ご近所STORY ハイブラウシティ【改訂版】

主道 学

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結婚式

34話

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 その次の日


 島田が面会に来た。
「夜鶴。俺も呼べって言ったろー」
「ああ。悪い。弥生さんは来てないだろな?」
 島田はガラス越しに心配してくれている。
 ここはB区だ。

「車に待たしているけど」
「危ないぞ!」
「大丈夫さ。それより、今から首相官邸に行って、首相を殺しに行くぜ」
 私は首を振って、
「やめてくれ……。そんなことをしても意味がない。それより……島田。奈々川さんを頼む」
 島田はちょっと、考えると「おっけー」と言った。

「俺は脱獄をしてみる。一か八かだ」
「ははっ、さっすがそうじゃなきゃいけねーぜ。外は任せろ。俺たちがいる。お前は内側だけ何とかしろ。奈々川さんは首相官邸にいるから、お前を脱獄させてからだな。うひょー、スリルあるぜ。きっと、失敗したら俺と田場さんと津田沼も一緒に重犯罪刑務所入りだな」
 私は一瞬、考えた。けど、怯むことなく、
「ああ……いいとも」
 私は奈々川さんのために頷いた。

「これを持ってけ。じゃあ、準備するから明日の夜な」
 ――――
 トラ箱の中に警察の人に連れられて入る。
 警察の人はこの署内には一人だけだ。後はアンドロイドのノウハウが数体派遣されてきた。治安を改善するために、最初に金の流れるところは、やはりこういったところである。
 昨日から治安に専心している政治になったのだろう。
 夜でも警察の人は交代して一人だけ、後はノウハウだけだ。

 前は少人数の警察の人が寝泊まりしていたようだが。
 警察所は広くはなく。二階建の建物だ。治安が悪いのは前からだが、今からはノウハウが活躍しようとしている。

 トラ箱の中では、
「お飲み物は?」
 ノウハウがぼさばさ頭に食事とコーヒーを与えている。
「あー、いやだねー。飯は不味いとんかつとコーヒーだけってのが。」
 ぼさばさ頭は何だかんだ言って、とんかつを食べ終わりコーヒーを飲んでいる。
「あ、夜鶴さん。百杯目のラーメン貰って来たかい?」
 ぼさぼさ頭が首を向ける。

「いや、無いんだ。」
 私は気分が悪く弱い口調になっていた。
「えー。さっき面会で貰って来たんだと……」
 私はぼさぼさ頭を一瞥してベットに横になった。
「夜鶴 公さん。お食事は?」
 私の隣に来たノウハウがとんかつとコーヒーを持って来た。

 私はいらないと言って、すぐに眠る振りをした。
 ノウハウは厄介だ。
 数体もいるし、銃がないと歯が立たない。島田が何とかしてくれるだろうか?

 ……

 私は夢の中で、野球のエースになっている。
 その格好は青いラインの服で、背番号は良く見えないが、自由を得るために必死になっていた。


 次の夜。 
 私は鉄格子を開けるために、島田から貰った針金を持つ。
 頑丈な南京錠に針金を通し、しばらくいじくる……。
 開いた。

 ぼさぼさ頭は眠りこけている。
 私は早速、殺風景な廊下へと出た。確か右に行けば外へ出られる扉がある。しかし、すぐ近くにノウハウが立っていた。
 ノウハウは無言で立っている。
 何も話すことが無く。その金属製の甘いマスクには何も読み取れない。
「こ……故障かな?」
「動かないほうがいいぞ……」
 後ろを振り向くと、ぼさぼさ頭が立っていた。

「多分、今端末に通信しているんだ」
「通信?」
 私は首を傾げた。
「ああ。誰かと通信しているんだ。警察の人か誰かと」
 ノウハウが動いた。
 私の腹に鋭いフックを浴びせた。
 私は地面に倒れる。
 鉄の匂いがするものを口から吐いた。

「どうなっているんだ?! ノウハウが殴った?! こんなに危険なアンドロイドだったのか?!」
 ぼさぼさ頭が叫ぶ。
「夜鶴 公。あなたを殺します。不正プログラムの行使。マスターからの殺人許可。それらを遂行します」
 私はぜえぜえと息をしながら、何とか立ち上がり、ノウハウから逃げる体勢になった。次に私は顔面を殴られた。
 重いパンチだった。顎の骨にひびが入るほどだった。
 そして、頭部にもパンチを浴びせられ。
 私は眩暈がするほど意識が遠のいた。

 ――――

 奈々川さんが笑っている。
 私に何かを話しているが、声が聞こえない。その大きく開けた口からは何も聞こえなかった。何かを必死に訴えているようにも感じる。……悲しい表情になった。

「夜鶴。大丈夫か?」
 島田の声だ。
 弱弱しく目を開けると、
「ノウハウは田場さんが片づけた」
「う……」
 私の顔はどうなっているのだろう。何とか立てるようだが、立ち上がると、島田と田場さんと津田沼が狭い廊下に立っていた。みんな重火器を持っている。

「さっすが! 田場さんのフルオート式ライフルF2000。威力が違うねー!」
 島田は私に肩を貸してくれている。
「夜っちゃん。大丈夫。多分、ノウハウが谷多部か奈々川首相の命令で殺人許可を遂行しているんだ。警察の人とぼさぼさ頭の人は逃げて行った」
 私は眩暈と吐き気をしながら島田と歩く。

「……奈……奈々川さん……」
「駄目だ。夜鶴くんは気を失う寸前だ。俺たちだけで片付けよう」
 田場さんが赤いモヒカンをいきり立たせ、ライフルをぶっ放す。ノウハウがわらわらとやって来た。
 銃弾はノウハウの顔面に当たり、青い火花が飛んだ。


 島田もサブマシンガンを乱射。
 津田沼は手榴弾を両手に持っていた。

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