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第188話:長距離走行試験と、アキオの新たな力
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魔導車の初の走行テストから数日後。アキオ、凛、そしてキナの三人は、エルドリアへの旅を想定した、本格的な長距離走行試験に臨んでいた。今回の目的は、単に走ることではない。一日中走り続けた際の、動力炉の安定性、各部品の耐久性、そして何よりも「魔力バッテリー」のエネルギー効率(燃費)を正確に計測することにあった。
「だんな、すっげえな、これ! 全然音がしねえから、森の獣たちもギリギリまで気づかねえや!」
後部座席で周囲を警戒していたキナが、興奮した声で言う。彼女の優れた聴覚をもってしても、魔導車の駆動音は、風の音に紛れてしまうほど静かだった。
「凛殿、計器の数値はどうだ?」
操縦席のアキオが尋ねると、助手席の凛は、手元の羊皮紙に数値を書き込みながら、冷静に、しかしその声には確かな手応えを滲ませて答えた。
「はい、アキオ様。現在、安定した速度での巡航時におけるエネルギー消費量は、理論値をわずかに下回る、極めて優秀な数値を維持しています。サスペンションも完璧に機能しており、これほどの悪路でも、車体への衝撃は最小限です」
彼女の言葉通り、魔導車は森の中に続く轍の深い道を、まるで舗装路を走るかのように滑らかに進んでいく。
一行は、目的地としていた「荒くれ共」の引き渡し場所の近くにある大きな岩まで到達すると、そこで一度休憩を取った。
「いやあ、大したもんだな! これなら、どんな奴らが追いかけてきても、ぶっちぎりで逃げられるぜ!」
キナは、魔導車から降りると、その車体をバンバンと叩きながら快活に笑う。
「キナさん、あまり強く叩かないでくださいまし。精密な魔力回路に影響が出ます」
凛が、少しだけ眉をひそめて注意する。そのやり取りを見て、アキオは微笑んだ。理論派で冷静な凛と、感覚派で行動的なキナ。正反対に見える二人だが、この魔導車開発という共通の目標のもと、不思議と良いコンビになりつつあった。
順調にテストを続けていたが、帰り道、町の近くまで戻ってきたところで、動力炉のエネルギー残量を示す計器の光が、急速に弱くなっていく。魔導車は速度を失い、森の途中で完全に沈黙した。
「申し訳ありません、アキオ様…! 帰り道で速度を上げたのが、計算外のエネルギー消費を招いたようです…。私の、計算がまだ…甘かったようです…!」
凛は、悔しそうに唇を噛んだ。
「まあまあ、そう自分を責めるな、凛殿。試作機にトラブルはつきものだ。むしろ、この段階で課題が見つかって良かったじゃないか」
アキオは彼女を慰めながらも、内心では冷や汗をかいていた。ここから町まで歩いて戻ることはできるが、この巨大な鉄の塊をどうやって運ぶか。
(…待てよ。動力源は、俺の力と共鳴していた…。なら、あるいは…)
アキオの脳裏に、一つの可能性が閃いた。
「凛殿、キナ。少し、試してみたいことがある」
アキオは、動力炉の炉心ケースに直接手を触れると、意識を集中させた。そして、自らの「生命の祝福」の力を、消耗しきって光を失った「魔力バッテリー」に向かって、ゆっくりと注ぎ込んでいった。アウロラが聖なるエネルギーを『充填』したのとは違う。アキオ自身の、生命そのもののエネルギーを、直接分け与えるのだ。
すると、奇跡が起きた。
光を失っていたバッテリーの生命樹の枝が、アキオの力に呼応し、再び穏やかな乳白色の光を灯し始めたのだ。
「これは…!?」凛が息をのむ。
計器のエネルギー残量が、ゆっくりと、しかし確実に上昇していく。10%、15%、20%…。アウロラが丸一日かけて行う再充填ほどではないものの、町まで帰り着くには十分すぎるほどのエネルギーが、ものの数分でチャージされてしまった。
「だんな、すげえ…! てめえ、そんなこともできたのかよ!」キナが、尊敬の眼差しでアキオを見つめる。
これは、アウロラがいない場所でも、アキオ自身が、緊急時のエネルギー補給を行えるという、魔導車の運用における、そしてアキオの力の新たな可能性を示す、非常に大きな発見だった。
無事に町へ帰還した一行は、この結果をすぐにシルヴィアたちに報告した。
長距離走行テストは、エネルギー効率の最適化という今後の課題を残しつつも、それを補って余りある、絶大な成果と共に幕を閉じた。
