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第221話:魔導の盟約、そして秘密の充電器
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アキオの町では、重量物運搬用の魔導トラック「力王」の完成が、新・中央館の建設や町の開拓を飛躍的に加速させていた。その圧倒的な性能を目の当たりにするたび、アキオの心には、盟友であるアレクサンダー子爵への想いが募っていた。
(俺たちの町だけが、この力を持っていても仕方がない。子爵領が安定し、豊かになることは、俺たちの町の安全にも繋がるはずだ)
数日後、ヴァルト子爵領から、アキオたちが贈ったアキオ鋼の農具や生命の霊薬に対する、熱狂的な感謝と、交易品の対価として大量の塩や鉱石が届けられた。そして、その荷と共に、子爵からの親書も届いた。そこには、アウロラ様が植えた生命樹の種が、城の庭で力強く芽吹き、周囲一帯を清浄な気で満たし始めているという、奇跡の報告が記されていた。
この吉報を受け、アキオは決断した。中央館の集会室に、シルヴィア、アウロラ、凛、そしてドルガン親方を集める。
「皆、聞いてくれ。俺は、ヴァルト子爵に、我々の魔導車を一台、贈ろうと思う」
アキオのその言葉に、凛とドルガン親方の表情が引き締まる。
「アキオ殿、それは良い考えじゃが」とドルガン親方が口を開いた。「問題は動力源じゃ。あの『魔力バッテリー』は、この町の生命樹とアウロラ様の力があって初めて作れる、まさに聖域の秘宝。外部に持ち出すのも危険じゃが、何より、エネルギーが切れれば、ただの鉄の塊じゃぞ」
「ええ、アキオ様。バッテリーの構造は極めて秘匿性が高く、子爵領の技術では、エネルギーの再充填は不可能です」凛も冷静に付け加えた。
アキオは、二人の懸念に静かに頷いた。
「ああ、分かっている。だから、バッテリーそのものを渡すわけじゃない。だが、バッテリーを『充電』するための、特別な装置を一緒に作って贈るんだ」
アキオは、アウロラに視線を向けた。彼女は、夫の意図を即座に理解し、聖母のような微笑みを浮かべた。
「ええ、アキオ。わらわが、特別な祝福を込めた『聖石』を創りましょう。その石を動力源とすれば、バッテリーにゆっくりとではありますが、聖なる力を再充填することが可能でしょう」
アウロラは続けた。「ただし、その聖石もまた、力が尽きれば、この町に持ち帰り、わらわか生命樹の力で、再び祝福を施さねばなりません。バッテリー自体は、アキオ様の町以外では決して作れない…そういう仕組みです」
それは、アキオの町の技術的優位性と秘匿性を完全に保ちつつ、盟友に継続的な力を与えるという、完璧な解決策だった。
「なんと…! 充電器とな!」ドルガン親方が、目を見開く。
「…合理的です。依存関係を維持しつつ、最大限の友好を示すことができる。素晴らしいご慧眼ですわ、アキオ様、アウロラ様」凛も、その発想に感嘆の声を漏らした。
その日から、町の工房では、ヴァルト子爵領に贈るための、新しい魔導車の製造と、「聖域の充電器」の開発が極秘裏に開始された。
贈呈用の魔導車は、試作機を改良した、より安定性と快適性を高めた輸送モデル。
そして「充電器」は、凛が設計し、ドルガンがアキオ鋼で作り上げた、頑丈な箱型の装置だった。内部には、バッテリーをセットするスロットと、アウロラが創り出した「聖石」を収める神聖な空間があり、その構造は、外部からは決して解析できないよう、複雑な魔力回路で守られている。
数週間後。全てが完成した日、アキオは自ら、この歴史的な贈り物を届けるため、ヴァルト子爵領への訪問団を編成した。
「俺と、技術的な説明のために凛殿。そして、護衛としてキナとアルトにも同行してもらう」
