五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

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第240話:盟友の都、そして才媛の会談

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 アキオ、凛、キナ、カイを乗せた魔導ワゴン『白百合』は、聖域街道の未舗装区間をものともせず、驚異的な速さでヴァルト子爵領の都へと到着した。その黒鉄の優美な車体が、音もなく城門の前に姿を現した時、出迎えた子爵領の兵士たちからは、どよめきと畏敬の声が上がった。

 城門では、盟友アレクサンダー子爵と、その妻リーゼロッテ夫人が、一行を自ら出迎えた。そして、その傍らには、一年間の留学を終え、心身ともに見違えるほど逞しく、そして美しく成長した、ケンタとユメの姿があった。
「アキオ様!」「お父さん!」
 二人は、アキオの姿を認めるなり、感極まった様子で駆け寄った。アキオは、その成長した二人の姿に目頭を熱くしながら、力強くその肩を抱きしめる。
「よく頑張ったな、ケンタ、ユメ。立派になったじゃないか」
「はい! 子爵様と、皆さまのおかげです!」
 涙と笑顔の、感動的な再会。それは、アキオの町の未来が、確かに育っていることを示す、何よりも嬉しい光景だった。

 しかし、その歓迎ムードの裏で、アキオは町の空気にどこか不穏なものが流れていることに気づいていた。活気はある。だが、人々の間に、特に元「荒くれ共」と元々の領民との間に、見えない壁があるような、ぎこちない緊張感が漂っていた。

 その夜、子爵の館で開かれた歓迎の宴の後、アレクサンダー子爵は、アキオを自室へと招き、重い口を開いた。
「アキオ殿…君に、我が領地の恥を晒さねばならん…」
 子爵は、ザックたちの助言を元に「荒くれ共」の更生を試みたものの、彼らの根深い不信感や、領民との間で生まれてしまった差別や偏見によるトラブルが絶えず、このままでは暴動にもなりかねない、という窮状を、アキオに正直に打ち明けた。
「アキオ殿…最後の願いだ。この中でも特に手のつけられない者たちだけでも、君の聖域で預かってはいただけないだろうか…」

 アキオが子爵と町の男たちの問題を話し合っている頃、別室では、リーゼロッテ夫人が、凛を二人きりの茶会へと招いていた。
「凛様。夫が話したこととは別に、わたくしたち女性の視点からの悩みも、お聞きいただけますか」
 リーゼロッテ夫人は、凛の卓越した知性と、アキオの側近としての立場に、深い信頼を寄せていた。彼女は、領内の若い娘たちが、元荒くれ共を恐れ、心を閉ざしてしまっていること、そして彼らもまた、女性に対してどう接して良いかわからず、その苛立ちが、些細な暴力や無気力に繋がっているという、問題の根源を語った。
 凛は、その情報を冷静に分析し、子爵領の状況に合わせた、具体的な社会統合プログラムを、その場でいくつか提案してみせた。
「…必要なのは、相互理解のための『場』です。例えば、共同での祭りの準備や、町の美化活動など、男女が自然に協力し、互いの人となりを知る機会を、意図的に設けるべきです」

 リーゼロッテ夫人は、凛のその才覚に感嘆すると共に、アキオの隣で生き生きと働く彼女の姿に、一人の女性として深く共感した。
「凛様…貴女のような方がアキオ様の隣にいてくださることが、この聖域の、そして我々同盟の最大の強みですわ」
 外部の、しかも高い身分の女性から、その能力と存在を認められたことで、凛の心には、秘書官としての自信と、一人の女性としての誇りが、さらに確かなものとして根付いた。

 翌日、アキオと凛は、互いの得た情報を持ち寄り、最終的な方針を決定した。
 アキオは、子爵の前に立ち、きっぱりと告げる。
「子爵。君の頼み、引き受けよう。ただし、全員ではない。君の領地で更生の見込みがある者と、我々の聖域でしか救えぬ者を見極める必要がある。まずは、俺と凛殿で、彼ら全員と直接面談させてもらいたい」

 アキオと凛の、聖域の叡智と慈愛による、本格的な「魂の選別」が、今、始まろうとしていた。
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