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第156話:再生の光と秘書官の第一歩、そして聖母の刻(とき)
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神聖かつ濃厚な「前夜祭」の翌朝、アキオとシルヴィア、そして彼らに寄り添う白銀の成体聖霊獣は、祝福された苗と種を携え、夜明けの光の中、廃墟となった古い聖域へと出発した。そこは、かつてアウロラが「暁の御子」たちを産み落とし、そしてアキオが再生の鍵となる特別な植物を発見した、約束の地であった。
廃墟に到着すると、三者(聖霊獣もまた、その行動で明確な意思を示していた)は、アウロラが描いた再生の構想とシルヴィアの森の叡智、そしてアキオの「生命の祝福」と「調和」の力を結集させ、携えてきた聖なる植物たちを丁寧に、そして深い祈りを込めて大地に植え付けていった。 アキオが土に触れ、生命力を注ぎ込むと、乾いていたはずの土壌がみるみるうちに潤いを取り戻し、植えられた苗は瞬く間に根を張り、種からは力強い双葉が勢いよく顔を出す。シルヴィアが古代エルフの言葉で自然への呼びかけを行うと、周囲の木々や草花がそれに呼応するように微かにざわめき、聖霊獣がその場にいるだけで、廃墟を覆っていた淀んだ気が浄化され、清浄な生命エネルギーが満ちていく。 数時間に及ぶ神聖な作業の結果、廃墟の一角は、以前の荒涼とした姿が嘘のように、瑞々しい緑と力強い生命力に包まれた、小さなオアシスのような空間へと変貌を遂げていた。 「すごいな…本当に、生き返っているようだ」アキオが感嘆の声を漏らす。 「ええ、アキオ。あなたの力、アウロラの計画、そしてこの聖霊獣様のお導き…全てが調和した結果ですわね」シルヴィアも満足げに微笑む。 最初の再生作業を終えると、成体の聖霊獣は、その場に静かに留まる意思を示した。まるで、この再生が始まった聖地を自らが守り育て、軌道に乗るまで見届けると言わんばかりに。アキオとシルヴィアは、その聖獣の崇高な意思に感謝し、その場を後にしてアキオの町へと戻った。
それから、一月(ひとつき)半ほどの時が流れた。
廃墟の再生は、聖霊獣の守護と生命樹からの遠き祝福のもと、ゆっくりと、しかし確実に進んでいるようだった。アキオやシルヴィア、アウロラは時折その様子を遠くから確認し、その度に新たな生命の息吹を感じていた。
その間、アキオの町では、凛が本格的にアキオの「秘書官」としての役割を担い始めていた。彼女は、未亡人たちの「まとめ役」を他の信頼できる女性に正式に引き継ぎ、自らは中央館の一室に設けられた執務スペースで、アキオの指示のもと、町の運営に関する様々な情報の整理、ヴァルト子爵領や他のコミュニティ(もしあれば)との書簡の草案作成、そして「廃墟再生計画」の進捗記録や必要な資料の収集・分析といった仕事に、その類稀なる才覚を発揮していた。 最初は、アキオと二人きりで執務室にいることや、彼から直接指示を受けることに、まだ僅かな緊張と強張りを見せていた凛だったが、アキオが常に紳士的で、彼女の能力を尊重し、そして何よりも彼女の過去の傷に触れることなく、ただただ一人の有能な協力者として接する様に、彼女の心は少しずつ解きほぐされていった。「前夜祭」での衝撃的な体験と、その後に訪れた心身の劇的な変化もまた、彼女の中でアキオという存在、そしてこの町の持つ特異な「力」に対する認識を、大きく変えつつあった。彼女はまだ、それを恋心とは気づいていないが、アキオのために働くことに、静かな喜びと生きがいを感じ始めているのは確かだった。
町では、エルドリアへ向かった支援隊からの詳細な報告はまだ届いていないものの、道中順調であるとの短い連絡はヴァルト子爵経由で何度か入っており、セレスティーナとレオノーラは、その度に安堵の表情を浮かべていた。 聖獣の子たちは、時折、廃墟から戻ってくる成体の聖霊獣(彼らの間には、もはや親密な絆が生まれているようだった)と生命樹の周りで戯れ、その光景は町の子供たちにとっても日常の一部となっていた。 そして何よりも、アキオ家は、新たな誕生への期待で満ち溢れていた。アヤネの二人目のお腹も、キナの三人目のお腹も、もういつ生まれてもおかしくないほどに大きく、マーサや産婆見習いの未亡人たちは、万全の体制でその時を待っていた。アキオは、アサヒの時には経験できなかった「夫としての立ち会い」に、今度こそ臨むのだと、期待と緊張で胸を高鳴らせていた。
特にアヤネは、予定日が間近に迫り、その美しい顔には母となる喜びと、ほんの少しの不安が浮かんでいた。 「アキオ様…なんだか、アサヒの時よりも、お腹の子が元気に動いて、わたくしに早く会いたいと言っているような気がしますの…」 ある穏やかな昼下がり、アヤネが大きなお腹を愛おしそうにさすりながら、アキオにそう微笑みかけた。アキオがそのお腹にそっと手を当てると、確かに、力強い生命の胎動が伝わってくる。 「そうか…きっと、アサヒに負けないくらい元気な子が生まれてくるな。大丈夫、俺もシルヴィアも、皆がついている」 アキオがそう言ってアヤネを優しく抱きしめ、その額にキスを落とした、まさにその時だった。 「あっ…! アキオ様…! もしかしたら…今…!」 アヤネが、小さく息をのみ、アキオの腕をきゅっと強く握った。彼女の顔に、一瞬にして緊張の色が走り、そしてすぐに、抑えきれない喜びと、来るべき瞬間への覚悟が入り混じったような、美しい表情が浮かんだ。 アキオの町の聖域に、また一つ、新しい生命の誕生を告げる、聖母の刻(とき)が、静かに、しかし確実に始まろうとしていた。
