五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

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第396話:太陽の王女、九番目の誓い

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 その日、聖域は夜明けと共に、これまでにない祝祭の熱気に包まれた。
 街道にはエルドリア王国やメイプルウッド、さらには近隣の獣人集落からも多くの祝い客が訪れ、アキオ連邦の旗が風にはためいている。
 今日は、聖域のアイドルであり、アキオが大切に見守り続けてきたエルドリアの王女・イザベラが、ついに二十歳を迎え、正式に妻となる日だ。

 新・中央館の広大な庭園、その中央にそびえる「生命樹」の下に、誓いの祭壇が設けられていた。
 参列者たちの期待に満ちた視線が集まる中、ファンファーレが高らかに響き渡る。

「新婦、イザベラ・エルドリア様の入場です!」

 光の絨毯が敷かれた道を、花嫁が静かに歩みを進める。
 その姿を見た瞬間、会場から感嘆のため息が漏れた。
 純白のシルクに、聖域の金糸で太陽の刺繍が施されたウェディングドレス。それはかつてアキオがドワーフたちと協力して作った、彼女のための最高傑作だ。
 だが、何よりも輝いていたのは、彼女自身の笑顔だった。
 かつては光を失い、怯えていた瞳は今、希望と愛に満ち溢れ、まっすぐにアキオを見つめている。

「……綺麗だ、イザベラ」

 祭壇の前で待っていたアキオは、思わず本音を漏らした。
 幼かった少女が、数年の時を経て、誰よりも美しい大人の女性へと成長した姿。その重みに、胸が熱くなる。

「アキオ様……」

 イザベラはアキオの前まで歩み寄ると、幸せを噛みしめるように微笑んだ。

「今日まで、待っていてくださってありがとうございます。……長かったですか?」

「いや。君が大人になっていく姿を見守るのは、俺にとって何よりの幸せだったよ。でも……これ以上は、もう待てないな」

 アキオの言葉に、会場から温かい笑い声と冷やかしの声が上がる。
 アキオはイザベラの手を取り、参列者たちに向かって力強く宣言した。

「俺、アキオは、ここに誓う!
 かつて交わした約束通り、成人を迎えた彼女を生涯の伴侶とし、その笑顔を死ぬまで守り抜くことを!
 彼女は俺の九番目の妻であり、かけがえのない宝だ!」

「わたくし、イザベラも誓います。
 暗闇の中にいた私を見つけ出し、光を与えてくださった貴方様を、生涯愛し、支え、共に歩んでいくことを。……この命ある限り、貴方様だけの太陽であり続けます」

 二人の唇が重なる。
 それは、長い「保護者」と「被保護者」の関係が終わり、対等な「夫婦」としての時間が始まった瞬間だった。
 ワァァァァッ!! と割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こる。
 空にはリザたちが用意した魔法の花火が打ち上がり、青空に祝福の花を咲かせた。

   ◇

 その幸せな光景を、少し離れた席から見つめる一人の少女がいた。
 古代皇女、セフィアだ。
 彼女は、輝くイザベラと、それを囲むシルヴィアたち八人の妻の姿を、食い入るように見つめていた。

(……あんなに、たくさんの方が……一人の男性を愛して、みんなで笑い合っている……)

 古代の常識では、あるいは彼女が知る王族の歴史では、複数の妻がいれば争いが起きるのが常だった。
 だが、ここでは違う。
 シルヴィアがイザベラのドレスの裾を直し、アウロラが涙を拭いてやり、キナが背中を叩いて祝福している。そこには「独占」ではなく「共有」される愛の形があった。

「……素敵。……なんて、温かいの……」

 セフィアは自分の胸に手を当てた。
 数千年の孤独を耐え抜いた彼女にとって、その「輪」はあまりにも眩しく、そして羨ましかった。
 自分は助け出された。命も救われた。
 でも、あの「家族の輪」の中に、自分は入ることができるのだろうか? 古代の遺物である自分が、あんなふうに笑う資格があるのだろうか?

 そんなセフィアの心情を察したのか、隣に座っていたアヤネが、そっと彼女の肩に手を置いた。

「セフィアちゃん。……貴女も、思うところがおありのようですね」

「え……? い、いえ、私は……ただ、綺麗だなと……」

「ふふ。アキオさんの周りでは、素直になるのが一番の近道ですよ」

 アヤネは意味深に微笑むと、祭壇のアキオに向かって小さく目配せをした。
 宴はまだ始まったばかり。
 九番目の誓いが終わった今、物語は最後のピース――十番目の奇跡へと動き出そうとしていた。
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