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第355話:氷の皇女と太陽の姫君、そして魂の継承
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聖域に夏の気配が近づく、ある穏やかな午後。新・中央館にある凛の私室は、いつもより甘く、落ち着かない空気に満ちていた。
「……というわけで、わたくし、しばらくはお母さんになることに専念させていただきますわ」
臨月を迎えた凛が、ベッドの上から親友のクラウディアと愛弟子のイザベラに告げる。表情は穏やかだが、声には一抹の寂しさが滲んでいた。
「イザベラ様。もっとたくさんのことを教えて差し上げたかったのですが……申し訳ありません」 「そ、そんな……! 凛様、どうかお気になさらないでください。わたくしこそ、これまで本当にありがとうございました」
イザベラは寂しさを隠し、深々と頭を下げた。凛の知的で優しい教えが、彼女は大好きだったのだ。
その日の午後、再び「妻会」が開かれた。議題は「イザベラの今後の教育方針」。 凛とクラウディアは妊娠中、シャルロッテは巨大プロジェクトで多忙を極めている。そこでシルヴィアが静かに提案した。
「……このお役目、リリアーナさんにお願いできませんでしょうか」
その名に、何人かの妻たちが息をのむ。リリアーナの背負う過酷な過去と、彼女が持つ知識の本質を知っているからだ。
リリアーナ自身も一度は固辞した。
「わたくしの知る帝国のやり方は、この光に満ちた聖域には相応しくありません。イザベラ様を闇に引きずり込みかねない……」
だがその時、会議の場にアキオが現れた。
「いや、リリアーナ。俺は君に頼みたい。イザベラをただ守られるだけのお姫様で終わらせたくないんだ。俺の隣で世界と戦える強い女性に育ててやってほしい。そのために君の力が必要なんだ」
アキオからの絶対的な信頼。リリアーナは覚悟を決めた。
夕暮れ時。イザベラはリリアーナの私室へと招かれた。
部屋の空気は、凛たちの時とは違う張り詰めた緊張感に満ちている。リリアーナは一つの問いを投げかけた。
「イザベラ様。貴女はアキオ様の妻として、聖域の女王の一人として、何を成したいとお考えですか?」
イザベラは戸惑いながらも答える。
「アキオ様をお支えし、民に愛される存在に……」 「……甘い。それは愛される人形の言葉です」
リリアーナは静かに、しかし冷徹に遮った。
「女王とは時に王の影となり、その手を汚す覚悟を持つ者のこと。愛されることではなく、国を未来永劫存続させること。そのために全てを捧げる覚悟が、貴女におありですか?」
氷のように冷たく、真実の重みを持つ言葉。イザベラは生まれて初めて、本当の「王族」の世界の厳しさに触れたのだった。
その夜から、アキオの夜のローテーションはリリアーナ、シャルロッテ、クラウディアの三人体制となった。
そこにイザベラが「見習い」として加わることが正式に決定される。
彼女の役目は肉体的な奉仕ではない。ただアキオのそばに寄り添い、姉である妻たちの姿から「女王」としての在り方を肌で学ぶこと。
その最初の夜。アキオの寝台にはリリアーナとシャルロッテが身を横たえていた。傍らには緊張した面持ちのイザベラ。
「イザベラ様。よく見ておきなさい。これがわたくしたちが王に捧げる忠誠と、愛情の形ですわ」
リリアーナはそう言うと、アキオの逞しい胸に白磁の肌を重ねた。シャルロッテもまた、熱い吐息をアキオの耳元で囁く。
イザベラは目の前で繰り広げられる、あまりにも濃密で神聖な愛の儀式に息をのむしかなかった。
それは彼女にとって最も過酷で、最も贅沢な教育の始まり。
アキオの腕の中で帝王学を学び、姉たちの愛の形を学ぶ。太陽の光の中で育ってきた無垢な姫君が、光を守るための「影」を知った最初の夜だった。
「……というわけで、わたくし、しばらくはお母さんになることに専念させていただきますわ」
臨月を迎えた凛が、ベッドの上から親友のクラウディアと愛弟子のイザベラに告げる。表情は穏やかだが、声には一抹の寂しさが滲んでいた。
「イザベラ様。もっとたくさんのことを教えて差し上げたかったのですが……申し訳ありません」 「そ、そんな……! 凛様、どうかお気になさらないでください。わたくしこそ、これまで本当にありがとうございました」
イザベラは寂しさを隠し、深々と頭を下げた。凛の知的で優しい教えが、彼女は大好きだったのだ。
その日の午後、再び「妻会」が開かれた。議題は「イザベラの今後の教育方針」。 凛とクラウディアは妊娠中、シャルロッテは巨大プロジェクトで多忙を極めている。そこでシルヴィアが静かに提案した。
「……このお役目、リリアーナさんにお願いできませんでしょうか」
その名に、何人かの妻たちが息をのむ。リリアーナの背負う過酷な過去と、彼女が持つ知識の本質を知っているからだ。
リリアーナ自身も一度は固辞した。
「わたくしの知る帝国のやり方は、この光に満ちた聖域には相応しくありません。イザベラ様を闇に引きずり込みかねない……」
だがその時、会議の場にアキオが現れた。
「いや、リリアーナ。俺は君に頼みたい。イザベラをただ守られるだけのお姫様で終わらせたくないんだ。俺の隣で世界と戦える強い女性に育ててやってほしい。そのために君の力が必要なんだ」
アキオからの絶対的な信頼。リリアーナは覚悟を決めた。
夕暮れ時。イザベラはリリアーナの私室へと招かれた。
部屋の空気は、凛たちの時とは違う張り詰めた緊張感に満ちている。リリアーナは一つの問いを投げかけた。
「イザベラ様。貴女はアキオ様の妻として、聖域の女王の一人として、何を成したいとお考えですか?」
イザベラは戸惑いながらも答える。
「アキオ様をお支えし、民に愛される存在に……」 「……甘い。それは愛される人形の言葉です」
リリアーナは静かに、しかし冷徹に遮った。
「女王とは時に王の影となり、その手を汚す覚悟を持つ者のこと。愛されることではなく、国を未来永劫存続させること。そのために全てを捧げる覚悟が、貴女におありですか?」
氷のように冷たく、真実の重みを持つ言葉。イザベラは生まれて初めて、本当の「王族」の世界の厳しさに触れたのだった。
その夜から、アキオの夜のローテーションはリリアーナ、シャルロッテ、クラウディアの三人体制となった。
そこにイザベラが「見習い」として加わることが正式に決定される。
彼女の役目は肉体的な奉仕ではない。ただアキオのそばに寄り添い、姉である妻たちの姿から「女王」としての在り方を肌で学ぶこと。
その最初の夜。アキオの寝台にはリリアーナとシャルロッテが身を横たえていた。傍らには緊張した面持ちのイザベラ。
「イザベラ様。よく見ておきなさい。これがわたくしたちが王に捧げる忠誠と、愛情の形ですわ」
リリアーナはそう言うと、アキオの逞しい胸に白磁の肌を重ねた。シャルロッテもまた、熱い吐息をアキオの耳元で囁く。
イザベラは目の前で繰り広げられる、あまりにも濃密で神聖な愛の儀式に息をのむしかなかった。
それは彼女にとって最も過酷で、最も贅沢な教育の始まり。
アキオの腕の中で帝王学を学び、姉たちの愛の形を学ぶ。太陽の光の中で育ってきた無垢な姫君が、光を守るための「影」を知った最初の夜だった。
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