終焉の守護騎士

主道 学

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第八章

10-8

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 な、なんでこんなところに、あのオニクボがいるんだ?! 

 あ、そうか!
 遠い昔の記憶を辿ると、ヒッツガル師匠の暗殺をオニクボに命令した奴って……クシナ要塞にいるクシナ皇帝陛下なんだ!

 オニクボはゆっくりと階段を上っていく。
 
「マズいわね……鬼窪くん。あの人とても強いわ。足音もしないし、敵か味方かわからないけれど、恐ろしいまでの殺気を発している」
「ああ、それはわかるんだ。多分、仲間だと思うけど、そいつはオニクボっていうんだよ」
「……??」
「ああ、俺と同じ名前なんだ」

 猪野間が目を吊り上げて、険しい顔をした。
 
「凄いわ! 人を何人殺せばこんな殺気を帯びることができるの?! クシナ皇帝と互角かも!」

 こんな顔の猪野間は見たことがないぞ?!

 な、なんか、怖いぞ……猪野間。

 猪野間は抜刀して、上の階へと走りだした。

 俺も走る。

 皇帝の広間へと繋がる鉄の大扉が、開いた?! 猪野間に次いで、俺も中へと入ると、扉の中は……既に死体の山だった。たくさんの兵に高そうな服の人たちが倒れている。
 
 広間の中央には、短剣を構えたオニクボがいた。

「フフ、会いたかったぜー。クシナよ。魔法使いの暗殺の依頼料を貰っていなかったんでな。依頼料は、その首でいいや。一つ頂戴するぜ」
 
 クシナ皇帝は玉座の後ろに立っていた。
 少し小首を傾げると……消えた!?

「ムッ!!」

 オニクボがあらぬ方向へ短剣を投げる。
 俺は短剣が投げられた方へ目を向けると、そこは、玉座から東へ10メートルも離れた場所だった。そこに現れたクシナ皇帝が、黒光りする刀を抜いた。そして、飛んできた短剣を真っ二つにした。

 見、見えない!!

 どういうスピードだ??

「鬼窪くん。あなたに補助魔法を掛けるわ。だから、クシナ皇帝を倒して!!」

 隣の猪野間が片手を挙げて、魔法を使う。

「いくわよ! フルスロットル!!」

 猪野間の一声で上位クラスの補助魔法が発動し、同時に俺の身体が緑色の光に包まれた。瞬間、俺はまるで、自分の身体が自分のじゃないような感覚に陥った。

「え?! これが俺の腕?! 足?!」

 身体の感覚が、まったくといっていいほど別物だった。
 クシナ皇帝はじりじりとこちらへ向かってきた。
 
 俺は少し、身体を引いて、前方へ飛んだ。なんと、僅かな力を掛けたはずなのに、数百メートルも飛べた!! 耳に聞こえる風の音が轟音に聞こえる。広間の風景も猛スピードで後ろへ流れていく。

 気がつくと、この速さの中でオニクボが俺を追い越していった。
 短剣を構え、クシナ皇帝の喉笛目掛けて振り回した。

 クシナ皇帝は僅かな動きで、刀……斬功狼を振る。

 瞬間、オニクボの短剣が粉々になった。
 
 よし! 今度は俺の番だ!

 神聖剣で横薙ぎに斬る!
 それを、クシナ皇帝は、苦も無く俺の脇に回り込んで躱した。
 俺は今度は神聖剣を、袈裟斬りに振る。
 クシナ皇帝は、その剣も寸でのところで後ろへ飛んで躱し、右足を少し前に送り、大きく横薙ぎをした。俺は斬功狼の斬撃を、神聖剣なら大丈夫だと思い。

 受け止めた……。

 カキ―ーーン!
 
 派手に火花が辺りに散った。
 俺は神聖剣の刃を見た。

 ……やっぱり、神聖剣は無事だった。 

 刃毀れ一つもしていない。
 何でも斬れる刀の斬功狼は、グレード・シャインライン国の国宝は斬れなかったんだ。

「ふん! よくぞ我が斬撃を受け止めた!」

 クシナ皇帝が後ろに一歩右足を引いて、それから、右足を前に踏み込むと同時に、目にも止まらない速さで、突進してきた。

 俺にはそのスピードが速すぎた。
 
「超強化補助魔法! ダブルフルスロットル!」

 後ろにいる猪野間が、間髪入れずに強力な補助魔法を俺に唱えた。

 凄まじい緑色の光に包まれた俺の身体能力が、爆発的に上昇する。
 俺は左にクルリと回り、斬功狼の斬撃を寸でのところで躱し続けた。
 クシナ皇帝の体当たりを、右へ跳躍して大きく避けると、そのままの態勢で、神聖剣を右から斜め上に構えた。

「これで終わりだーー! 鋼雲剣!!」

 爆速の光と共にクシナ皇帝の肩とパネル式の床を光の束が貫通する。床に穴が空いて、破裂した。ズシンと俺たちは、下方へと落下する。

 落下中。

 クシナ皇帝が肩を抑えて、俺の胸脇に向かって斬功狼を振るう。
 俺はすぐさま神聖剣でそれを撃ち払った。
 
 地面はまだ先だ!
 このまま落ちながら、決着をつけてみせる!

 俺は神聖剣を、深く構えてからの幾つもの斬撃を繰り出す。
 クシナ皇帝も斬功狼を、深く構えてから迎え撃ってきた。
 
 互いの剣が、空中で激しい火花を散らす。
 
 今度は、大振りの剣で、クシナ皇帝を薙ぎ払うが。けれど、クシナ皇帝もそれを躱し、猛スピードの瞬間的な突きを放った。俺は即座に、右のポケットから髑髏のナイフを取出し、それを防ごうとした。だが、斬功狼の威力に粉々になってしまった。
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