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第106話:貴族への報告、聖樹の恵みと村長の苦悩
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森からの来訪者たちと避難民の感動的な再会から数日が過ぎた。アキオの町で英気を養い、同胞たちの無事を確認した探索隊のリーダーは、アキオに深々と頭を下げた。
「村長様、そして皆様には、言葉では言い尽くせぬほどのお世話になりました。我々は一度、我らが領主様の元へ戻り、この奇跡的な再会と、貴村の素晴らしさを報告し、今後の支援についてご相談申し上げる所存です」
アキオは頷き、彼らの道中の安全を祈って食料や薬草を分け与えた。
「どうかお気をつけて。そして、貴方々の領主様にもよろしくお伝えください。我々は、この地で平和に暮らすことを願っております」
こうして、探索隊はアキオの町への感謝と再訪の約束を胸に、彼らの領地へと出発していった。彼らが貴族に何を報告し、それが今後アキオの町にどのような影響をもたらすのか、それはまだ未知数だが、新たな交流の道が開かれたことは確かだった。
一方、アキオの心は、聖霊様のことで揺れていた。妻たちとの話し合いでも結論が出なかったあの日以来、アキオは改めて聖霊様と二人きりで話す機会を設けていた。
生命樹の下、変化後の美しい姿で佇む聖霊様に、アキオは真摯な眼差しを向けた。
「聖霊様…貴女が俺やこの村、そして森のことを深く愛し、その未来を真剣に考えてくれていることは、痛いほど伝わっています。貴女のその純粋な想いは、俺も…しっかりと受け止めたいと思っています」
聖霊様は、アキオの言葉に静かに耳を傾けていた。その瞳には、深い愛情と期待の色が浮かんでいる。
アキオは続けた。「ですが…貴女が子を成すことで、その聖なる力を失うかもしれないという危険だけは…どうしても俺には容認できません。貴女に、そんな思いをさせるわけにはいかない」
それは、聖霊様自身を心から大切に思うアキオの、偽らざる本心だった。
聖霊様は、アキオの言葉に微かに眉を寄せたが、彼の瞳の奥にある深い優しさと苦悩を感じ取ったのか、怒るでもなく、悲しむでもなく、ただ静かにアキオを見つめ返した。
「…アキオ。そなたの優しさは、時に残酷じゃのぅ。じゃが、わらわの想いも、そう易々と諦められるものではないぞ?」
その声には、変わらぬ決意と、アキオへの変わらぬ愛情が込められていた。アキオは、聖霊様の願いを叶えたい気持ちと、彼女を危険に晒したくない気持ちの間で、再び深く苦悩するのだった。
そんな中、アキオたちの町には、生命樹からの新たな「実り」がもたらされていた。聖霊様が実を食したことによる直接的な影響なのか、あるいは生命樹そのものがさらに活性化したのか、生命樹の周囲の土地が目に見えて肥沃になり、植えられていた薬草や野菜が以前にも増して生き生きと育ち始めたのだ。さらに、生命樹には新たな蕾がいくつも膨らみ始めており、再び「恵みの実」がもたらされる日もそう遠くないことを予感させた。この聖なる木の恩恵は、確実に町全体へと広がりつつあった。
町の発展も着実に進んでいた。アヤネやセレスティーナが中心となって進めていた保育施設「生命樹の若葉園」は、ドルガンたちの尽力もあってほぼ完成し、近々子供たちの元気な声が響き渡ることだろう。村の母親たちは、安心して子供を預けられる場所ができると、手を取り合って喜んでいた。
そして、アキオが試験的に栽培していた大豆が、ついに初めての収穫期を迎えた。黄金色に実った豆の房を手に、アキオは感慨無量だった。
「よし! これで味噌と醤油、そして豆腐作りに挑戦だ!」
アキオの号令一下、中央館の厨房では、故郷の味を再現するための試行錯誤が始まった。初めて見る大豆という食材に、村人たちも興味津々で、アキオの手元を覗き込んでいる。
聖霊様の想いと、彼女を案じるアキオの苦悩。
貴族への報告に向かった来訪者たちがもたらすであろう、新たな風。
そして、生命樹の恵みと共に着実に発展していくアキオの町。
