216 / 387
第216話:未来の家、そして才媛の設計図
しおりを挟む
ゴルドーたちからの、真摯で、そして不器用な申し出。それは、アキオの町に、新しい、そして温かい風を吹き込むものだった。新・中央館の建設という大きなプロジェクトと並行して、町の未来を担う新しい家族たちのための、新たな住居区画の建設計画が、アキオの号令のもと、即座に始動した。
設計司令室では、アキオ、凛、そして町の建設を担うカイとアルトが、大きな地図を囲んでいた。
「アキオ様。こちらが、新しい住宅区画の設計案です」
凛が、その明晰な頭脳で描き上げた、見事な設計図を広げる。それは、ただ家を並べただけの無機質なものではなかった。中央には、住民たちが集い、子供たちが遊べる小さな広場を配置し、そこから放射状に小道が伸びる。各住居は、日当たりと風通しを最大限に考慮して配置され、それぞれに小さな家庭菜園を作るためのスペースも確保されていた。
「素晴らしいな、凛殿。合理的で、そして何よりも、ここに住む人々の暮らしが目に浮かぶようだ」
アキオは、心から感嘆した。彼女の設計には、この町の共同体としてのあり方への、深い理解と愛情が込められていた。
「カイ、アルト。この計画で進めたいと思うが、どうだろうか」
「はい! これなら、資材の運搬も効率的に行えます!」アルトが力強く答える。
「ああ。問題ない。むしろ、これだけのものが作れるとなると、男たちの気合も入るだろうぜ」カイも、ニヤリと笑った。
アキオは、さらに一つの提案を加えた。
「皆の家は、それぞれ広さや間取りは自由だ。だが、基礎となる柱や梁の寸法、木材の組み方といった基本的な構造を統一しないか。俺の故郷では『規格化』と言っていたが、そうすれば、製材所で前もって部品を大量に作っておける。建てる時の手間が、格段に省けるはずだ」
その、効率を飛躍的に向上させる画期的な提案に、アルトやカイ、そして凛もまた、目を見張った。
数日後、新しい住宅区画の建設予定地に、ゴルドーたち「再生班」の男たちと、「希望の会」の未亡人たちが集められた。
アキオは、彼らの前に立ち、力強く宣言した。
「皆に、自分たちの手で、自分たちの未来を築いてもらう!」
アキオは、凛が作成した、いくつかの基本パターンからなる家の設計図を示した。
「これから建てる家は、俺たちが一方的に与えるものじゃない。自分たちが住む家は、自分たちの手で建てるんだ。もちろん、カイやアルト、そして俺たちも全力で手伝う。それが、この町のやり方だ!」
その言葉に、男たちの顔に、これまでにないほどの力強い光が宿った。自分のため、そして…愛する女性のために、家を建てる。それは、彼らが男としての誇りと、生きる意味を取り戻すための、最高の舞台だった。
その日から、町には二つの大きな槌音が響き渡るようになった。新・中央館を築く音と、新しい家族の巣を築く音だ。
ゴルドーは、まるで獣のような雄叫びを上げながら、誰よりも懸命に土を掘り、石を運んだ。その視線の先には、彼のために水を運び、はにかみながら微笑むハナの姿がある。
ザックもまた、黙々と、しかしその一挙手一投足に力を込めて、ユリアが見守る中で作業に励んでいた。二人の間に、まだ多くの言葉はない。だが、その静かな眼差しは、どんな言葉よりも雄弁に、互いの心の変化を物語っていた。
凛は、秘書官として、設計図を手に現場を回り、カイやアルトに的確な指示を与えていた。その姿は、もはや王都の書庫にいた頃の、影のある才媛ではない。この聖域の未来を、自らの手で創造する、生き生きとした喜びに満ち溢れていた。
アキオは、そんな彼女の横顔を、深い信頼と、そして日に日に強くなる特別な想いを込めて、見つめていた。
夕暮れの光が、新しい家の土台が築かれ始めたばかりの土地を、優しく照らし出す。それは、アキオの町に、いくつもの温かい家庭が生まれようとしている、希望の光そのものだった。
設計司令室では、アキオ、凛、そして町の建設を担うカイとアルトが、大きな地図を囲んでいた。
「アキオ様。こちらが、新しい住宅区画の設計案です」
凛が、その明晰な頭脳で描き上げた、見事な設計図を広げる。それは、ただ家を並べただけの無機質なものではなかった。中央には、住民たちが集い、子供たちが遊べる小さな広場を配置し、そこから放射状に小道が伸びる。各住居は、日当たりと風通しを最大限に考慮して配置され、それぞれに小さな家庭菜園を作るためのスペースも確保されていた。
「素晴らしいな、凛殿。合理的で、そして何よりも、ここに住む人々の暮らしが目に浮かぶようだ」
アキオは、心から感嘆した。彼女の設計には、この町の共同体としてのあり方への、深い理解と愛情が込められていた。
「カイ、アルト。この計画で進めたいと思うが、どうだろうか」
「はい! これなら、資材の運搬も効率的に行えます!」アルトが力強く答える。
「ああ。問題ない。むしろ、これだけのものが作れるとなると、男たちの気合も入るだろうぜ」カイも、ニヤリと笑った。
アキオは、さらに一つの提案を加えた。
「皆の家は、それぞれ広さや間取りは自由だ。だが、基礎となる柱や梁の寸法、木材の組み方といった基本的な構造を統一しないか。俺の故郷では『規格化』と言っていたが、そうすれば、製材所で前もって部品を大量に作っておける。建てる時の手間が、格段に省けるはずだ」
その、効率を飛躍的に向上させる画期的な提案に、アルトやカイ、そして凛もまた、目を見張った。
数日後、新しい住宅区画の建設予定地に、ゴルドーたち「再生班」の男たちと、「希望の会」の未亡人たちが集められた。
アキオは、彼らの前に立ち、力強く宣言した。
「皆に、自分たちの手で、自分たちの未来を築いてもらう!」
アキオは、凛が作成した、いくつかの基本パターンからなる家の設計図を示した。
「これから建てる家は、俺たちが一方的に与えるものじゃない。自分たちが住む家は、自分たちの手で建てるんだ。もちろん、カイやアルト、そして俺たちも全力で手伝う。それが、この町のやり方だ!」
その言葉に、男たちの顔に、これまでにないほどの力強い光が宿った。自分のため、そして…愛する女性のために、家を建てる。それは、彼らが男としての誇りと、生きる意味を取り戻すための、最高の舞台だった。
その日から、町には二つの大きな槌音が響き渡るようになった。新・中央館を築く音と、新しい家族の巣を築く音だ。
ゴルドーは、まるで獣のような雄叫びを上げながら、誰よりも懸命に土を掘り、石を運んだ。その視線の先には、彼のために水を運び、はにかみながら微笑むハナの姿がある。
ザックもまた、黙々と、しかしその一挙手一投足に力を込めて、ユリアが見守る中で作業に励んでいた。二人の間に、まだ多くの言葉はない。だが、その静かな眼差しは、どんな言葉よりも雄弁に、互いの心の変化を物語っていた。
凛は、秘書官として、設計図を手に現場を回り、カイやアルトに的確な指示を与えていた。その姿は、もはや王都の書庫にいた頃の、影のある才媛ではない。この聖域の未来を、自らの手で創造する、生き生きとした喜びに満ち溢れていた。
アキオは、そんな彼女の横顔を、深い信頼と、そして日に日に強くなる特別な想いを込めて、見つめていた。
夕暮れの光が、新しい家の土台が築かれ始めたばかりの土地を、優しく照らし出す。それは、アキオの町に、いくつもの温かい家庭が生まれようとしている、希望の光そのものだった。
44
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
書道が『神級』に昇格!?女神の失敗で異世界転移して竜皇女と商売してたら勇者!聖女!魔王!「次々と現れるので対応してたら世界を救ってました」
銀塊 メウ
ファンタジー
書道が大好き(強制)なごくごく普通の
一般高校生真田蒼字、しかし実際は家の
関係で、幽霊や妖怪を倒す陰陽師的な仕事
を裏でしていた。ある日のこと学校を
出たら目の前は薄暗い檻の中なんじゃ
こりゃーと思っていると、女神(駄)が
現れ異世界に転移されていた。魔王を
倒してほしんですか?いえ違います。
失敗しちゃった。テヘ!ふざけんな!
さっさと元の世界に帰せ‼
これは運悪く異世界に飛ばされた青年が
仲間のリル、レイチェルと楽しくほのぼの
と商売をして暮らしているところで、
様々な事件に巻き込まれながらも、この
世界に来て手に入れたスキル『書道神級』
の力で無双し敵をバッタバッタと倒し
解決していく中で、魔王と勇者達の戦いに
巻き込まれ時にはカッコよく(モテる)、
時には面白く敵を倒して(笑える)いつの
間にか世界を救う話です。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。
彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる