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第177話:大地の母、そして神狼の甘え
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荒くれ共の引き渡しまで、あと二日。アキオは、三人の妻たちとの温かい時間を経て、残すはキナとの一日となった。この日は、町の守護者とも言える聖獣の子供たちとの交流を通して、大地の力、そしてこの聖域の根源的な力を再確認する日にしようと考える。
アキオは、キナがよく聖獣の子供たちと過ごしている、町の外れの開けた場所へ向かう。そこでは、すでにキナが、以前よりも随分と成長した3体の聖獣の子たち――三匹とも同じ、銀色の毛並みで額に角を持つ、中型犬ほどの大きさの獣――と一緒にいた。
今日は特別に、町の子供たちがキナの許可を得て、聖獣の子供たちと触れ合っている。最初は恐る恐る近づいていた子供たちも、キナや聖獣の子供たちの優しい眼差しに安心し、楽しそうに戯れている。
「ほら、怖くねえよ。こいつらは、この町を守ってくれる優しい奴らだ。そっと、撫でてやんな」
キナがそう言って促すと、おずおずと伸ばされた子供の小さな手を、聖獣の一匹が、その大きな頭を優しくこすりつけるようにして受け止めた。
「わあ…!」
子供の顔に、ぱっと笑顔が咲く。キナは、別の体格の良い聖獣の背に、小さな子供をそっと乗せてやった。子供は、生まれて初めての体験に、怖さと嬉しさで奇声に近い歓声を上げる。その光景は、まさにこの聖域ならではの、人間と聖獣が共存する平和な象徴だ。キナは、猛々しい狩人であると同時に、全ての命を育む、この聖域の「大地の母」でもあった。アキオは、そんな彼女の姿を、深い愛情と誇らしさをもって見つめていた。
その日の夜。アキオは、シルヴィアの私室で、訪ねてきたキナと二人きりの時間を過ごしていた。
日中の、多くの子供や聖獣たちを率いる、頼もしい「ボス」としての雰囲気は、そこにはなかった。キナは、アキオの隣にちょこんと座ると、おもむろに、その服の裾を指でいじりながら、上目遣いでアキオを見上げた。
「…だんな。今日もお疲れさん」
その声は、いつもよりずっとか細く、どこか恥じらいを帯びている。
「ああ。キナこそ、子供たちの面倒、ありがとうな」
「…うん。…あのさ、だんな…」
「ん?」
「……今夜は…その……ずっと、わがまま、言ってもいいか…?」
普段、決して甘えることのない彼女からの、珍しい申し出。アキオは、彼女がこれから始まる試練を前に、自分なりの方法で不安と戦い、そして夫に心の繋がりを求めていることを瞬時に悟った。
「もちろんだ。今夜は、お前だけの、だんなだからな」
アキオがそう言って優しく頭を撫でてやると、キナの瞳からは、ぽろり、と大粒の涙がこぼれ落ちた。彼女は、アキオの胸に顔をうずめると、子供のように、しかし静かにしゃくり上げた。
「だんな…あたし…本当は、ちょっと怖いんだ。明日、悪い奴らがたくさん来るんだろ…? だんなや、皆に、何かあったらどうしようって…」
アキオは、そんな彼女の小さな背中を、ただ黙って、優しくさすり続けた。
その夜の二人の交わりは、キナが主導するいつものような、野生的な激しいものではなかった。彼女は、ただひたすらにアキオの温もりを求め、その腕の中で、守られることの安心感を確かめるように、甘く、そしてか細い声を漏らす。アキオもまた、そんな彼女の珍しい弱さと、自分にだけ見せてくれるいじらしいまでの純粋な愛情に応えるように、どこまでも優しく、そして丁寧に、彼女の全てを慈しんだ。それは、この町の「大地の母」が、一人の愛される「女」に戻る、二人だけの特別な夜だった。
やがて、キナが満ち足りた表情で穏やかな寝息を立て始めると、アキオは、その愛しい寝顔を見つめながら、決意を新たにした。
シルヴィアの知性、アウロラの神聖、アヤネの母性、そして、キナの強さと、その裏にあるこの純粋な愛情。この全てを守るためならば、俺はどんな困難にも立ち向かえる。
荒くれ共の引き渡しは、明日。アキオの心は、四人の妻たちとの絆によって、完全に整っていた。
アキオは、キナがよく聖獣の子供たちと過ごしている、町の外れの開けた場所へ向かう。そこでは、すでにキナが、以前よりも随分と成長した3体の聖獣の子たち――三匹とも同じ、銀色の毛並みで額に角を持つ、中型犬ほどの大きさの獣――と一緒にいた。
今日は特別に、町の子供たちがキナの許可を得て、聖獣の子供たちと触れ合っている。最初は恐る恐る近づいていた子供たちも、キナや聖獣の子供たちの優しい眼差しに安心し、楽しそうに戯れている。
「ほら、怖くねえよ。こいつらは、この町を守ってくれる優しい奴らだ。そっと、撫でてやんな」
キナがそう言って促すと、おずおずと伸ばされた子供の小さな手を、聖獣の一匹が、その大きな頭を優しくこすりつけるようにして受け止めた。
「わあ…!」
子供の顔に、ぱっと笑顔が咲く。キナは、別の体格の良い聖獣の背に、小さな子供をそっと乗せてやった。子供は、生まれて初めての体験に、怖さと嬉しさで奇声に近い歓声を上げる。その光景は、まさにこの聖域ならではの、人間と聖獣が共存する平和な象徴だ。キナは、猛々しい狩人であると同時に、全ての命を育む、この聖域の「大地の母」でもあった。アキオは、そんな彼女の姿を、深い愛情と誇らしさをもって見つめていた。
その日の夜。アキオは、シルヴィアの私室で、訪ねてきたキナと二人きりの時間を過ごしていた。
日中の、多くの子供や聖獣たちを率いる、頼もしい「ボス」としての雰囲気は、そこにはなかった。キナは、アキオの隣にちょこんと座ると、おもむろに、その服の裾を指でいじりながら、上目遣いでアキオを見上げた。
「…だんな。今日もお疲れさん」
その声は、いつもよりずっとか細く、どこか恥じらいを帯びている。
「ああ。キナこそ、子供たちの面倒、ありがとうな」
「…うん。…あのさ、だんな…」
「ん?」
「……今夜は…その……ずっと、わがまま、言ってもいいか…?」
普段、決して甘えることのない彼女からの、珍しい申し出。アキオは、彼女がこれから始まる試練を前に、自分なりの方法で不安と戦い、そして夫に心の繋がりを求めていることを瞬時に悟った。
「もちろんだ。今夜は、お前だけの、だんなだからな」
アキオがそう言って優しく頭を撫でてやると、キナの瞳からは、ぽろり、と大粒の涙がこぼれ落ちた。彼女は、アキオの胸に顔をうずめると、子供のように、しかし静かにしゃくり上げた。
「だんな…あたし…本当は、ちょっと怖いんだ。明日、悪い奴らがたくさん来るんだろ…? だんなや、皆に、何かあったらどうしようって…」
アキオは、そんな彼女の小さな背中を、ただ黙って、優しくさすり続けた。
その夜の二人の交わりは、キナが主導するいつものような、野生的な激しいものではなかった。彼女は、ただひたすらにアキオの温もりを求め、その腕の中で、守られることの安心感を確かめるように、甘く、そしてか細い声を漏らす。アキオもまた、そんな彼女の珍しい弱さと、自分にだけ見せてくれるいじらしいまでの純粋な愛情に応えるように、どこまでも優しく、そして丁寧に、彼女の全てを慈しんだ。それは、この町の「大地の母」が、一人の愛される「女」に戻る、二人だけの特別な夜だった。
やがて、キナが満ち足りた表情で穏やかな寝息を立て始めると、アキオは、その愛しい寝顔を見つめながら、決意を新たにした。
シルヴィアの知性、アウロラの神聖、アヤネの母性、そして、キナの強さと、その裏にあるこの純粋な愛情。この全てを守るためならば、俺はどんな困難にも立ち向かえる。
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