ご近所STORYⅡ エレクトリックダンス【改訂版】

主道 学

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戦争

戦争 6

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 青緑荘の前で車が止まると、島田たちが騒いでいた。
 晴れ渡った空の下で、島田は吠えていた。

「今からC区に行ってくる!! C区は俺たちだけでぶっ潰すから!! 雷蔵さんは休んでいてくれ!! 夜鶴!! 田場さんと津田沼も呼ぼうぜ!! 今から壊滅してやるぜーーーー!!」
 弥生も、
「私も戦うわ!!」
 軽量化されたマシンガンを振り回した。

 晴美さんは車から降りると、みんなを静かに説得した。
「皆さん。 憎しみでは、何も生み出しません……。私が何とかします」
「でもよー!!」
 島田は食い下がる。
 島田の後ろには遠山と淀川が静かに闘志を湧かせていた。
「まあまあ、今はアンジェとマルカとヨハを直そうよ……」
 原田は震えて粉々になったメガネをいじる。
「雷蔵さん。生き返ったはいいけど……エレクトリック・ダンスはどうしたの?」
 河守は心配した顔で、僕の顔を覗いた。
「大丈夫だ……。これから、なんとかするよ……」

 僕は自信のある声色で言おうとしたが、何故か赤面していた。
 下を俯き、ぼそぼそとした言葉が流れた。

「そうね。私の力が必要ならいつでも言ってね、勿論タダでいいわよ」
 九尾の狐が微笑んだ。
「……ハハッ」
 僕は嬉しさを隠せないでいた……こんな気持ちは生まれて何回目だろうか?いや、生まれて初めてではないだろうか?
「そうですね……まずは、私たちがC区へ向かって、説得と協力を仰ぎます。そして、アンジェたちを修理してもらいましょう」
 晴美さんがみんなを説得すると、
「でも、晴美さん。危険がかなりあると思う……」
 夜鶴が制した。

 僕の肌になじんだマカロフは重犯罪刑務所で、取り上げられてしまった。新しい銃が必要だろう。
 僕が島田に声をかけて頼もうとしたら、
「いいえ。銃は必要ではありません」
 晴美さんが厳しい声を発した。
「では、A区の人たちと河守さんたちはここで待っててください。私たちだけで行きます」
 晴美さんがそう言うと、羽田の運転する黒のベンツに乗った。

 C区へと着くと、晴美さんは工場を目指した。
 昼間の太陽のもと。
 巨大な会社が見えた。
 アンドロイド製造業を受け持つC区で有数の大企業だ。そこで、搬送したアンジェたちの修理を頼んだ。
 相手はにこやかにしているが、ひどい緊張を隠しているようだった。
 それもそのはず、こちらの戦力は大半がアンジェたちだ。
 しばらく、受付で社長らしき人物と晴美さんは夜鶴の傍で話していた。
 社長らしい人物は緊張を隠して、大きく頷いてくれた。
 これで、アンジェたちも大丈夫だろう。
 後は晴美さんの暗殺を阻止すれば。

 でも、きっとだ。……そう、きっとだ…………。

「そういえば、晴美さんは何故、スリー・C・バックアップの政策を可決したのかな?」
 車中。
 僕は晴美さんに聞いた。
「実は……スリー・C・バックアップは、ノウハウを老人の介護が出来るプログラムをアップデートし、ノウハウを介護福祉に大量導入をするだけではなかったのです……」
「え……?」
 僕は聞き返した。
「雷蔵さん……。あなたの父親が介護を必要とした場合……どうします?」
「僕の父はもう死んでしまった……。けれど、確かに人に頼むか。それが無理ならアンドロイドを雇うだろう」

 晴美さんは悲しく笑って、
「ごめんなさいね……。でも、その通りです。そこで、アンドロイドのノウハウには老人の介護が出来る程の繊細な動きが、今はできません。そこで、老人の介護や援助もできるアップデートプログラムのスリー・C・バックアップを可決したのですが、問題はその後なのです。介護をするのは家族や雇った人たちだけです。けれど、その人達も後で介護や援助が必要になります。ですから、ノウハウを一家に一体だけ人間のサポートするために無料で置いておくのが、私の考えた理想なのです。それは、何十年。何百年と人間をサポートすることができる。近未来の理想。それが私がスリー・C・バックアップを可決した意味なのです」
 晴美さんは、やっぱり人間だった。
「そう……なんですね……よかった…………。それと……僕も人間になったようだ…………」
 晴美さんはそこで、ニッコリと微笑んだ。 
 僕には、晴美さんの魅力的な笑顔の秘密がチャーミングなホクロにあることを知った。
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