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火曜日
12話
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私はさっさとコルト・ガバメントをジャージのポケットの中に入れ、奈々川さんを家に入れてから外へと出た。
外は台風クラスの大雨が降っていた。当然、藤元のせいだ。
今は8時。
隣の向かいにある奈々川さんの家まで大きめの傘を持って歩いて行く。
銃には弾が三発しかなかったはずだ。弾丸が高いので余り買えないのだ。それに、私の銃はハローポイントという殺傷力の強い弾丸で、一発の弾が560円もする。銃とは違い弾丸には高い税金が含まれているのだ。
パッと見ても不審な男は見えない。
このA区に奈々川さんがいることを知った人物。そんな人物がいるとしたら、私の職場のB区の奴らか……或いは総理大臣の情報網に引っ掛かったのだろうか。どちらも、命の危険がある。
奈々川さんが素直にB区の自分の家に戻ればいいのだが、そんなことは出来ない。私は奈々川さんが好きなのだ。見す見す強制的なフィアンセとの結婚なんてさせられない。
ここは何とか銃で抑えよう。
戦争になるだろうけど、仕方がない。
奈々川さんの家の前で、そんな不穏なことを考えながら立っていると、丁度家の右側の奥にあるゴミ捨て場に不審な男がいた。
その男は背広姿で片手に傘を持ち、片手に手帳を持っていた。
私はその男のところまで歩いて行くと、
「今日の雨は藤元のせいですね」
「……」
私の世間話をその男は無視してきた。
何やら手帳を急いで隠しだし、片手をズボンのホルスターに当てたので、私は素早く片手をジャージのポケットに入れると銃を抜いた。
一発の銃声が周囲に鳴った。
倒れた男から手帳を取り出した。
「やっぱり……」
その男の手帳には、A区にいる奈々川さんの正確な住所と、この近辺の状況が書かれていた。そして、財布も調べると、一枚の名刺が……。
その男は探偵であった。
「どうしよう……」
奈々川さんが震えている。
「こんなことになるなんて……。私が家出したばっかりに……」
ここは私の家。
「夜鶴さん。私はどうしたら。警察の方に夜鶴さんが連れていかれたら……。それに……人が死んじゃった……」
「大丈夫さ。ここA区でも警察の人なんて滅多にやってこないから。それより、外は危険だからここに暮らしてくれれば……」
私は少しだけど、青い顔をほんのりと赤くした。この私が奈々川さんと同棲するなんて……。
「どうしよう……」
奈々川さんが呟く。
「大丈夫さ。あの探偵の手帳は俺が取って、今では部屋のゴミ箱の中だし。それにB区の奴らが来ても俺がなんとかしよう」
「私はただ……自由になりたかっただけ……。それは人が死んでしまうことではないはずよ」
奈々川さんが青い顔で俯いた。
「仕方がないさ。箱入り娘だった奈々川さんには解らないだろうけど、これがここの現実なのだから。俺はいつも死を覚悟していた。今まで……A区とB区の間にいたんだ。命が幾つあっても足りはしない」
奈々川さんが私の顔を見つめた。
「でも……。人の命って大切なものなのよ」
「そうだっけか? 今の時代は大企業とかの沢山のリストラで、大勢の人が間接的な死を宣告されている。ほとんどここA区で生きていかないといけないんだ。でも、A区はそんな中で逞しく生きているんだ。それでも生きていくのは困難だけれど……。だから、銃を持っているんだ」
「いいえ。違うわ。銃は必要じゃない。一人じゃ無理なだけ……」
私はキッチンへ向って、コップに熱いコーヒーを入れた。
そのコーヒーを奈々川さんに与える。
「ありがとう。でも、これからどうしよう」
「奈々川さん……ここに住んでくれ……。お願いだ」
スケッシーが大喜びだった。
外は台風クラスの大雨が降っていた。当然、藤元のせいだ。
今は8時。
隣の向かいにある奈々川さんの家まで大きめの傘を持って歩いて行く。
銃には弾が三発しかなかったはずだ。弾丸が高いので余り買えないのだ。それに、私の銃はハローポイントという殺傷力の強い弾丸で、一発の弾が560円もする。銃とは違い弾丸には高い税金が含まれているのだ。
パッと見ても不審な男は見えない。
このA区に奈々川さんがいることを知った人物。そんな人物がいるとしたら、私の職場のB区の奴らか……或いは総理大臣の情報網に引っ掛かったのだろうか。どちらも、命の危険がある。
奈々川さんが素直にB区の自分の家に戻ればいいのだが、そんなことは出来ない。私は奈々川さんが好きなのだ。見す見す強制的なフィアンセとの結婚なんてさせられない。
ここは何とか銃で抑えよう。
戦争になるだろうけど、仕方がない。
奈々川さんの家の前で、そんな不穏なことを考えながら立っていると、丁度家の右側の奥にあるゴミ捨て場に不審な男がいた。
その男は背広姿で片手に傘を持ち、片手に手帳を持っていた。
私はその男のところまで歩いて行くと、
「今日の雨は藤元のせいですね」
「……」
私の世間話をその男は無視してきた。
何やら手帳を急いで隠しだし、片手をズボンのホルスターに当てたので、私は素早く片手をジャージのポケットに入れると銃を抜いた。
一発の銃声が周囲に鳴った。
倒れた男から手帳を取り出した。
「やっぱり……」
その男の手帳には、A区にいる奈々川さんの正確な住所と、この近辺の状況が書かれていた。そして、財布も調べると、一枚の名刺が……。
その男は探偵であった。
「どうしよう……」
奈々川さんが震えている。
「こんなことになるなんて……。私が家出したばっかりに……」
ここは私の家。
「夜鶴さん。私はどうしたら。警察の方に夜鶴さんが連れていかれたら……。それに……人が死んじゃった……」
「大丈夫さ。ここA区でも警察の人なんて滅多にやってこないから。それより、外は危険だからここに暮らしてくれれば……」
私は少しだけど、青い顔をほんのりと赤くした。この私が奈々川さんと同棲するなんて……。
「どうしよう……」
奈々川さんが呟く。
「大丈夫さ。あの探偵の手帳は俺が取って、今では部屋のゴミ箱の中だし。それにB区の奴らが来ても俺がなんとかしよう」
「私はただ……自由になりたかっただけ……。それは人が死んでしまうことではないはずよ」
奈々川さんが青い顔で俯いた。
「仕方がないさ。箱入り娘だった奈々川さんには解らないだろうけど、これがここの現実なのだから。俺はいつも死を覚悟していた。今まで……A区とB区の間にいたんだ。命が幾つあっても足りはしない」
奈々川さんが私の顔を見つめた。
「でも……。人の命って大切なものなのよ」
「そうだっけか? 今の時代は大企業とかの沢山のリストラで、大勢の人が間接的な死を宣告されている。ほとんどここA区で生きていかないといけないんだ。でも、A区はそんな中で逞しく生きているんだ。それでも生きていくのは困難だけれど……。だから、銃を持っているんだ」
「いいえ。違うわ。銃は必要じゃない。一人じゃ無理なだけ……」
私はキッチンへ向って、コップに熱いコーヒーを入れた。
そのコーヒーを奈々川さんに与える。
「ありがとう。でも、これからどうしよう」
「奈々川さん……ここに住んでくれ……。お願いだ」
スケッシーが大喜びだった。
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