廃墟に到着すると、三者(聖霊獣もまた、その行動で明確な意思を示していた)は、アウロラが描いた再生の構想とシルヴィアの森の叡智、そしてアキオの「生命の祝福」と「調和」の力を結集させ、携えてきた聖なる植物たちを丁寧に、そして深い祈りを込めて大地に植え付けていった。 アキオが土に触れ、生命力を注ぎ込むと、乾いていたはずの土壌がみるみるうちに潤いを取り戻し、植えられた苗は瞬く間に根を張り、種からは力強い双葉が勢いよく顔を出す。シルヴィアが古代エルフの言葉で自然への呼びかけを行うと、周囲の木々や草花がそれに呼応するように微かにざわめき、聖霊獣がその場にいるだけで、廃墟を覆っていた淀んだ気が浄化され、清浄な生命エネルギーが満ちていく。 数時間に及ぶ神聖な作業の結果、廃墟の一角は、以前の荒涼とした姿が嘘のように、瑞々しい緑と力強い生命力に包まれた、小さなオアシスのような空間へと変貌を遂げていた。 「すごいな…本当に、生き返っているようだ」アキオが感嘆の声を漏らす。 「ええ、アキオ。あなたの力、アウロラの計画、そしてこの聖霊獣様のお導き…全てが調和した結果ですわね」シルヴィアも満足げに微笑む。 最初の再生作業を終えると、成体の聖霊獣は、その場に静かに留まる意思を示した。まるで、この再生が始まった聖地を自らが守り育て、軌道に乗るまで見届けると言わんばかりに。アキオとシルヴィアは、その聖獣の崇高な意思に感謝し、その場を後にしてアキオの町へと戻った。
それから、一月(ひとつき)半ほどの時が流れた。
廃墟の再生は、聖霊獣の守護と生命樹からの遠き祝福のもと、ゆっくりと、しかし確実に進んでいるようだった。アキオやシルヴィア、アウロラは時折その様子を遠くから確認し、その度に新たな生命の息吹を感じていた。
その間、アキオの町では、凛が本格的にアキオの「秘書官」としての役割を担い始めていた。彼女は、未亡人たちの「まとめ役」を他の信頼できる女性に正式に引き継ぎ、自らは中央館の一室に設けられた執務スペースで、アキオの指示のもと、町の運営に関する様々な情報の整理、ヴァルト子爵領や他のコミュニティ(もしあれば)との書簡の草案作成、そして「廃墟再生計画」の進捗記録や必要な資料の収集・分析といった仕事に、その類稀なる才覚を発揮していた。 最初は、アキオと二人きりで執務室にいることや、彼から直接指示を受けることに、まだ僅かな緊張と強張りを見せていた凛だったが、アキオが常に紳士的で、彼女の能力を尊重し、そして何よりも彼女の過去の傷に触れることなく、ただただ一人の有能な協力者として接する様に、彼女の心は少しずつ解きほぐされていった。「前夜祭」での衝撃的な体験と、その後に訪れた心身の劇的な変化もまた、彼女の中でアキオという存在、そしてこの町の持つ特異な「力」に対する認識を、大きく変えつつあった。彼女はまだ、それを恋心とは気づいていないが、アキオのために働くことに、静かな喜びと生きがいを感じ始めているのは確かだった。
町では、エルドリアへ向かった支援隊からの詳細な報告はまだ届いていないものの、道中順調であるとの短い連絡はヴァルト子爵経由で何度か入っており、セレスティーナとレオノーラは、その度に安堵の表情を浮かべていた。 聖獣の子たちは、時折、廃墟から戻ってくる成体の聖霊獣(彼らの間には、もはや親密な絆が生まれているようだった)と生命樹の周りで戯れ、その光景は町の子供たちにとっても日常の一部となっていた。 そして何よりも、アキオ家は、新たな誕生への期待で満ち溢れていた。アヤネの二人目のお腹も、キナの三人目のお腹も、もういつ生まれてもおかしくないほどに大きく、マーサや産婆見習いの未亡人たちは、万全の体制でその時を待っていた。アキオは、アサヒの時には経験できなかった「夫としての立ち会い」に、今度こそ臨むのだと、期待と緊張で胸を高鳴らせていた。
特にアヤネは、予定日が間近に迫り、その美しい顔には母となる喜びと、ほんの少しの不安が浮かんでいた。 「アキオ様…なんだか、アサヒの時よりも、お腹の子が元気に動いて、わたくしに早く会いたいと言っているような気がしますの…」 ある穏やかな昼下がり、アヤネが大きなお腹を愛おしそうにさすりながら、アキオにそう微笑みかけた。アキオがそのお腹にそっと手を当てると、確かに、力強い生命の胎動が伝わってくる。 「そうか…きっと、アサヒに負けないくらい元気な子が生まれてくるな。大丈夫、俺もシルヴィアも、皆がついている」 アキオがそう言ってアヤネを優しく抱きしめ、その額にキスを落とした、まさにその時だった。 「あっ…! アキオ様…! もしかしたら…今…!」 アヤネが、小さく息をのみ、アキオの腕をきゅっと強く握った。彼女の顔に、一瞬にして緊張の色が走り、そしてすぐに、抑えきれない喜びと、来るべき瞬間への覚悟が入り混じったような、美しい表情が浮かんだ。 アキオの町の聖域に、また一つ、新しい生命の誕生を告げる、聖母の刻(とき)が、静かに、しかし確実に始まろうとしていた。
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