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第327話:聖域の祝賀の宴
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国王たちが去り、聖域にいつもの穏やかな日常が戻ってきた数日後の夜。
新・中央館はその全ての窓から温かい光を溢れさせ、まるで一つの巨大な宝石箱のように輝いていた。今宵は三国間の歴史的な合意と、アキオの新しい妻たちの誕生を祝う盛大な祝賀の宴が開かれるのだ。
大食堂には入りきらないほどの長いテーブルが中庭にまで続き、そこには聖域の全ての住民たちが顔を揃えていた。
テーブルの上にはアヤネと厨房の女性たちが腕によりをかけて作った豪華な料理が所狭しと並べられている。キナが今朝獲ってきたばかりの新鮮な魚の塩焼き。ヴァルト公爵領から届いた色とりどりの野菜のサラダ。そしてドルガン親方の故郷の味だというドワーフ式の豪快な肉の煮込み料理。
誰もが身分や種族の垣根を越え、同じ食卓を囲み笑い合っている。これこそがアキオの築き上げた聖域の日常の光景だった。
主賓席にはアキオと彼の全ての家族が座っていた。
やがてアキオが杯を手にゆっくりと立ち上がると、賑やかだった会場がすっと静まり返る。
「皆、聞いてくれ! この数日間、難しい顔ばかり見せてすまなかったな!」
アキオのそのざっくばらんな言葉に、どっと笑いが起こる。
「難しい話はもう全部終わりだ! 今日はただ、皆の頑張りと俺たちの未来に感謝する日だ。それと、ここにいる新しい三人の家族を皆で歓迎してやってくれ!」
アキオがリリアーナ、シャルロッテ、イザベラへと視線を送ると、三人は少し恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに立ち上がって一礼した。住民たちから温かい拍手と歓声が送られる。
「理屈はいらん! 今日はただ食って飲んで楽しもう! 俺たちの未来に乾杯!」
「「「かんぱーい!!」」」
その声を合図に、聖域の長い夜の宴が始まった。
宴が進むにつれ、新しく妻となった姫君たちはそれぞれの形でこの家族に溶け込んでいった。
第七夫人となったリリアーナ。彼女はアキオの隣にぴったりと寄り添い、その横顔を幸せそうに見つめていた。その姿はもはや氷の皇女のそれではない。愛する男のそばにいることを許された一人の穏やかな女性の顔だった。
そんな彼女の元へ、ザックを始めとする元「荒くれ共」の男たちが、おずおずと酒を持ってやってきた。
「リ、リリアーナ様! こ、この度は誠におめでとうございます! あんたのおかげで親方との話し合いが上手くいったって聞きました! ……あ、いや、その、ありがとうございます!」
かつての彼女なら一瞥もくれなかったかもしれない。だが、今のリリアーナは違った。彼女は優雅に微笑むと、自ら彼らの杯に酒を注いで回った。
「ええ、ありがとう。ですが、あれはわたくしの力ではありませんわ。皆で力を合わせた結果です。これからもアキオ様を、そしてこの聖域を共に支えていきましょう」
その慈愛に満ちた言葉に、男たちは感涙にむせび、改めてアキオの新しい妻への忠誠を誓うのだった。
一方、第八夫人となったシャルロッテは既にビジネスの顔になっていた。
彼女はドルガン親方と建設リーダーのアルトを捕まえるなり、テーブルの上に羊皮紙を広げ、熱心に語り合っている。
「親方! 聖域街道の舗装に使う強化コンクリートの強度は、もっと上げられませんか!? コストはわたくしがスタンフィールド家のルートで何とかしてみせますわ!」
「おお、嬢ちゃん、威勢がいいな! よっしゃ、任せとけ! こっちもドワーフの名にかけて最高のもんを作ってやらあ!」
「シャルロッテ様、その設計図であればこちらの新しい工法を試してみては……」
彼女はもはやただの公爵令嬢ではない。アキオ連邦の未来の経済をその両肩に背負って立つ若きプロジェクトリーダーだった。その活き活きとした表情は、どんなドレスを着飾るよりも美しく輝いていた。
そして第九夫人となったイザベラ。
彼女はアキオの子供たち全員に囲まれて質問攻めにあっていた。
「イザベラお姉ちゃん! 本当に昔は目、見えなかったのー?」
「うん、そうよ。でも、アキオお父様が治してくださったの」
「すごーい!」
彼女は一人一人の頭を優しく撫でながら、その純粋な瞳に自らの姿を映している。光を与えられ、そして今、自らが子供たちの光になろうとしている。アヤネはそんなイザベラの姿を我が事のように嬉しそうに見守っていた。彼女はこの聖域で王女としてではなく、一人の優しいお姉さんとしての新しい幸せを見つけ出していた。
アキオはそんな宴の全てを、正妻であるシルヴィアの隣で静かに眺めていた。
新しい妻たち。成長していく子供たち。そして心から笑い合っている仲間たち。
その光景を見ているだけで胸の奥が温かくなり、会談の疲れなどどこかへ吹き飛んでいくようだった。
シルヴィアがそんなアキオの横顔に気づき、そっとその大きな手に自らの手を重ねた。
「あら、あなた。良いお顔をしていらっしゃいますわ」
「……ああ」
「これこそが貴方が命を懸けて守りたかった宝物なのでしょう?」
「……そうだな」
アキオは短く答えると、シルヴィアの手を強く握り返した。
