五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

文字の大きさ
60 / 387

第60話:森からの新たな仲間、家畜導入プロジェクト始動!

しおりを挟む
「生命の湯」の賑わいも日常となり、村人たちの生活に潤いと活気をもたらしていた。アキオは、町のさらなる安定と発展のために、次なる一手として「家畜の導入」を本格的に検討し始めていた。肉、卵、乳、そして労働力。家畜がもたらす恩恵は計り知れない。

 アキオは、シルヴィア、アヤネ、キナ、そして森での狩猟や動物の知識に長けた村の者たちを集め、家畜導入に関する会議を開いた。
「皆も知っての通り、俺たちの食料はまだ狩猟や採集、そして畑作に頼っている部分が大きい。だが、天候に左右されず、より安定して肉や卵、乳などを得るためには、やはり家畜を飼うのが一番だと思うんだ」
 アキオの提案に、皆、真剣な表情で頷く。

「問題は、どんな家畜を、どこから手に入れるか、だな」ドルガンも話に加わる。
「この森には、野生の猪や鹿に似た動物はいるが、あれらを家畜化するのは容易ではないだろう」レオノーラが冷静に分析する。

 すると、キナが手を挙げた。
「だんな、それならあたしに心当たりがあるよ! あたしら獣人の一部族は、森で『森鶏(もりニワトリ)』っていう、ちょっと小ぶりだけど卵をよく産む鳥や、『岩山羊(いわヤギ)』っていう、険しい場所でも平気で乳も肉もそこそこいけるヤギを飼いならしてるところがあるんだ。もしかしたら、彼らと交渉して、何頭か分けてもらえるかもしれないぜ!」
 キナの情報は、まさに光明だった。

 アキオは、キナの案内で、その獣人の集落との接触を試みることを決意。数日後、アキオ、シルヴィア、キナ、そして護衛としてレオノーラを加えた一行が、ささやかな手土産(アキオたちが作った鉄のナイフや、シルヴィアの薬草、アヤネの焼いたパンなど)を持って、キナが言う獣人の集落へと向かった。

 キナの故郷とは別の、しかし友好的な関係にあるというその集落は、アキオたちの村とはまた異なる、自然と調和した独自の文化を持っていた。最初は警戒していた獣人たちも、キナの顔と、アキオたちの誠実な態度に少しずつ心を開き、長老との面会が許される。
 アキオは、自分たちの村の成り立ちや、家畜を譲ってほしい理由を正直に語った。長老は、アキオの言葉と、彼が持つ不思議な雰囲気(生命樹や聖獣の加護を感じ取ったのかもしれない)に何かを感じ取ったのか、熟考の末、
「よかろう。キナの顔もある。それに、お前さんたちの村からは、何か新しい風を感じる。森鶏のつがいと、若い岩山羊を数頭、分け与えよう。ただし、代わりにそちらの『鉄の刃物』をいくつか譲ってはもらえまいか。我々も、森での暮らしには良質な刃物が不可欠なのでな」
 と、物々交換の形で家畜を譲ってくれることになった。

 数日後、アキオたちの村に、初めての家畜――コケコッコーと元気に鳴く数羽の森鶏と、メェーと可愛らしい声で鳴く数頭の岩山羊――がやってきた。子供たちはもちろん、大人たちも初めて間近で見る家畜に大喜びだ。
 アヤネとミコ、ユメは早速、森鶏の世話を率先して買って出た。アルトとケンタは、ドルガンに教わりながら、山羊たちのための頑丈な柵や小屋作りに精を出す。
 シルヴィアは、家畜たちの健康管理のため、彼女たちに適した薬草や飼料について研究を始め、キナは、家畜の世話の仕方や乳の搾り方などを、獣人の知識を元に村人たちに教えて回った。

 アキオたちの村に、新たな生命の息吹が加わった。これらの家畜が、やがて村の食生活を豊かにし、畑を耕す助けとなり、そして子供たちにとっては命の尊さを学ぶ貴重な機会となるだろう。森の奥の小さな共同体は、また一つ、確かな成長の階段を上り始めたのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

スキル『倍加』でイージーモードな異世界生活

怠惰怠man
ファンタジー
異世界転移した花田梅。 スキル「倍加」により自分のステータスを倍にしていき、超スピードで最強に成り上がる。 何者にも縛られず、自由気ままに好きなことをして生きていくイージーモードな異世界生活。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流
ファンタジー
勇者パーティを追放されたおっさん冒険者ガリウス・ノーザン37歳。 しかし彼を追放した筈のメンバーは実はヤバいほど彼を慕っていて…… テンプレ的な展開を逆手に取ったコメディーファンタジーの連載版です。

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした。今さら戻れと言われても、もうスローライフ始めちゃったんで

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、 優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、 俺は必死に、置いていかれないようについていった。 自分には何もできないと思っていた。 それでも、少しでも役に立ちたくて、 誰にも迷惑をかけないようにと、 夜な夜な一人でダンジョンに潜り、力を磨いた。 仲間を護れるなら… そう思って使った支援魔法や探知魔法も、 気づかれないよう、そっと重ねていただけだった。 だけどある日、告げられた。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、優しさからの判断だった。 俺も分かっていた。だから、何も言えなかった。 こうして俺は、静かにパーティを離れた。 これからは一人で、穏やかに生きていこう。 そう思っていたし、そのはずだった。 …だけど、ダンジョンの地下で古代竜の魂と出会って、 また少し、世界が騒がしくなってきたようです。 ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

処理中です...