魔導車「力王」の荷台には、完成したばかりの真新しい魔導車と、厳重に封印された「聖域の充電器」が積載された。
アキオの町は、今、その比類なき技術力と、聖域の祝福を、初めて「盟約の形」として外部世界へと示そうとしていた。それは、この聖域が、世界の勢力図に、静かに、しかし確かな影響を与え始める、大きな一歩となるのだった。
(俺たちの町だけが、この力を持っていても仕方がない。子爵領が安定し、豊かになることは、俺たちの町の安全にも繋がるはずだ)
数日後、ヴァルト子爵領から、アキオたちが贈ったアキオ鋼の農具や生命の霊薬に対する、熱狂的な感謝と、交易品の対価として大量の塩や鉱石が届けられた。そして、その荷と共に、子爵からの親書も届いた。そこには、アウロラ様が植えた生命樹の種が、城の庭で力強く芽吹き、周囲一帯を清浄な気で満たし始めているという、奇跡の報告が記されていた。
この吉報を受け、アキオは決断した。中央館の集会室に、シルヴィア、アウロラ、凛、そしてドルガン親方を集める。
「皆、聞いてくれ。俺は、ヴァルト子爵に、我々の魔導車を一台、贈ろうと思う」
アキオのその言葉に、凛とドルガン親方の表情が引き締まる。
「アキオ殿、それは良い考えじゃが」とドルガン親方が口を開いた。「問題は動力源じゃ。あの『魔力バッテリー』は、この町の生命樹とアウロラ様の力があって初めて作れる、まさに聖域の秘宝。外部に持ち出すのも危険じゃが、何より、エネルギーが切れれば、ただの鉄の塊じゃぞ」
「ええ、アキオ様。バッテリーの構造は極めて秘匿性が高く、子爵領の技術では、エネルギーの再充填は不可能です」凛も冷静に付け加えた。
アキオは、二人の懸念に静かに頷いた。
「ああ、分かっている。だから、バッテリーそのものを渡すわけじゃない。だが、バッテリーを『充電』するための、特別な装置を一緒に作って贈るんだ」
アキオは、アウロラに視線を向けた。彼女は、夫の意図を即座に理解し、聖母のような微笑みを浮かべた。
「ええ、アキオ。わらわが、特別な祝福を込めた『聖石』を創りましょう。その石を動力源とすれば、バッテリーにゆっくりとではありますが、聖なる力を再充填することが可能でしょう」
アウロラは続けた。「ただし、その聖石もまた、力が尽きれば、この町に持ち帰り、わらわか生命樹の力で、再び祝福を施さねばなりません。バッテリー自体は、アキオ様の町以外では決して作れない…そういう仕組みです」
それは、アキオの町の技術的優位性と秘匿性を完全に保ちつつ、盟友に継続的な力を与えるという、完璧な解決策だった。
「なんと…! 充電器とな!」ドルガン親方が、目を見開く。
「…合理的です。依存関係を維持しつつ、最大限の友好を示すことができる。素晴らしいご慧眼ですわ、アキオ様、アウロラ様」凛も、その発想に感嘆の声を漏らした。
その日から、町の工房では、ヴァルト子爵領に贈るための、新しい魔導車の製造と、「聖域の充電器」の開発が極秘裏に開始された。
贈呈用の魔導車は、試作機を改良した、より安定性と快適性を高めた輸送モデル。
そして「充電器」は、凛が設計し、ドルガンがアキオ鋼で作り上げた、頑丈な箱型の装置だった。内部には、バッテリーをセットするスロットと、アウロラが創り出した「聖石」を収める神聖な空間があり、その構造は、外部からは決して解析できないよう、複雑な魔力回路で守られている。
数週間後。全てが完成した日、アキオは自ら、この歴史的な贈り物を届けるため、ヴァルト子爵領への訪問団を編成した。
「俺と、技術的な説明のために凛殿。そして、護衛としてキナとアルトにも同行してもらう」
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