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第七章
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でも、知っている奴もいた。
あれれ?? それも意外な奴。
羽帽子で顔が見えにくかったけれど……。
なんでこんなところに?!
生徒会長が?!
「あんた猪野間だよな?」
「あら、鬼窪くん。久しぶりね。ちゃんと勉強やってる?」
「その恰好? それに、羽帽子にクシナ要塞の旗が……」
猪野間は学生服である紺色のブレザーを着ていて、クシナ要塞の旗が縫ってある羽帽子を被っていた。
「鬼窪くん! シッ! 静かにして!これからラピス城のソーニャ王女とガルナルナ国の使者とクシナ要塞のクシナ皇帝陛下が、三カ国協議を始めるから。そして、休戦協定を結ぼうとしているのよ」
「あのソーニャが?? 休戦協定を??」
「そうよ……私、思うんだけど。それだけサンポアステイ国っていうところはとても強いんじゃないのかしら」
あ! そうか。俺は前に聞いたことがあるんだった!
サンポアスティ国は、もっとも破壊力があるといわれるスティ女王のグレード・バニッシュ・スターという武器があるんだった。けど、確かアリテア王はあの黄金の鎧で無傷だったって言ってたっけ。
でも、グレード・バニッシュ・スターって、どんな武器で、どれくらいの威力なのかな??
「あのね鬼窪くん……。ちゃんと勉強してるの? サンポアスティ国のスティ女王のグレード・バニッシュ・スターって、私たちの学校が二つくらい楽に木っ端微塵にできるほどの威力よ。それで、クシナ皇帝は補助魔法の上位クラスを40名も側近にしようとしていたの。私も、グレード・バニッシュ・スターで大きく陥没した大地をクシナ領地でだけど、一度見たことがあるわ。国同士の戦争じゃ、平和ボケしてるからさっぱりわからないけど、楽には勝てない相手なのは確かね」
「うへえええー! 猪野間! それ本当か! 学校二つ分?! それで、休戦協定か……。確かにそんな武器相手じゃ、ラピス城の橋もクシナ要塞も壊されてしまうよなあ」
猪野間の説明は俺をただただ驚愕させた。
うーん……。
こう、カキ―ンと神聖剣で隙を突ければ……。
俺にだって、勝機はあるはず。
「あ。鬼窪くん。始まったわよ」
――――
満月の夜だった。
月の明かりで光り輝く真っ白なドレスは、ソーニャにはお似合いだった。
「よくお出でくださいました。クシナ皇帝陛下とガルナルナ国の使者よ」
そんなソーニャは玉座の上で頭を深々と下げると、王の間を囲むかのように兜だけを脱いだ騎士や帽子を外した重臣たちが大勢緊張しだした。
「フンッ! そう畏まるな! ソーニャ王女よ頭を上げよ!」
クシナ皇帝陛下は鼻で笑った。
月明かりに照らされた。その横顔は冷酷さが滲み出ている。
二人の上下関係は俺にはよくわからないんだ。
皇帝と王女どっちが偉いんだろう??
はっきりいって、俺にはクシナ皇帝陛下は恰好が良かったと思う。けれど、綺麗なドレス姿のソーニャもとても良い。
うーん。
ソーニャの方が偉いんだろうな……。
俺はどうでもいいことを考えた。
隣にいる猪野間も腕組みをして考え事をしていた。
まさか、俺と同じことを考えてるのか?
「鬼窪くん。王女と皇帝。どっちが偉いと思うの?」
「へ? 王女」
「ちゃんと勉強してるの? 皇帝よ」
猪野間が首を傾げてクシナ皇帝陛下を見て言った。
「きっと……。上下関係をあまり気にしない人なんだわ。ああいう人には気をつけた方がいいわよ。特に鬼窪くん」
「うへえええ」
俺はクシナ皇帝陛下の方を向くと、そういうことを、本当に気にしていないようだった。
なんか……危険な奴だな。
あれれ?? それも意外な奴。
羽帽子で顔が見えにくかったけれど……。
なんでこんなところに?!