アキオは、聖霊様のリスクを回避しつつ、彼女の壮大な願いである「森の創成」を叶える別の道はないものか、町の未来と共に、その答えを模索し始めていた。
(第106話 了)
「村長様、そして皆様には、言葉では言い尽くせぬほどのお世話になりました。我々は一度、我らが領主様の元へ戻り、この奇跡的な再会と、貴村の素晴らしさを報告し、今後の支援についてご相談申し上げる所存です」
アキオは頷き、彼らの道中の安全を祈って食料や薬草を分け与えた。
「どうかお気をつけて。そして、貴方々の領主様にもよろしくお伝えください。我々は、この地で平和に暮らすことを願っております」
こうして、探索隊はアキオの町への感謝と再訪の約束を胸に、彼らの領地へと出発していった。彼らが貴族に何を報告し、それが今後アキオの町にどのような影響をもたらすのか、それはまだ未知数だが、新たな交流の道が開かれたことは確かだった。
一方、アキオの心は、聖霊様のことで揺れていた。妻たちとの話し合いでも結論が出なかったあの日以来、アキオは改めて聖霊様と二人きりで話す機会を設けていた。
生命樹の下、変化後の美しい姿で佇む聖霊様に、アキオは真摯な眼差しを向けた。
「聖霊様…貴女が俺やこの村、そして森のことを深く愛し、その未来を真剣に考えてくれていることは、痛いほど伝わっています。貴女のその純粋な想いは、俺も…しっかりと受け止めたいと思っています」
聖霊様は、アキオの言葉に静かに耳を傾けていた。その瞳には、深い愛情と期待の色が浮かんでいる。
アキオは続けた。「ですが…貴女が子を成すことで、その聖なる力を失うかもしれないという危険だけは…どうしても俺には容認できません。貴女に、そんな思いをさせるわけにはいかない」
それは、聖霊様自身を心から大切に思うアキオの、偽らざる本心だった。
聖霊様は、アキオの言葉に微かに眉を寄せたが、彼の瞳の奥にある深い優しさと苦悩を感じ取ったのか、怒るでもなく、悲しむでもなく、ただ静かにアキオを見つめ返した。
「…アキオ。そなたの優しさは、時に残酷じゃのぅ。じゃが、わらわの想いも、そう易々と諦められるものではないぞ?」
その声には、変わらぬ決意と、アキオへの変わらぬ愛情が込められていた。アキオは、聖霊様の願いを叶えたい気持ちと、彼女を危険に晒したくない気持ちの間で、再び深く苦悩するのだった。
そんな中、アキオたちの町には、生命樹からの新たな「実り」がもたらされていた。聖霊様が実を食したことによる直接的な影響なのか、あるいは生命樹そのものがさらに活性化したのか、生命樹の周囲の土地が目に見えて肥沃になり、植えられていた薬草や野菜が以前にも増して生き生きと育ち始めたのだ。さらに、生命樹には新たな蕾がいくつも膨らみ始めており、再び「恵みの実」がもたらされる日もそう遠くないことを予感させた。この聖なる木の恩恵は、確実に町全体へと広がりつつあった。
町の発展も着実に進んでいた。アヤネやセレスティーナが中心となって進めていた保育施設「生命樹の若葉園」は、ドルガンたちの尽力もあってほぼ完成し、近々子供たちの元気な声が響き渡ることだろう。村の母親たちは、安心して子供を預けられる場所ができると、手を取り合って喜んでいた。
そして、アキオが試験的に栽培していた大豆が、ついに初めての収穫期を迎えた。黄金色に実った豆の房を手に、アキオは感慨無量だった。
「よし! これで味噌と醤油、そして豆腐作りに挑戦だ!」
アキオの号令一下、中央館の厨房では、故郷の味を再現するための試行錯誤が始まった。初めて見る大豆という食材に、村人たちも興味津々で、アキオの手元を覗き込んでいる。
聖霊様の想いと、彼女を案じるアキオの苦悩。
貴族への報告に向かった来訪者たちがもたらすであろう、新たな風。
そして、生命樹の恵みと共に着実に発展していくアキオの町。
アキオは、聖霊様のリスクを回避しつつ、彼女の壮大な願いである「森の創成」を叶える別の道はないものか、町の未来と共に、その答えを模索し始めていた。
(第106話 了)
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