スクリーン上の本棚から君へ

主道 学

文字の大きさ
4 / 5
何もかも新しくなっていく

――――

 本屋を全部洗濯機にでも入れたみたいな大掃除もやった。

 本棚の至る所に、設置された無数の電子書籍を、PRしているスクリーンを取り替えるという蟻のように細かな作業もやった。

 石井さんと商品説明や接客の特訓もやった。
 
「うん?」

 そんなある日。

 本屋で、ぼくは不意に例の何も映っていない本棚に向かって、右手を突っ込んでしまった。ちょうど掃き掃除をしていた時に、バランスを崩したからだ。

 でも、本棚のスクリーンには感触が何もなかった。
  
「あれ?」

 ぼくの右手はスッとスクリーンの中へと入ってしまった。

 石井さんがそれを目撃して、慌ててぼくの右手を強く握って引っ張ってくれた。
 
 だけども、それも虚しくぼくの身体全部がスクリーンの中へと吸い込まれてしまった……。

「わっ!」

 スクリーンの中は、見たこともない電子空間になっていた。

「あれれ?? スマホがある?」  
 
 ぼくの消えたはずのスマホが、目の前で宙に浮いていた。

 何故だろう?

 ひょっとして、ここの本屋で無くしたんだろうか?

 こんな心細い電子空間でたった一つで、浮いていたのだろう。

 ぼくのスマホからは、この本屋の全ての電子書籍が買えることができるポイントが目の前で突然、跳ね上がりだした。

「うわーーー、信じられない!!」

 60万ポイント……。

 150万ポイント……。

 500万ポイント……。

 …………

 9999万ポイント……?!


 ぼくのスマホのポイントが、120000万ポイントまで数字が大きく跳ね上がる頃には、ぼくは豪奢な家付きで一生分の読書ができるんだなと思えてきた。

 でも、ぼくにはこの本が読めれば十分だったんだ。
 本は「春風と共に桜はすぐに散る」だけでいいんだよ。

 すぐに、スマホが耳障りな音を鳴らして、浮上する。
 ぼくもまたスマホと一緒に浮上していく。

「原因はバグ?? ひょっとして、この本棚故障中かな?」 
 
 スマホをこの故障した本棚へ落としたのが、そもそもの原因なんだ。

 きっと、そうだ!

 浮上している間に、ぼくはこの現象は一体なんだったんだろうと考えていた。

 ああ、そうだ!
 そう、故障した電子空間にスマホを落としてしまったのだ。

 気がつくと、ぼくはスクリーンから外へ出て本屋の床で倒れていたようだ。
 
「大丈夫?」
 
 石井さんがぼくの顔を覗きこんでいる。
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。 真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。 婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。 白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

側妃の愛

まるねこ
恋愛
ここは女神を信仰する国。極まれに女神が祝福を与え、癒しの力が使える者が現れるからだ。 王太子妃となる予定の令嬢は力が弱いが癒しの力が使えた。突然強い癒しの力を持つ女性が異世界より現れた。 力が強い女性は聖女と呼ばれ、王太子妃になり、彼女を支えるために令嬢は側妃となった。 Copyright©︎2025-まるねこ

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。