生徒会長が?!
「あんた猪野間だよな?」
「あら、鬼窪くん。久しぶりね。ちゃんと勉強やってる?」
「その恰好? それに、羽帽子にクシナ要塞の旗が……」
猪野間は学生服である紺色のブレザーを着ていて、クシナ要塞の旗が縫ってある羽帽子を被っていた。
「鬼窪くん! シッ! 静かにして!これからラピス城のソーニャ王女とガルナルナ国の使者とクシナ要塞のクシナ皇帝陛下が、三カ国協議を始めるから。そして、休戦協定を結ぼうとしているのよ」
「あのソーニャが?? 休戦協定を??」
「そうよ……私、思うんだけど。それだけサンポアステイ国っていうところはとても強いんじゃないのかしら」
あ! そうか。俺は前に聞いたことがあるんだった!
サンポアスティ国は、もっとも破壊力があるといわれるスティ女王のグレード・バニッシュ・スターという武器があるんだった。けど、確かアリテア王はあの黄金の鎧で無傷だったって言ってたっけ。
でも、グレード・バニッシュ・スターって、どんな武器で、どれくらいの威力なのかな??
「あのね鬼窪くん……。ちゃんと勉強してるの? サンポアスティ国のスティ女王のグレード・バニッシュ・スターって、私たちの学校が二つくらい楽に木っ端微塵にできるほどの威力よ。それで、クシナ皇帝は補助魔法の上位クラスを40名も側近にしようとしていたの。私も、グレード・バニッシュ・スターで大きく陥没した大地をクシナ領地でだけど、一度見たことがあるわ。国同士の戦争じゃ、平和ボケしてるからさっぱりわからないけど、楽には勝てない相手なのは確かね」
「うへえええー! 猪野間! それ本当か! 学校二つ分?! それで、休戦協定か……。確かにそんな武器相手じゃ、ラピス城の橋もクシナ要塞も壊されてしまうよなあ」
猪野間の説明は俺をただただ驚愕させた。
うーん……。
こう、カキ―ンと神聖剣で隙を突ければ……。
俺にだって、勝機はあるはず。
「あ。鬼窪くん。始まったわよ」
――――
満月の夜だった。
月の明かりで光り輝く真っ白なドレスは、ソーニャにはお似合いだった。
「よくお出でくださいました。クシナ皇帝陛下とガルナルナ国の使者よ」
そんなソーニャは玉座の上で頭を深々と下げると、王の間を囲むかのように兜だけを脱いだ騎士や帽子を外した重臣たちが大勢緊張しだした。
「フンッ! そう畏まるな! ソーニャ王女よ頭を上げよ!」
クシナ皇帝陛下は鼻で笑った。
月明かりに照らされた。その横顔は冷酷さが滲み出ている。
二人の上下関係は俺にはよくわからないんだ。
皇帝と王女どっちが偉いんだろう??
はっきりいって、俺にはクシナ皇帝陛下は恰好が良かったと思う。けれど、綺麗なドレス姿のソーニャもとても良い。
うーん。
ソーニャの方が偉いんだろうな……。
俺はどうでもいいことを考えた。
隣にいる猪野間も腕組みをして考え事をしていた。
まさか、俺と同じことを考えてるのか?
「鬼窪くん。王女と皇帝。どっちが偉いと思うの?」
「へ? 王女」
「ちゃんと勉強してるの? 皇帝よ」
猪野間が首を傾げてクシナ皇帝陛下を見て言った。
「きっと……。上下関係をあまり気にしない人なんだわ。ああいう人には気をつけた方がいいわよ。特に鬼窪くん」
「うへえええ」
俺はクシナ皇帝陛下の方を向くと、そういうことを、本当に気にしていないようだった。
なんか……危険な奴だな。
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