もう言葉はいらなかった。
聖域の宴は夜が更けるのも忘れ、いつまでもいつまでも続いていった。
新・中央館はその全ての窓から温かい光を溢れさせ、まるで一つの巨大な宝石箱のように輝いていた。今宵は三国間の歴史的な合意と、アキオの新しい妻たちの誕生を祝う盛大な祝賀の宴が開かれるのだ。
大食堂には入りきらないほどの長いテーブルが中庭にまで続き、そこには聖域の全ての住民たちが顔を揃えていた。
テーブルの上にはアヤネと厨房の女性たちが腕によりをかけて作った豪華な料理が所狭しと並べられている。キナが今朝獲ってきたばかりの新鮮な魚の塩焼き。ヴァルト公爵領から届いた色とりどりの野菜のサラダ。そしてドルガン親方の故郷の味だというドワーフ式の豪快な肉の煮込み料理。
誰もが身分や種族の垣根を越え、同じ食卓を囲み笑い合っている。これこそがアキオの築き上げた聖域の日常の光景だった。
主賓席にはアキオと彼の全ての家族が座っていた。
やがてアキオが杯を手にゆっくりと立ち上がると、賑やかだった会場がすっと静まり返る。
「皆、聞いてくれ! この数日間、難しい顔ばかり見せてすまなかったな!」
アキオのそのざっくばらんな言葉に、どっと笑いが起こる。
「難しい話はもう全部終わりだ! 今日はただ、皆の頑張りと俺たちの未来に感謝する日だ。それと、ここにいる新しい三人の家族を皆で歓迎してやってくれ!」
アキオがリリアーナ、シャルロッテ、イザベラへと視線を送ると、三人は少し恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに立ち上がって一礼した。住民たちから温かい拍手と歓声が送られる。
「理屈はいらん! 今日はただ食って飲んで楽しもう! 俺たちの未来に乾杯!」
「「「かんぱーい!!」」」
その声を合図に、聖域の長い夜の宴が始まった。
宴が進むにつれ、新しく妻となった姫君たちはそれぞれの形でこの家族に溶け込んでいった。
第七夫人となったリリアーナ。彼女はアキオの隣にぴったりと寄り添い、その横顔を幸せそうに見つめていた。その姿はもはや氷の皇女のそれではない。愛する男のそばにいることを許された一人の穏やかな女性の顔だった。
そんな彼女の元へ、ザックを始めとする元「荒くれ共」の男たちが、おずおずと酒を持ってやってきた。
「リ、リリアーナ様! こ、この度は誠におめでとうございます! あんたのおかげで親方との話し合いが上手くいったって聞きました! ……あ、いや、その、ありがとうございます!」
かつての彼女なら一瞥もくれなかったかもしれない。だが、今のリリアーナは違った。彼女は優雅に微笑むと、自ら彼らの杯に酒を注いで回った。
「ええ、ありがとう。ですが、あれはわたくしの力ではありませんわ。皆で力を合わせた結果です。これからもアキオ様を、そしてこの聖域を共に支えていきましょう」
その慈愛に満ちた言葉に、男たちは感涙にむせび、改めてアキオの新しい妻への忠誠を誓うのだった。
一方、第八夫人となったシャルロッテは既にビジネスの顔になっていた。
彼女はドルガン親方と建設リーダーのアルトを捕まえるなり、テーブルの上に羊皮紙を広げ、熱心に語り合っている。
「親方! 聖域街道の舗装に使う強化コンクリートの強度は、もっと上げられませんか!? コストはわたくしがスタンフィールド家のルートで何とかしてみせますわ!」
「おお、嬢ちゃん、威勢がいいな! よっしゃ、任せとけ! こっちもドワーフの名にかけて最高のもんを作ってやらあ!」
「シャルロッテ様、その設計図であればこちらの新しい工法を試してみては……」
彼女はもはやただの公爵令嬢ではない。アキオ連邦の未来の経済をその両肩に背負って立つ若きプロジェクトリーダーだった。その活き活きとした表情は、どんなドレスを着飾るよりも美しく輝いていた。
そして第九夫人となったイザベラ。
彼女はアキオの子供たち全員に囲まれて質問攻めにあっていた。
「イザベラお姉ちゃん! 本当に昔は目、見えなかったのー?」
「うん、そうよ。でも、アキオお父様が治してくださったの」
「すごーい!」
彼女は一人一人の頭を優しく撫でながら、その純粋な瞳に自らの姿を映している。光を与えられ、そして今、自らが子供たちの光になろうとしている。アヤネはそんなイザベラの姿を我が事のように嬉しそうに見守っていた。彼女はこの聖域で王女としてではなく、一人の優しいお姉さんとしての新しい幸せを見つけ出していた。
アキオはそんな宴の全てを、正妻であるシルヴィアの隣で静かに眺めていた。
新しい妻たち。成長していく子供たち。そして心から笑い合っている仲間たち。
その光景を見ているだけで胸の奥が温かくなり、会談の疲れなどどこかへ吹き飛んでいくようだった。
シルヴィアがそんなアキオの横顔に気づき、そっとその大きな手に自らの手を重ねた。
「あら、あなた。良いお顔をしていらっしゃいますわ」
「……ああ」
「これこそが貴方が命を懸けて守りたかった宝物なのでしょう?」
「……そうだな」
アキオは短く答えると、シルヴィアの手を強く握り返した。
もう言葉はいらなかった。
聖域の宴は夜が更けるのも忘れ、いつまでもいつまでも続いていった。
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