4 / 42
恋煩い
恋煩い 2
しおりを挟む
朝。
6時起床。
寝室に設置されてあるバスルームで入浴。
34階で朝食のクロワッサンとダッチコーヒーを食べながら、新聞を読んだ。
新聞には奈々川首相が載っていた。昨日の可決されたスリー・C・バックアップの見出しだ。
僕は溜息を吐いてテレビを点ける。
キッチンの壁は大型のパノラマテレビだ。
「おはようございます。云話事町放送Bです」
テレビには男性のアナウンサーが、マイク片手に云話事マンハッタンビルのガラス張りの正面玄関にいた。
周囲には大勢のマスコミが集まっていた。
「昨日、奈々川首相によるスリー・C・バックアップの可決がされ……」
アンジェが二杯目のコーヒーを淹れてくれた。
「C区は元はと言うとB区の一部だったのです。6年前から様々な高度な技術を、前奈々川首相(晴美の父親)の意向により開発をしておりましたが、それはもともとはアンドロイドのノウハウの大規模な労働への導入を考えてのことだったのです。例えば工事や倉庫内作業や医療などの作業は、ノウハウのもっとも得意とする分野だったのですね……。ですが、ハイブラウシティ・Bは人間性を欠いたものへと変貌したと現奈々川首相の発言と行動によって、方針が是正されていきました。今ではスリー・C・バックアップは必要不可欠な社会貢献のためにと……ノウハウをより人間に近づけるために……」
僕はサンドイッチのお替りをマルカに頼んだ。
マルカはキッチンへと行くと、高速な包丁さばきでサンドイッチを作った。
僕はチャンネルを変えた。
「おはようッス! 云話事町TVッス!」
美人のアナウンサーがマイク片手に、云話事マンハッタンビルの正面玄関で、藤元と一緒にカメラの前に立っていた。
周囲には人だかりになっていて、皆笑っている。
「おはようございます。はい、信者~~信者~~。どなたでも~~。お気軽に~~。きっと~~、来世で~~未来で~~いいこと~あるよ~~! 熱烈大募集中の藤元 信二です!!」
藤元は神社なんかでお祓いに使う棒を振る。
「はい!! 信者の勧誘!! そこまでっス!! ていうか信者入っただろ!!」
「だって、少ないんだもん!!」
「そんなことより、仕事ッス」
美人のアナウンサーは真面目な顔付きになると、
「6年前からC区は技術開発を――つまり、簡単にいうとノウハウをより人間に近い存在にすることが出来る技術を、C区は開発をしていたのです――」
美人のアナウンサーの言葉は云話事町放送Bの男性のアナウンサーとほぼ同じセリフだった。
「ふーむ……このままいくと巨大アンドロイドも夢じゃなさそうですね。そして、宇宙へ行くんですよきっと」
藤元は険しい顔で遥か天空を見つめた。
空は鉛色の雨雲が覆っていた。丁度、美人のアナウンサーの話も何やら暗い方向へと傾きつつあった。
「奈々川首相がスリー・C・バックアップを可決したということは―――」
藤元は慎重に話している美人のアナウンサーの後ろで、神社なんかでお祓いに使う棒を握りながら、叫ぶ。
「そうです! ……これは宇宙でも信者を集められるということです! 素晴らしいことですねー」
と、美人のアナウンサーがずっこけブチ切れた!!
「って、違うだろーーー!!」
カメラに向かって話していた美人のアナウンサーは、瞬く間に藤元を追い掛け回す。
「すいませーん! ごめんなさーい!!」
藤元がテレビを完全無視して逃げ回る。
周囲の人たちはマスコミの人たちと一緒に大笑い。
番組はそこで終わった……。
テレビを消して、僕は会社へと出勤する。
黄色のスポーツカーは、昨日の夜にこの寒さの中でマルカが洗車をしてくれていた。秋も深まるこの季節に、アンジェたちは眠らないし寒さを感じないから特注で揃えた甲斐があった。
僕は駐車場でランボルギーニにイグニッションキーを差した。一段回すとメインスイッチが入り、カーナビなどの電子機器が目を覚ました。更に回すとスターターモーターが回転した。
スポーツカーは回転数は早く落ちる。7000回転すると、その次はガクンと落ちる。
僕はランボルギーニの短い咆哮を聞くと、雹と大雨の中を快適に走り出した。
矢多辺コーポレーションまで、車で約25分だ。これまで遅刻したこともないし、欠勤した時もない。調子が悪い時もないし、病気もしない。
人は僕のことを機械というけれど、違うんだ。僕は神なのだ。
そう経済の神なのだ。
車で走行中に携帯が鳴った。
2040年からB区は、事故さえ起きなければ運転中の携帯電話の使用が許可されていた。けれども、現奈々川首相(晴美さん)が危ないからと禁止した。
僕は軽く舌打ちをして、近くのコインパーキングに車を停車して携帯にでた。私用電話は緊急時しか鳴らないようにしていた。
相手は原田だった。
「雷蔵さん。スリー・C・バックアップのデータを10億で買えと、坂本 洋子が言ってきました」
坂本 洋子とは日本屈指のハッカーで、その道の人たちからは九尾の狐と言われている。
「10億なら安い。いいよ。買ってください」
僕は二つ返事で答えて、携帯を切った。
コインパーキングに大雨や雹の中、手を伸ばしてマイナンバーカードを差し込んで車を走らせた。
今ではマイナンバーカードはB区には現金がないので必需品だった。銀行の機能が付いていた。利息もあって、融資や借金もできる。つまり、銀行や金融機関はカードの数字だけを管理する管理会社となったのだ。後、各店のポイントカードなどにも対応されていて、お得なデビットカードのようなところがある様々な面に有効な身分証明書であった。
6時起床。