アキオは、自室で、改めて魔導車の設計図を眺めた。エルドリアは、遠い。だが、この頼もしい鉄の相棒と、そして自分のこの力があれば、必ず辿り着ける。アキオは、愛する妻たちが待つ遠い地を思い、その確信を、さらに強いものにするのだった。
「だんな、すっげえな、これ! 全然音がしねえから、森の獣たちもギリギリまで気づかねえや!」
後部座席で周囲を警戒していたキナが、興奮した声で言う。彼女の優れた聴覚をもってしても、魔導車の駆動音は、風の音に紛れてしまうほど静かだった。
「凛殿、計器の数値はどうだ?」
操縦席のアキオが尋ねると、助手席の凛は、手元の羊皮紙に数値を書き込みながら、冷静に、しかしその声には確かな手応えを滲ませて答えた。
「はい、アキオ様。現在、安定した速度での巡航時におけるエネルギー消費量は、理論値をわずかに下回る、極めて優秀な数値を維持しています。サスペンションも完璧に機能しており、これほどの悪路でも、車体への衝撃は最小限です」
彼女の言葉通り、魔導車は森の中に続く轍の深い道を、まるで舗装路を走るかのように滑らかに進んでいく。
一行は、目的地としていた「荒くれ共」の引き渡し場所の近くにある大きな岩まで到達すると、そこで一度休憩を取った。
「いやあ、大したもんだな! これなら、どんな奴らが追いかけてきても、ぶっちぎりで逃げられるぜ!」
キナは、魔導車から降りると、その車体をバンバンと叩きながら快活に笑う。
「キナさん、あまり強く叩かないでくださいまし。精密な魔力回路に影響が出ます」
凛が、少しだけ眉をひそめて注意する。そのやり取りを見て、アキオは微笑んだ。理論派で冷静な凛と、感覚派で行動的なキナ。正反対に見える二人だが、この魔導車開発という共通の目標のもと、不思議と良いコンビになりつつあった。
順調にテストを続けていたが、帰り道、町の近くまで戻ってきたところで、動力炉のエネルギー残量を示す計器の光が、急速に弱くなっていく。魔導車は速度を失い、森の途中で完全に沈黙した。
「申し訳ありません、アキオ様…! 帰り道で速度を上げたのが、計算外のエネルギー消費を招いたようです…。私の、計算がまだ…甘かったようです…!」
凛は、悔しそうに唇を噛んだ。
「まあまあ、そう自分を責めるな、凛殿。試作機にトラブルはつきものだ。むしろ、この段階で課題が見つかって良かったじゃないか」
アキオは彼女を慰めながらも、内心では冷や汗をかいていた。ここから町まで歩いて戻ることはできるが、この巨大な鉄の塊をどうやって運ぶか。
(…待てよ。動力源は、俺の力と共鳴していた…。なら、あるいは…)
アキオの脳裏に、一つの可能性が閃いた。
「凛殿、キナ。少し、試してみたいことがある」
アキオは、動力炉の炉心ケースに直接手を触れると、意識を集中させた。そして、自らの「生命の祝福」の力を、消耗しきって光を失った「魔力バッテリー」に向かって、ゆっくりと注ぎ込んでいった。アウロラが聖なるエネルギーを『充填』したのとは違う。アキオ自身の、生命そのもののエネルギーを、直接分け与えるのだ。
すると、奇跡が起きた。
光を失っていたバッテリーの生命樹の枝が、アキオの力に呼応し、再び穏やかな乳白色の光を灯し始めたのだ。
「これは…!?」凛が息をのむ。
計器のエネルギー残量が、ゆっくりと、しかし確実に上昇していく。10%、15%、20%…。アウロラが丸一日かけて行う再充填ほどではないものの、町まで帰り着くには十分すぎるほどのエネルギーが、ものの数分でチャージされてしまった。
「だんな、すげえ…! てめえ、そんなこともできたのかよ!」キナが、尊敬の眼差しでアキオを見つめる。
これは、アウロラがいない場所でも、アキオ自身が、緊急時のエネルギー補給を行えるという、魔導車の運用における、そしてアキオの力の新たな可能性を示す、非常に大きな発見だった。
無事に町へ帰還した一行は、この結果をすぐにシルヴィアたちに報告した。
長距離走行テストは、エネルギー効率の最適化という今後の課題を残しつつも、それを補って余りある、絶大な成果と共に幕を閉じた。
アキオは、自室で、改めて魔導車の設計図を眺めた。エルドリアは、遠い。だが、この頼もしい鉄の相棒と、そして自分のこの力があれば、必ず辿り着ける。アキオは、愛する妻たちが待つ遠い地を思い、その確信を、さらに強いものにするのだった。
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