われる酷いことをしていたの。勿論、死にたくなかったからなのね。その人達は飢饉の時に不死を知ったの。大昔の大飢饉から学んだといっても過言ではないわ。そう、彼らはどんな飢饉でも生存する術を身につけた。それは儀式。御三増町から少し離れた村で、儀式は今も毎年大規模に行われるようになっていた。そう……大昔から伝わる幻の儀式。…………不死の儀……。それは……薬を使って仮死状態になった子供を食すというものなの……。昔は生で食べていたの……」
 ぼくは緩やかな吐き気がしてきたけど、冷や汗をかいた顔を両手で拭い。気が付くと、何度も手紙を読んでいた。

 涙が溢れた。

 バラバラにされても生きている子供たちは、もういない。この世には……。
 手紙には続きがある。

「もう、何百年とその村の人々は生き残っているわ。私たちはその村のために学校や幼稚園で生贄になる子供たちを探していたの。行方不明になってもあまり気にならない子供たち。村の近辺では今現在も幾つも誘拐事件が起きいているの。それも毎年の夏にね。だけど、村の子供たちがあまり増えなくなったから。被害が拡大している。学校や幼稚園で生贄を探した。私があなたを襲ったのも村のため。本当は殺そうとしたのではなく。仮死状態にして村の儀式に使おうとしていたの。でも、こんなことは止めようと声を上げた人がいる。それは村田先生よ。私は反対派だったけれども、強く説得された。村田先生は私の従兄なの。ここまで、読んだのか解らないけど……歩君……逃げて……この町から……。不死は恐ろしい……」
 手紙が終わった。

 父さんも母さんも一階のベンチで寝ているから、この病室には大原先生は簡単に出入りできたのだろう。あの時、胸騒ぎがした駐車が下手な黄色い軽自動車は、大原先生だったんだと思う。
 ぼくは、逃げることはできる。
 来月に隣町に引っ越すからだ。

 でも、それまでは調査を続けよう。失われた子供たちのために。ぼく自身のために。


 不死は恐ろしい?
 ぼくには不死になってまで生きている人間が怖くなった。
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