寝室に設置されてあるバスルームで入浴。
34階で朝食のクロワッサンとダッチコーヒーを食べながら、新聞を読んだ。
新聞には奈々川首相が載っていた。昨日の可決されたスリー・C・バックアップの見出しだ。
僕は溜息を吐いてテレビを点ける。
キッチンの壁は大型のパノラマテレビだ。
「おはようございます。云話事町放送Bです」
テレビには男性のアナウンサーが、マイク片手に云話事マンハッタンビルのガラス張りの正面玄関にいた。
周囲には大勢のマスコミが集まっていた。
「昨日、奈々川首相によるスリー・C・バックアップの可決がされ……」
アンジェが二杯目のコーヒーを淹れてくれた。
「C区は元はと言うとB区の一部だったのです。6年前から様々な高度な技術を、前奈々川首相(晴美の父親)の意向により開発をしておりましたが、それはもともとはアンドロイドのノウハウの大規模な労働への導入を考えてのことだったのです。例えば工事や倉庫内作業や医療などの作業は、ノウハウのもっとも得意とする分野だったのですね……。ですが、ハイブラウシティ・Bは人間性を欠いたものへと変貌したと現奈々川首相の発言と行動によって、方針が是正されていきました。今ではスリー・C・バックアップは必要不可欠な社会貢献のためにと……ノウハウをより人間に近づけるために……」
僕はサンドイッチのお替りをマルカに頼んだ。
マルカはキッチンへと行くと、高速な包丁さばきでサンドイッチを作った。
僕はチャンネルを変えた。
「おはようッス! 云話事町TVッス!」
美人のアナウンサーがマイク片手に、云話事マンハッタンビルの正面玄関で、藤元と一緒にカメラの前に立っていた。
周囲には人だかりになっていて、皆笑っている。
「おはようございます。はい、信者~~信者~~。どなたでも~~。お気軽に~~。きっと~~、来世で~~未来で~~いいこと~あるよ~~! 熱烈大募集中の藤元 信二です!!」
藤元は神社なんかでお祓いに使う棒を振る。
「はい!! 信者の勧誘!! そこまでっス!! ていうか信者入っただろ!!」
「だって、少ないんだもん!!」
「そんなことより、仕事ッス」
美人のアナウンサーは真面目な顔付きになると、
「6年前からC区は技術開発を――つまり、簡単にいうとノウハウをより人間に近い存在にすることが出来る技術を、C区は開発をしていたのです――」
美人のアナウンサーの言葉は云話事町放送Bの男性のアナウンサーとほぼ同じセリフだった。
「ふーむ……このままいくと巨大アンドロイドも夢じゃなさそうですね。そして、宇宙へ行くんですよきっと」
藤元は険しい顔で遥か天空を見つめた。
空は鉛色の雨雲が覆っていた。丁度、美人のアナウンサーの話も何やら暗い方向へと傾きつつあった。
「奈々川首相がスリー・C・バックアップを可決したということは―――」
藤元は慎重に話している美人のアナウンサーの後ろで、神社なんかでお祓いに使う棒を握りながら、叫ぶ。
「そうです! ……これは宇宙でも信者を集められるということです! 素晴らしいことですねー」
と、美人のアナウンサーがずっこけブチ切れた!!
「って、違うだろーーー!!」
カメラに向かって話していた美人のアナウンサーは、瞬く間に藤元を追い掛け回す。
「すいませーん! ごめんなさーい!!」
藤元がテレビを完全無視して逃げ回る。
周囲の人たちはマスコミの人たちと一緒に大笑い。
番組はそこで終わった……。
テレビを消して、僕は会社へと出勤する。
黄色のスポーツカーは、昨日の夜にこの寒さの中でマルカが洗車をしてくれていた。秋も深まるこの季節に、アンジェたちは眠らないし寒さを感じないから特注で揃えた甲斐があった。
僕は駐車場でランボルギーニにイグニッションキーを差した。一段回すとメインスイッチが入り、カーナビなどの電子機器が目を覚ました。更に回すとスターターモーターが回転した。
スポーツカーは回転数は早く落ちる。7000回転すると、その次はガクンと落ちる。
僕はランボルギーニの短い咆哮を聞くと、雹と大雨の中を快適に走り出した。
矢多辺コーポレーションまで、車で約25分だ。これまで遅刻したこともないし、欠勤した時もない。調子が悪い時もないし、病気もしない。
人は僕のことを機械というけれど、違うんだ。僕は神なのだ。
そう経済の神なのだ。
車で走行中に携帯が鳴った。
2040年からB区は、事故さえ起きなければ運転中の携帯電話の使用が許可されていた。けれども、現奈々川首相(晴美さん)が危ないからと禁止した。
僕は軽く舌打ちをして、近くのコインパーキングに車を停車して携帯にでた。私用電話は緊急時しか鳴らないようにしていた。
相手は原田だった。
「雷蔵さん。スリー・C・バックアップのデータを10億で買えと、坂本 洋子が言ってきました」
坂本 洋子とは日本屈指のハッカーで、その道の人たちからは九尾の狐と言われている。
「10億なら安い。いいよ。買ってください」
僕は二つ返事で答えて、携帯を切った。
コインパーキングに大雨や雹の中、手を伸ばしてマイナンバーカードを差し込んで車を走らせた。
今ではマイナンバーカードはB区には現金がないので必需品だった。銀行の機能が付いていた。利息もあって、融資や借金もできる。つまり、銀行や金融機関はカードの数字だけを管理する管理会社となったのだ。後、各店のポイントカードなどにも対応されていて、お得なデビットカードのようなところがある様々な面に有効な身分証明書であった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる