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第251話:才媛の誓い、そして世界の秘密
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王宮のバルコニー。アキオの腕の中で、クラウディアは、これまでの人生で流したことのないほど、多くの涙を流していた。それは、悲しみの涙ではない。長年、知性と矜持の鎧の下に押し殺してきた、一人の女性としての素直な感情が、信頼できる唯一人の男性の前で、ようやく溢れ出した、安堵と喜びの涙だった。
アキオは、彼女が落ち着くまで、ただ黙ってその背中を優しくさすり続けた。やがて、しゃくり上げる声が小さくなると、彼は彼女を腕の中からそっと離し、その涙に濡れた瞳を真っ直ぐに見つめた。
「クラウディア殿、君の気持ちは、確かに受け取った。だが、今夜は、君をそういう意味で求めることはできない。君は今、心が張り詰めている。まずは、ゆっくり休むんだ」
アキオは、彼女を寝室へと促すと、自分は客間の長椅子で休むと告げた。その、どこまでも紳士的で、彼女の心を最優先に考えるアキオの振る舞いに、クラウディアの心は、さらに強く惹きつけられた。
(ああ、この方は…本当に…)
いきなり自分を抱かなかったアキオに、彼女は、むしろ自分が一人の女性として、何よりも大切にされているという喜びで、その魂が輝きを増していくのを感じていた。
「では、せめて…今宵一夜、貴方の腕の中で、ただ、眠らせてはいただけませんか…? もう、一人でいるのは、寂しいのです…」
その、か細く、しかし素直な願いを、アキオが断れるはずもなかった。
その夜、アキオはクラウディアと一つのベッドで寝た。だが、そこに肉欲は介在しない。彼は、ただ、その震える身体を、壊れ物を扱うかのように、優しく抱きしめながら、彼女が安心しきって眠りにつくまで、その髪を撫で続けた。
穏やかな時間が流れる中、アキオは、静かに口を開いた。
「クラウディア殿。君の気持ちに応えたい。君を、俺の六番目の妻として、正式に迎え入れたい。君の知恵と、その強さが、俺には、この町には必要だ」
アキオからの、はっきりとした言葉。クラウディアは、彼の胸に顔をうずめたまま、幸せに震えた。
「…だが、その前に、君にだけは伝えておかなければならない、俺の最大の秘密がある」
アキオは、意を決すると、自らがこの世界の人間ではないこと、「転移者」であることを、静かに、そして正直に打ち明けた。
アキオは、彼女が驚き、あるいは戸惑うことを覚悟していた。しかし、クラウディアからは、意外な答えが返ってきた。
「…やはり、そうでしたか。アキオ様の発想や、お持ちの知識は、時折この世界の理から外れていると感じることがございました」
彼女は、顔を上げると、安心させるように微笑んだ。
「ですが、ご安心ください。貴方が『異世界人』であると、自ら明かさぬ限り、誰にも知られることはないでしょう」
「どういうことだ…?」
「わたくしたちの世界の歴史には、過去、何度か、貴方様のような『漂流者』や『招かれ人』と呼ばれる方々が現れたという記録がございます。…何を隠しましょう、アヤネ様や、わたくしの親友である凛の御先祖様も、その一人であったと、王家の古文書には記されておりますの」
その衝撃的な事実に、今度はアキオが言葉を失った。
「ですから、『アキオ』というお名前も、彼らが伝えた文化の名残なのか、王都では決して珍しい名前ではございませんのよ。だから、大丈夫ですわ」
長年、心の奥底で孤独と共に抱え続けてきた、最大の秘密。それが、目の前の聡明な女性によって、いとも容易く、この世界の歴史の中に受け入れられた。アキオは、魂が救われるような、深い安堵感に包まれた。
その、安堵に満ちたアキオの表情を見て、クラウディアは、愛おしさが込み上げてくるのを止められなかった。
彼女は、そっと身体を起こすと、アキオの唇に、自らの唇を優しく重ねた。それは、彼女から贈る、初めてのキスだった。
唇が離れると、彼女は、最高の笑顔で囁いた。
