ご近所STORYⅡ エレクトリックダンス【改訂版】

主道 学

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両想い

両想い 1

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 11月の半ば頃。
 日本という歯車が回り出した。
 僕はその中心にいるのだろうか?
 それとも、外側にいるのだろうか?

 ここは、僕の家。
 云話事帝都マンションの34階だ。
 晴美さんの暗殺計画を阻止できるのか、解らないが、今から丁度一週間後がその日だった。
 そこで、河守。九尾の狐。原田。夜鶴と晴美さんが集まっていた。後、犬。
「まずは、晴美さんの暗殺の阻止と、エレクトリック・ダンスの阻止ね」
 九尾の狐はキッチンから砂糖を大量に入れたコーヒーを持ってきていた。夜鶴や河守は各々好きな飲み物をテーブルで飲んでいる。 
 犬はテーブルの下で、大きな肉にありつきながらマルカの足元で臭いを嗅いで、しきりに首を傾げていた。

「アンジェたちが居ない今。俺たちだけで何とかしないと……」
 原田は買い換えたお洒落な度なしレンズのメガネを掛けて、紅茶を飲んでいた。少し震えが伝わる声色だ。何故ならアンジェたちの修理は容易ではないのだ。
「いくら私でも、暗殺の情報は盗めなかも知れないわね……結局、私たちハッカーは情報を盗めないと何もできない……頼りないわね……」
 九尾の狐は俯くと溜息を吐いた。
「俺は晴美さんに取り敢えずは、くっ付いているよ」
 夜鶴は緊張した表情を崩さなかった。
「問題……。 C区が何をしてくるか? 毒殺や銃撃や、それともロケットランチャーか!?」
 河守が不安を払拭しそうな声を、オレンジジュースを持ちながら声を張り出した。
「うーん……。毒殺が無理なら銃撃……それも無理ならロケットランチャーでは?」

 僕は考えた。
 河守が僕の顔を覗いて、ニッと笑った。
 僕は何故かドギマギした。

「そう、その通りよ。敵は十重二十重と狙ってくるわね。何故ならあちらも未来の日本のために動いているのよ」
 河守は人差し指を僕たちの前に挙げ、
「みんなで協力しないと防げない!! アンジェたちがいればなおいいのに……。さすがにロケットランチャーはどうしようもないわ」
 河守はニッと笑って続けた。
「でも、最悪。こっちには藤元さんがいるわ。例え全員死んでも生き返ることができる」
 みんなの緊張が少しだけ綻んだ。
「確かに……そうだよ……そうそう」
 一番緊張していた原田が気楽な口調になった。
「あ、でも。エレクトリック・ダンスはどうするんだ?」
 原田の一言で、僕は日本の将来は晴美さんを守るだけでいいのだが、それだけではないことに気が付いた。
 確かに、晴美さんを助けても、何かの策でエレクトリック・ダンスが発足すれば、僕たちの負けだ。

 そういえば、向こうには白いスーツで20代くらいの政治家の男がいたのだ。敵が選挙戦を挙げるとまずいかもしれない。
「そうですね……」
 晴美さんが珍しく歯切れの悪い言い方をした。
 けれど、すぐに僕の方に首を向けた。
「あ、テレビ点けてください。多分、云話事町TVの時間です」
 晴美さんが腕時計を見て、キッチンのパノラマテレビを僕に点けさした。

「こんばんはッス! 云話事町TVの時間ッス!」
 美人のアナウンサーはピンクのマイクを握っている。
 背景はB区の薄暗いビルディングが聳えている。
「今は藤元さんはあの後、空へ飛んで行って今日はお休みッス」
 美人のアナウンサーは一人だけで話し出した。
 周囲の通行人もこちらをちらほらと見ていた。
「これから、日本は大きな転換機を迎えます。何故なら日本全土にスリー・C・バックアップ。C区の全面的技術提供案が可決され、その発足が一週間後です。一体どうなるんですかね……藤元さん?」
 美人のアナウンサーは隣にピンクのマイクを向けた。
 しかし、そこには空気のみ。

「あ……いないッスね。空に飛んでってしまったッスね……」
 残念そうな美人のアナウンサーは、仕方なくピンクのマイクを握り。
「番組の情報では、今は4千万人の老人の介護をアンドロイドのノウハウがやるってことだけが伝わってきています。現奈々川首相のことだから、きっと、いい方向に向かう政策を実施するはずです。きっと……。確かに今の時代は老人が4千万人もいて人々の老後のことを考えると、どうしても暗くなります。労働力も甚だしく落ち込んで、未来は暗いように見える。だから、仕方がないのですね。後は、どれだけ人間を尊重することが出来るかです。お年寄りも命ある人間ッスからね。私は現奈々川首相ならきっと大丈夫だとは思います……きっと、人間的な政策を発足しますよ!!」
 美人のアナウンサーは微笑んだ。
 周囲の通行人もいつの間にか、美人のアナウンサーの方を見つめていた。
「きっと、日本の将来は大丈夫。それでは、今日の運勢コーナーと天気予報です……って、藤元がいないッス!」

 番組はそこで終わった。
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