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第215話:不器用な花束と、新しい家の約束
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町の歴史上初めて開かれた、ささやかな「お見合い」の場。それは、アキオの町に、確かな、そして温かい変化の波紋を広げていた。
元「荒くれ共」の男たちと、「希望の会」の未亡人たち。それぞれが心に傷を負い、一度は未来を諦めかけた者同士。彼らの間には、まだぎこちない空気が流れつつも、日に日にその距離は縮まっていた。
新・中央館の建設現場では、男たちの働きぶりが、以前にも増して目覚ましかった。休憩時間、未亡人のハナが水の入った桶を運んでいると、ゴルドーが何も言わずにすっとその隣に立ち、ひょいと桶を取り上げて運んでやる。ハナが「あ、ありがとうございます…」と礼を言うと、ゴルドーは「…おう」と短く答えるだけで、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまう。
診療所の薬草畑では、贖罪の英雄ザックが、黙々と土を耕していた。そこへ、ユリアが新しい薬草の苗を持ってやってくる。二人は、言葉少なに、しかし息の合った様子で、共に苗を植えていく。その光景は、町の誰もが微笑ましく、そして固唾をのんで見守っていた。
そんな日々が数日続いた、ある日の夕暮れ時。
仕事を終えたゴルドーが、意を決したように、ハナの住む共同住居の前で彼女を待っていた。その大きな手には、不格好ながらも何かが握られている。
「ハナさん…」
「はい、ゴルドーさん。何か…?」
ゴルドーは、もじもじとしながら、その手に握っていたものを、彼女に突き出した。
「…これ、やる」
それは、花束ではなかった。彼が森での作業の合間に集めたであろう、怪我に効く薬草や、滋養のある食べられる野草、そしてその間に、申し訳程度に数本の可憐な野花が挿してある、実用性第一の「不器用な花束」だった。
ハナは、一瞬きょとんとしたが、すぐにその意味を理解し、ふわりと微笑んだ。
「まあ…お花ではなく、薬草ですのね。ゴルドーさんらしいですわ。ありがとうございます、大切に使わせていただきます」
その優しい笑顔に勇気づけられたのか、ゴルドーは、さらに言葉を絞り出した。
「…ハナさん。もし…あんたさえ良ければ…いつか、この町で…二人だけの、家を…」
それは、精一杯の、未来への約束の言葉。ハナの瞳から、大粒の涙がほろりとこぼれ落ちた。彼女は、何度も、何度も、小さく頷いた。
そのゴルドーの行動は、他の男たちの背中を強く押した。
翌日、カイと、そしてゴルドーをはじめとする数人の男たちが、アキオの元を訪れ、深々と頭を下げた。
「アキオ様。我々は、希望の会の女性たちと、将来を共にしたいと考えております。つきましては、我々が暮らすための、新しい家を建てる許可を、どうかお与えください!」
アキオは、その申し出に、満面の笑みで頷いた。
「当たり前だ! それこそが、俺がこの町で見たかった光景だ! すぐに凛殿を呼ぼう。皆が、温かい家庭を築けるような、最高の宅地計画を立てさせる!」
話を聞いた凛は、秘書官として、即座に行動を開始した。彼女は、町の地図を広げ、日当たりや風通し、そして子供たちが育つ環境までを考慮した、新しい住宅区画の設計案を、驚くべき速さで描き上げていく。その表情は、もはや単なる仕事としての義務感ではない。この町に生まれる、新しい家族たちの幸福を、心から願う、温かい喜びに満ちていた。
「アキオ様。こちらが第一案です。各世帯のプライバシーを確保しつつ、住民同士が自然に交流できるような、共有の広場も設けてみました」
彼女が差し出した設計図は、合理的で、そして何よりも、そこに住む人々の笑顔を想像させる、希望に満ちたものだった。
アキオの町では、新・中央館の建設に加え、新たに、たくさんの「愛の巣」を築くための、幸せな槌音が響き渡ることになるだろう。聖域の土の上で、一度は枯れかけた心に、今、新しい愛の花が、確かに芽吹こうとしていた。
元「荒くれ共」の男たちと、「希望の会」の未亡人たち。それぞれが心に傷を負い、一度は未来を諦めかけた者同士。彼らの間には、まだぎこちない空気が流れつつも、日に日にその距離は縮まっていた。
新・中央館の建設現場では、男たちの働きぶりが、以前にも増して目覚ましかった。休憩時間、未亡人のハナが水の入った桶を運んでいると、ゴルドーが何も言わずにすっとその隣に立ち、ひょいと桶を取り上げて運んでやる。ハナが「あ、ありがとうございます…」と礼を言うと、ゴルドーは「…おう」と短く答えるだけで、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまう。
診療所の薬草畑では、贖罪の英雄ザックが、黙々と土を耕していた。そこへ、ユリアが新しい薬草の苗を持ってやってくる。二人は、言葉少なに、しかし息の合った様子で、共に苗を植えていく。その光景は、町の誰もが微笑ましく、そして固唾をのんで見守っていた。
そんな日々が数日続いた、ある日の夕暮れ時。
仕事を終えたゴルドーが、意を決したように、ハナの住む共同住居の前で彼女を待っていた。その大きな手には、不格好ながらも何かが握られている。
「ハナさん…」
「はい、ゴルドーさん。何か…?」
ゴルドーは、もじもじとしながら、その手に握っていたものを、彼女に突き出した。
「…これ、やる」
それは、花束ではなかった。彼が森での作業の合間に集めたであろう、怪我に効く薬草や、滋養のある食べられる野草、そしてその間に、申し訳程度に数本の可憐な野花が挿してある、実用性第一の「不器用な花束」だった。
ハナは、一瞬きょとんとしたが、すぐにその意味を理解し、ふわりと微笑んだ。
「まあ…お花ではなく、薬草ですのね。ゴルドーさんらしいですわ。ありがとうございます、大切に使わせていただきます」
その優しい笑顔に勇気づけられたのか、ゴルドーは、さらに言葉を絞り出した。
「…ハナさん。もし…あんたさえ良ければ…いつか、この町で…二人だけの、家を…」
それは、精一杯の、未来への約束の言葉。ハナの瞳から、大粒の涙がほろりとこぼれ落ちた。彼女は、何度も、何度も、小さく頷いた。
そのゴルドーの行動は、他の男たちの背中を強く押した。
翌日、カイと、そしてゴルドーをはじめとする数人の男たちが、アキオの元を訪れ、深々と頭を下げた。
「アキオ様。我々は、希望の会の女性たちと、将来を共にしたいと考えております。つきましては、我々が暮らすための、新しい家を建てる許可を、どうかお与えください!」
アキオは、その申し出に、満面の笑みで頷いた。
「当たり前だ! それこそが、俺がこの町で見たかった光景だ! すぐに凛殿を呼ぼう。皆が、温かい家庭を築けるような、最高の宅地計画を立てさせる!」
話を聞いた凛は、秘書官として、即座に行動を開始した。彼女は、町の地図を広げ、日当たりや風通し、そして子供たちが育つ環境までを考慮した、新しい住宅区画の設計案を、驚くべき速さで描き上げていく。その表情は、もはや単なる仕事としての義務感ではない。この町に生まれる、新しい家族たちの幸福を、心から願う、温かい喜びに満ちていた。
「アキオ様。こちらが第一案です。各世帯のプライバシーを確保しつつ、住民同士が自然に交流できるような、共有の広場も設けてみました」
彼女が差し出した設計図は、合理的で、そして何よりも、そこに住む人々の笑顔を想像させる、希望に満ちたものだった。
アキオの町では、新・中央館の建設に加え、新たに、たくさんの「愛の巣」を築くための、幸せな槌音が響き渡ることになるだろう。聖域の土の上で、一度は枯れかけた心に、今、新しい愛の花が、確かに芽吹こうとしていた。
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