五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

文字の大きさ
126 / 400

第126話:帰還の報告と聖女の席次

しおりを挟む
 ヴァルト子爵領での一週間の滞在を終え、アキオ、シルヴィア、アウロラ、ドルガン親方、そしてケンタとユメの一行は、数日間の帰路を経て、懐かしいアキオの町へと無事に戻ってきた。町の入り口では、アヤネをはじめとする妻たち、そして多くの町民が、彼らの帰還を今か今かと待ちわびていた。
「アキオ様! お帰りなさいませ!」
 少しお腹が大きくなったアヤネが、喜びの表情でアキオに駆け寄る。キナ、セレスティーナ、レオノーラも、それぞれの子供を抱いたり、手をつないだりしながら、笑顔で一行を迎えた。ヘルガもまた、ドルガン親方の帰りを嬉しそうに見つめている。町全体が、彼らの無事な帰還を祝う温かい空気に包まれていた。

 その日の夕食は、中央館の広間で、派遣団の帰還を祝うささやかな宴となった。アキオは、旅の疲れも見せず、ヴァルト子爵領での出来事を詳しく皆に報告した。
 アレクサンダー子爵の誠実な人となりと、アキオの町への深い感謝の念。子爵領の豊かな都市の様子と、そこでアキオ自身が学んだこと。そして何よりも、アウロラが子爵領と、悲劇に見舞われたバルツァー男爵領の跡地に、特別な生命樹の種を植え付け、再生への大きな希望を灯してきたこと。
 アルトとミコが、元気に交換留学の第一歩を踏み出したこと。ケンタとユメが、今後定期的な連絡役として両領地を繋ぐ役割を担うことになったこと。そして、子爵領から産婆さんたちがアキオの町へ学びに来ることや、具体的な交易の話し合いが進んだことなど、報告される一つ一つの出来事に、妻たちも町の代表者たちも、真剣に耳を傾け、時には感嘆の声を上げ、そして新たな未来への期待に胸を膨ませた。

 数日後、町の運営も落ち着きを取り戻し、アキオ家の妊婦たち――アヤネ、キナ、セレスティーナ、レオノーラ、そしてヘルガ――は、それぞれの体調に気を配りながらも、穏やかで幸せな日々を送っていた。アウロラもまた、「暁の御子」をその身に宿し、アキオとの「聖なる営み」を続ける中で、その神聖な母性は日ごとに輝きを増していた。彼女のお腹の御子は、まだ目に見えるほどの大きさではないが、アウロラと、そして時にはアキオにも、力強い生命の波動を伝えてくることがあった。

 そんなある日、シルヴィアが妻たちを集めて「妻会」を開いた。議題は、アウロラのことであった。アキオも同席している。
「皆様、本日はアウロラ様…いえ、アウロラの、私たちの家族における正式な立場について、皆で話し合いたいと思い、お集まりいただきました」
 シルヴィアの言葉に、皆が静かに頷く。アウロラは、アキオの子を宿し、既に家族にとってかけがえのない存在だが、その神聖な出自と特別な役割を考えると、既存の「夫人」という枠組みに当てはめるべきか、あるいは別の形が良いのか、皆がどこかで考えていたことだった。
 アウロラ自身は、少し戸惑ったような、しかし穏やかな表情でその話し合いを見守っている。
「アウロラは、アキオ様にとって、そしてこの町にとって、唯一無二の聖女様です。ですが、同時に、アキオ様を深く愛し、その御子を宿す、私たちと同じ一人の女性でもありますわ」セレスティーナが静かに言う。
「そうだぜ! アウロラ姉ちゃんは、もう俺たちの大事な家族だ! 難しいことは分かんねえけどよ!」キナが快活に笑う。レオノーラも力強く頷いた。
 アヤネは、アキオとアウロラを交互に見つめ、そして優しく微笑んだ。「アキオ様がアウロラ様を大切に想い、アウロラ様がアキオ様を深く愛しておられる。そして、私たち家族皆が、アウロラ様を心から歓迎している。それが一番大切なことではないでしょうか」

 アキオは、妻たちの言葉一つ一つを噛み締め、そしてアウロラに向き直った。
「アウロラ…君がどう呼ばれたいか、どんな立場が心地よいか、それが一番だ。だが、俺の気持ちを言わせてもらうなら…君は、俺の大切な、かけがえのない妻の一人だよ」
 その言葉に、アウロラの瞳が潤んだ。
「アキオ…」
 シルヴィアが、その二人の様子を見て、静かに提案した。
「アウロラは、私たちの誰とも異なる、特別な存在です。ですから、序列としての『第六夫人』というよりも、彼女に相応しい、特別な敬称でお呼びするのはいかがでしょう。例えば…アキオ様の『聖なる光の妻』として、『光妃(こうひ)アウロラ様』と」
「光妃…」アキオがその響きを確かめるように呟く。暁光の聖女であり、アキオにとって希望の光でもあるアウロラに、それは相応しいように思えた。
 他の妻たちも、「光妃アウロラ様、素敵ですわ!」「いいじゃねえか、強そうで綺麗で!」「アウロラ様にぴったりです!」と口々に賛同した。
 アウロラは、涙を浮かべながら、深く頭を下げた。
「光妃…アウロラ。身に余る光栄です。アキオ、そして皆様…わらわを、家族として受け入れてくださり、本当に…ありがとう…」
 こうして、アウロラはアキオの「光妃」として、家族の中でその特別な席次を得ることとなった。それは、アキオ家の調和と愛の深さを示す、また一つの証となった。

 アキオの町では、新しい命の誕生への期待、外部世界との新たな交流への準備、そして家族の絆の再確認と、未来への確かな歩みが続いていた。アウロラの正式な家族入りは、この聖域に、さらなる祝福と安定をもたらすことだろう。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

家ごと異世界ライフ

もちもちほっぺ
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

処理中です...