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第303話:王の決断、そして聖域への巡礼
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聖域に新しく生まれた、極上の露天風呂。その東屋で、アキオと国王、二人だけの、真の会談が始まっていた。他の者たちは、男湯、女湯へと分かれ、それぞれの立場で、この歴史的な邂逅の時を過ごしている。
国王は、その鋭い瞳で、目の前の男を、改めて値踏みしていた。聖域の主、アキオ。その佇まいは、王侯貴族のそれとは全く違う。だが、その瞳の奥には、どんな権力者も持ち得ない、絶対的な自信と、そして、全てを包み込むような、底知れない器の大きさが感じられた。
一通りの、当たり障りのない会話の後、国王は、ついに、その本心を、アキオに明かした。
「アキオ―殿。君に、単刀直入に聞こう。…わしの、娘、イザベラを、治すことはできるか」
その声には、もはや、王としての威厳はなかった。ただ、愛する娘の、僅かな可能性に、全てを賭けようとする、一人の、父親としての、切実な響きだけがあった。
アキオは、その、王の仮面の下にある、父親の顔を、真っ直ぐに見つめ返した。そして、即答はせず、静かに、しかし、はっきりとこう告げた。
「陛下。お嬢様は、今、わたくしの妻たちと、湯浴みの最中。まずは、この聖域の湯で、長旅の疲れと、心の強張りを、解きほぐしていただくのが、先決でしょう。その上で、改めて、わたくしに、お嬢様を診させてはいただけませんか」
アキオは、こう言って、診断の時間を、湯浴みの後へと、巧みに設定した。それは、彼の、一人の女性に対する、そして、これから家族となるかもしれない、王女への、深い配慮の表れだった。国王は、その言葉に、アキオという男の、誠実さと、思慮深さを感じ取り、静かに頷いた。
一時間後。湯浴みを終え、身体を清め、新しい衣服に着替えたイザベラ王女が、母である王妃ソフィアに手を引かれ、東屋に隣接して、急遽設けられた、プライベートな診察室へと、その姿を現した。そこには、国王夫妻と、アキオ、そして、彼の妻の中から、シルヴィアとアウロラだけが、同席している。
アキオは、イザベラ王女の前に跪くと、その美しい、しかし、光を宿さない瞳を、静かに見つめた。
「イザベラ様。少しだけ、失礼いたします」
アキオは、その瞳に、自らの「生命の祝福」の力を、ごく微量、そして、細心の注意を払いながら、注ぎ込んだ。その瞬間、アキオの脳裏に、彼女の魂の根源に絡みつく、暗く、そして、極めて強力な、鎖のような力の流れが見えた。
アキオは、そっと手を離すと、国王に向き直った。
「…陛下。お嬢様の光を閉ざしているのは、単なる病ではありませぬ。これは、神々の領域に属する、極めて強力な、生まれながらの『封印』です。正直に申し上げて、今、この場所の、芽吹いたばかりの小さな聖域の力だけでは、この封印を解くことは、不可能です」
その、絶望的な診断に、王妃ソフィアが、息をのむ。しかし、アキオは、続けた。
「ですが、可能性は、ゼロではありません」
絶望の淵にいた国王夫妻の瞳に、再び、光が宿る。
「わたくしが暮らしている町…そこには、この聖域の全ての力の源泉である、巨大な生命樹がございます。あの樹の、そして、あの地そのものが持つ、莫大な生命エネルギーを直接使うことができれば…あるいは、奇跡が起こせるやもしれません」
そして、アキオは、国王に、とんでもない「条件」を突きつけます。
「陛下。もし、本気でお嬢様を救いたいと願うのであれば、貴方様ご自身が、そして、王妃様、イザベラ様も、我々と共に、わたくしが暮らしている、あの町まで、来ていただく必要がございます」
一国の王と、その家族に、素性の知れぬ、辺境の集落まで、自ら足を運べ、と。それは、臣下から王への要求としては、あり得ない、前代未聞の、そして、一歩間違えれば、反逆とさえ見なされかねない、大胆不敵な提案だった。
診察室の外で、そのやり取りを聞いていたアルバート大公や、近衛騎士たちは、その無礼な要求に、色めき立ち、今にも部屋へと飛び込まんばかりの気配を見せた。
しかし、国王は、彼らを、片手で制した。
彼は、アキオの、その真っ直ぐな瞳の奥にある、誠実さと、そして、揺るぎない自信を、見抜いていた。そして、何よりも、愛する娘を救いたいという、父親としての想いが、王としてのプライドを、完全に上回ったのだ。
「…分かった。アキオ殿。君の、その『賭け』に乗ろう。我ら、メイプルウッド王家は、君の聖域へ、行かせてもらう」
物語の最後は、国王が、その歴史的な決断を下し、アキオたちの、王家を伴っての、故郷への帰還という、前代未聞の旅が、始まろうとする場面で、幕を閉じる。
聖域の主が、一国の王家の運命を、その手に委ねられた、まさにその瞬間だった。
国王は、その鋭い瞳で、目の前の男を、改めて値踏みしていた。聖域の主、アキオ。その佇まいは、王侯貴族のそれとは全く違う。だが、その瞳の奥には、どんな権力者も持ち得ない、絶対的な自信と、そして、全てを包み込むような、底知れない器の大きさが感じられた。
一通りの、当たり障りのない会話の後、国王は、ついに、その本心を、アキオに明かした。
「アキオ―殿。君に、単刀直入に聞こう。…わしの、娘、イザベラを、治すことはできるか」
その声には、もはや、王としての威厳はなかった。ただ、愛する娘の、僅かな可能性に、全てを賭けようとする、一人の、父親としての、切実な響きだけがあった。
アキオは、その、王の仮面の下にある、父親の顔を、真っ直ぐに見つめ返した。そして、即答はせず、静かに、しかし、はっきりとこう告げた。
「陛下。お嬢様は、今、わたくしの妻たちと、湯浴みの最中。まずは、この聖域の湯で、長旅の疲れと、心の強張りを、解きほぐしていただくのが、先決でしょう。その上で、改めて、わたくしに、お嬢様を診させてはいただけませんか」
アキオは、こう言って、診断の時間を、湯浴みの後へと、巧みに設定した。それは、彼の、一人の女性に対する、そして、これから家族となるかもしれない、王女への、深い配慮の表れだった。国王は、その言葉に、アキオという男の、誠実さと、思慮深さを感じ取り、静かに頷いた。
一時間後。湯浴みを終え、身体を清め、新しい衣服に着替えたイザベラ王女が、母である王妃ソフィアに手を引かれ、東屋に隣接して、急遽設けられた、プライベートな診察室へと、その姿を現した。そこには、国王夫妻と、アキオ、そして、彼の妻の中から、シルヴィアとアウロラだけが、同席している。
アキオは、イザベラ王女の前に跪くと、その美しい、しかし、光を宿さない瞳を、静かに見つめた。
「イザベラ様。少しだけ、失礼いたします」
アキオは、その瞳に、自らの「生命の祝福」の力を、ごく微量、そして、細心の注意を払いながら、注ぎ込んだ。その瞬間、アキオの脳裏に、彼女の魂の根源に絡みつく、暗く、そして、極めて強力な、鎖のような力の流れが見えた。
アキオは、そっと手を離すと、国王に向き直った。
「…陛下。お嬢様の光を閉ざしているのは、単なる病ではありませぬ。これは、神々の領域に属する、極めて強力な、生まれながらの『封印』です。正直に申し上げて、今、この場所の、芽吹いたばかりの小さな聖域の力だけでは、この封印を解くことは、不可能です」
その、絶望的な診断に、王妃ソフィアが、息をのむ。しかし、アキオは、続けた。
「ですが、可能性は、ゼロではありません」
絶望の淵にいた国王夫妻の瞳に、再び、光が宿る。
「わたくしが暮らしている町…そこには、この聖域の全ての力の源泉である、巨大な生命樹がございます。あの樹の、そして、あの地そのものが持つ、莫大な生命エネルギーを直接使うことができれば…あるいは、奇跡が起こせるやもしれません」
そして、アキオは、国王に、とんでもない「条件」を突きつけます。
「陛下。もし、本気でお嬢様を救いたいと願うのであれば、貴方様ご自身が、そして、王妃様、イザベラ様も、我々と共に、わたくしが暮らしている、あの町まで、来ていただく必要がございます」
一国の王と、その家族に、素性の知れぬ、辺境の集落まで、自ら足を運べ、と。それは、臣下から王への要求としては、あり得ない、前代未聞の、そして、一歩間違えれば、反逆とさえ見なされかねない、大胆不敵な提案だった。
診察室の外で、そのやり取りを聞いていたアルバート大公や、近衛騎士たちは、その無礼な要求に、色めき立ち、今にも部屋へと飛び込まんばかりの気配を見せた。
しかし、国王は、彼らを、片手で制した。
彼は、アキオの、その真っ直ぐな瞳の奥にある、誠実さと、そして、揺るぎない自信を、見抜いていた。そして、何よりも、愛する娘を救いたいという、父親としての想いが、王としてのプライドを、完全に上回ったのだ。
「…分かった。アキオ殿。君の、その『賭け』に乗ろう。我ら、メイプルウッド王家は、君の聖域へ、行かせてもらう」
物語の最後は、国王が、その歴史的な決断を下し、アキオたちの、王家を伴っての、故郷への帰還という、前代未聞の旅が、始まろうとする場面で、幕を閉じる。
聖域の主が、一国の王家の運命を、その手に委ねられた、まさにその瞬間だった。
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