「ようこそ、アキオ様。この、貴方が愛し、そして貴方を愛する、新しい世界へ」
この日、二人の間に、まだ男女の交わりはなかった。だが、互いの全てを曝け出し、そして受け入れ合ったことで、その魂は、誰よりも深く、そして固く結ばれたのだった。
アキオは、彼女が落ち着くまで、ただ黙ってその背中を優しくさすり続けた。やがて、しゃくり上げる声が小さくなると、彼は彼女を腕の中からそっと離し、その涙に濡れた瞳を真っ直ぐに見つめた。
「クラウディア殿、君の気持ちは、確かに受け取った。だが、今夜は、君をそういう意味で求めることはできない。君は今、心が張り詰めている。まずは、ゆっくり休むんだ」
アキオは、彼女を寝室へと促すと、自分は客間の長椅子で休むと告げた。その、どこまでも紳士的で、彼女の心を最優先に考えるアキオの振る舞いに、クラウディアの心は、さらに強く惹きつけられた。
(ああ、この方は…本当に…)
いきなり自分を抱かなかったアキオに、彼女は、むしろ自分が一人の女性として、何よりも大切にされているという喜びで、その魂が輝きを増していくのを感じていた。
「では、せめて…今宵一夜、貴方の腕の中で、ただ、眠らせてはいただけませんか…? もう、一人でいるのは、寂しいのです…」
その、か細く、しかし素直な願いを、アキオが断れるはずもなかった。
その夜、アキオはクラウディアと一つのベッドで寝た。だが、そこに肉欲は介在しない。彼は、ただ、その震える身体を、壊れ物を扱うかのように、優しく抱きしめながら、彼女が安心しきって眠りにつくまで、その髪を撫で続けた。
穏やかな時間が流れる中、アキオは、静かに口を開いた。
「クラウディア殿。君の気持ちに応えたい。君を、俺の六番目の妻として、正式に迎え入れたい。君の知恵と、その強さが、俺には、この町には必要だ」
アキオからの、はっきりとした言葉。クラウディアは、彼の胸に顔をうずめたまま、幸せに震えた。
「…だが、その前に、君にだけは伝えておかなければならない、俺の最大の秘密がある」
アキオは、意を決すると、自らがこの世界の人間ではないこと、「転移者」であることを、静かに、そして正直に打ち明けた。
アキオは、彼女が驚き、あるいは戸惑うことを覚悟していた。しかし、クラウディアからは、意外な答えが返ってきた。
「…やはり、そうでしたか。アキオ様の発想や、お持ちの知識は、時折この世界の理から外れていると感じることがございました」
彼女は、顔を上げると、安心させるように微笑んだ。
「ですが、ご安心ください。貴方が『異世界人』であると、自ら明かさぬ限り、誰にも知られることはないでしょう」
「どういうことだ…?」
「わたくしたちの世界の歴史には、過去、何度か、貴方様のような『漂流者』や『招かれ人』と呼ばれる方々が現れたという記録がございます。…何を隠しましょう、アヤネ様や、わたくしの親友である凛の御先祖様も、その一人であったと、王家の古文書には記されておりますの」
その衝撃的な事実に、今度はアキオが言葉を失った。
「ですから、『アキオ』というお名前も、彼らが伝えた文化の名残なのか、王都では決して珍しい名前ではございませんのよ。だから、大丈夫ですわ」
長年、心の奥底で孤独と共に抱え続けてきた、最大の秘密。それが、目の前の聡明な女性によって、いとも容易く、この世界の歴史の中に受け入れられた。アキオは、魂が救われるような、深い安堵感に包まれた。
その、安堵に満ちたアキオの表情を見て、クラウディアは、愛おしさが込み上げてくるのを止められなかった。
彼女は、そっと身体を起こすと、アキオの唇に、自らの唇を優しく重ねた。それは、彼女から贈る、初めてのキスだった。
唇が離れると、彼女は、最高の笑顔で囁いた。
「ようこそ、アキオ様。この、貴方が愛し、そして貴方を愛する、新しい世界へ」
この日、二人の間に、まだ男女の交わりはなかった。だが、互いの全てを曝け出し、そして受け入れ合ったことで、その魂は、誰よりも深く、そして固く結ばれたのだった。
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