ツギハギ・リポート

主道 学

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あなたはだあれ?

02

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「地図にはここにあるって、載っているはずなのになあ……あれ!?」
「うん?!」

 道を尋ねた人と日台が同時に首をかしげる。

 今まであったはずの林道の二つの小道が忽然と無くなっていた。
 俺は目を擦りながら、多分、見間違いでただ薄暗いだけで小道はそのまま繋がっているんだろうと思った。

「うーん。なんか……。あの、失礼ですが、ここ廃村ですよね。何かの心霊スポットの取材か何かでしょうか?」
「そうです」
「ぼくも御二方に同行していってもいいでしょうか?」
「うんうん。別にいいけど、床とか階段が腐っていて危ないよ」
「大丈夫です! 良かった。午後には帰らないといけないんですよ。急いでいます。できればここで取材しようと思います。ぼくの名前は鈴木 信夫です」
「よろしく。俺は日台 伸介。心霊写真ライターをしていて、こっちの運転手が海道 雅くん。配送センターで勤務していて、この廃村の元住人だったんだ」
「それは良いですねー」

 日台と鈴木が意気投合している間に、雲行きが怪しくなって真夏の風が急激に涼しくなって来ていた。


 案の定。

 雨がしとしとと降りだした。
 この村は、1984年に最後の子連れの親子が下山してから廃村になった。けれど、廃村はボロボロになっていて人がいないだけで昔のままだったのだ。

「懐かしいなあ。これくらいなら、まだまだ人が住めそうだ。あそこに駄菓子屋がある。昔、よくラムネを買ったんだ。あ、あの寂れた神社も子供の頃に行ったなあ。来我《こが》くんの家も西野ちゃんの家もある」

 俺が懐かしさで歓喜していると、後ろでは鈴木と日台は互いにスマホを持ち出し打ち合わせを始めていた。恐らくどうせならここを取材しようという魂胆だろう。

 さすがに電車は一本も来ないが、無人の駅もある。
 雨が本降りになると視界が悪くなって下山できないので、もう戻ろうかと思った頃。

「ふーん。そうですか。それなら会社へ電話してもいいでしょう。観光スポットもいいですが、たまには意外性もあってもいいんじゃないですか、廃村スポットの配信もいいと思いますね」

 鈴木が日台と商談をしていた。
 二人共商魂たくましい。 

 静かな小雨が降り続ける中。
 
 カラスの鳴き声が木霊している荒れ果てた小道をひたすら三人で歩いた。その小道が前は手入れをされた畑だったとわかると、俺たちは無言になりだした。

「あれ? 日台さん。どうせなら、あの廃病院から行きましょうよ。日台さんはあっちの神社へ行こうとしているんじゃないかと思うんですが……やっぱり心霊スポットの定番は、ぼくはどちらかというとあの廃病院かと思うんですよ」
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