降る雨は空の向こうに

主道 学

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もうひとつの見方

17話

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 一日の長い時間が過ぎた。

 黒田は終始おしゃべりをして、女性は下界の人と天の園の人でもどちらでもいいが、とにかく面白い女ならどちらでもいい。そんな話をしていた。
 食事は黒田が持っていた。珍しい下界の食べ物だ。それはハンバーガーレストランから釣り糸で釣ってきたと言われる代物で、隆は以外に好きな食べ物だった。飲み物は同じく釣り糸で釣ってきたダイエットコーラなどを食していた。

「あ、そうだ。24時間のお姉さんに電話してみては?」
 助手席の黒田の唐突な言葉に隆は首を傾げた。
「24時間のお姉さん?」
「そんなことも知らないなんて……。相当に遠いところから来たんですね。……いいですから、電話は私の携帯を貸しますからかけてみてください。多分、娘さんのことが解るかも知れませんよ」
 隆は黒田の渡す携帯を見つめた。

「番号は0024ですよ」
「はあ……」

 黒田の携帯で0024に電話すると、隆の耳に若い女性の声が聞こえてきた。
「玉江さんですね。私は何でも知っています。娘さんの里美ちゃんは北の雨の宮殿にいるはずです。でも、その前に力を得ないと……」
 隆は血相変えて、車の進路を北に取った。
「ちょっと、隆さん! 僕の友人が西にいますよ!」
「北の雨の宮殿に行かないと! 娘がいるんだ!!」
 電話の受話器から「ちょっとー!! その前に力を得ないとって、言っているでしょうー!!」
 との大声が木霊した。

「玉江さん! 24時間のお姉さんも言っているでしょう! まだ、北に行ってはいけないようですよ! 僕の友人のところへ行きましょうよ! 何のことかは解りませんが!」
 二人の説得で隆は渋々に納得せざるを得なかった。
「力を得るって!! どういうことですか?!」
 電話越しに隆が叫ぶと、
「雨の宮殿にはこの天の園で、一番尊い生命の神がいます。そして、その神はここ100年ですが、様子がおかしいのです……。下界にたくさんの干渉をしたり、天の園でも不正な干渉をしているのです。何かあるとあたしは思います。ですから……あなたは力をこの天の園で得るのです。ご覧の通りにみんな遊び人ですから、難しいですね……。でも、きっと、力になってくれる人がいます。この天の園でも真面目な兵士がきっといて、力になってくれるでしょう」
 電話の24時間のお姉さんは続けた。

「西の方のあなたの本当の両親と両親は真面目な方ですが、後で雨の宮殿に囚われるでしょう。そうなる前に会って、話してみてください。あなたの両親は虹とオレンジと日差しの町にいます。何かがあります。あ、それと、天界の食べ物は決して食べてはいけませんよ」
「囚われる? 俺の両親と本当の親が?」
「ええ。私には解るのです」
 隆は電話の主の24時間のお姉さんの言葉に仕方なく頷くしかなかった。娘に早く会いたいが、この世界のことを何も知らないし、話を聞いておいて損はまったくないだろう。
「解りました。西に行って両親に会います」
 隆は電話をしながら西へとまた車を走らせた。

「頑張って下さい。後、時々私に電話をして下さい。きっと、役に立ちますよ」
 24時間のお姉さんの電話を切った。
 しばらくして、下には大きい海が見え、その先にビルディングが見えて来た。しかし、その建物の隙間には道路はなく。変わりにキラキラ光る川が巡る。

「もうそろそろです。僕の友達は雲の上にいますよ」
 快適に走る軽トラックの前方に数本の糸が垂れ下がっていた。
 上を見上げると、雲に寝そべって釣りをしている人達がいる。それから、空中で若者がたむろしていた。
 若者は高校生たちで、茶髪や派手なメイクの男や女だ。
 黒田とそこで別れると、隆は釣り糸と釣り具を貰った。それで、お腹が空いたら下界から食べ物を釣ればいいと言われた。方法は下界を念じて糸を投げればいいと、黒田は下界からその方法で、何度も珍しい食べ物を食べていた。

 隆はまた、果てしなく西へと向かう。
 すると、隆の車を見て珍しがる若者の一人がやってきた。
 空を飛ぶその人は、また隆の車に乗りたがっているようだ。
「うっそー! そんなに遠いところにおじさん行くの!? 私も連れてってよ!」
 女子高生である。
 派手なメイクの褐色の肌を持つ日本人だ。
 かなり短めなスカートとブレザーを着ている。

 隆はどうもこういう人が苦手だった。けれど、ここは天の園。悪い人はいないだろうと、快く助手席に座らせた。

「ねえねえ、おじさん。私、下界の食べ物食べた時ないなー」

 隆はその女性にしばらく、目を白黒させられることになった。
 黒田から貰った釣り具で遥か下の下界に向かって、念じながら糸を投げると、釣り糸は弧を描いて落下しながら、急にできたぽっかりと空いた小さな空間の中へと入って行った。 


 そして、少し力を込めるとビーフシチューの皿ごと引っ掛かって来た。
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